blog

フリーランスのWeb制作 : デザイン、HTML/CSSコーディング、CMS
EPXスタジオ www.epxstudio.com

ミニマルゲームの美しさ『Expand』と『Flywrench』

ゲーム2016-12-02 23:59

Steamのオータムセールで買った2本のインディーゲームがどちらも素晴らしかったので、それについて書きます。

Expand(イクスパンド)

ExpandはChris Johnson氏による2015年9月発売のゲームで、ジャンルとしては「過剰にエモーショナルな」インタラクティブ迷路アクションという感じ。収縮・拡大する円環上の迷路のなかを、ただのピンク色の四角形であるところの自機を操作して、潰されたり赤い部分に接触するのを避けつつ進んでいきます。とにかくゲームデザインがメチャクチャ美しくて、一瞬で好きになってしまった。

難易度はそんなに高くないものの、いわゆる死んで覚えるゲームなので頻繁にリトライを繰り返す形になる。装置が全力で自機を殺しにくるため、脱出を阻む地形システム全体が敵というようなイメージです(そこだけ抽出すると、Portalとかにもコンセプトは似ている)。グラフィックはのっぺりしていますが、機械、歯車、そういったものががっちり組み合わさって動くメカニカルな仕組みが好きな人は、きっとハマれると思います。
ストーリーはまったくなく、無機的。なのにとても感情に訴えてくるのは、間違いなく音楽による効果が大きいです。わりとこういうデジタルライクな2Dゲームにつく音楽って、単純にピコピコしたものが多いわけですが、Expandの音楽はピアノとエレクトロニクスによる有機的な音楽。それも、完全にゲームの動きに連動して鳴る。

作曲しているのはChristopher Larkinというオーストラリア人の音楽家で、私はすごく気に入ってSteamでサウンドトラックも買ってしまいました。ちなみに、Steamでサントラを買うとゲームのアップデートが始まって、終わったらSteamディレクトリ配下の /SteamApps/common/Expand/Expand_OST に格納されています。mp3とflac両方ある。

四角形が主人公のナラティブなアクションゲームというとThomas Was Aloneなどがありますが、あんなに説明しなくて、純粋に映像と音楽の双方向の「体験」だけで感情を揺さぶってくる。そういう意味では、ICOとかJourney(風の旅ビト)とかのほうが近いです。今年遊んだ中では、ABZUに次いで2番目に好きなゲームでした。

全4ステージ+最終ステージで2時間もあればクリアできる。場所によってはシビアな操作が要求されるため、たぶんコントローラーが必要です。

Steam:Expand
http://store.steampowered.com/app/399780/

Flywrench(フライレンチ)

FlywrenchもほぼExpandと同時期、昨年2015年8月に発売されたアクションゲーム。開発はカリフォルニアのゲームスタジオMesshof。Downwellを作ったもっぴんさんが以前からTwitterで絶賛していて、気になっていました。難しいけど、確かに超面白かった!

宇宙をモチーフに、謎の白い空飛ぶレンチを操作してゴールへ導くアクションゲーム。重力があるため、落ちないようにボタンを押すとペコっと折れ曲がってジャンプみたいな動作になる。押し続けると赤く、別のボタンを押すと緑になり、同じ色のゲートを通り抜けたり、スイッチを押したり。そして、ひたすら死にまくる!数秒、時には1秒未満で死にまくり、死んで死んで感覚を掴んでいく。このブログで過去に紹介したゲームだと、VVVVVVに似ています。

1282回のミニマルな再挑戦『VVVVVV』 | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1209_a-thousand-of-death-in-vvvvvv.html

で、難しいんだけど、延々と繰り返していくと必ずコツが掴めてくるのです。こんなの無理でしょと一瞬思ったとしても、「あれ、今いけそうだった!」という場面が必ず来て、そのうちにただの1回の奇跡のようにして乗り越えられる。この、「諦めない限りは乗り越えられるハードル」を出してくる順番がというのが上手くて、これはまさにレベルデザインの美しさですよ。良いゲームは、ただプレイヤーを殺そうとするんじゃなくて、全力でおもてなししてくれるんですよね。

もっと言うと、Flywrenchの絶妙な動きとそれを操作する楽しさはどうも動画だけでは伝わらない。ぜひ実際に動かしてみてください。近いのは、ファミコンのバルーンファイトです。あれのもっとバリエーションがある感じで、レバーを入れるタイミングとかボタンの長押しによって、挙動が全然変わってくる。

3秒とか10秒とかいう短いスパンの面クリアを、ものすごい勢いでミニマルに繰り返していると、だんだんキマってきます。脳がジワジワする。流れるようなせわしないアニメーションも気持ちいいんだけど、これにはきっと音楽の作用も大きい。Flywrenchの音楽はドラムンベース、ジャングル、フットワークなどのめちゃくちゃカッコいいベースミュージック。Om UnitやMachinedrumも参加しているサウンドトラックは、アルバム形式でGoogle Play MusicやApple Musicでも聴けます(Flywrenchで検索)。私はKnife Cityの"King Noah"という曲が好きになりました。

ステージは、1エリア20面前後で構成された「惑星」を冥王星から順に、太陽を目指して攻略していく感じで進む。4時間くらいプレイしてようやく水星をアンロックしたところで、ここから先が詰まりそうな感じ…。ステージエディタもあって、例によってSteamコミュニティのワークショップ機能で共有できます。けっこう簡単に作れるけど、実際に面白いステージを作るのは難しい。奥が深く、まだまだ楽しめそうです。

Steam:Flywrench
http://store.steampowered.com/app/337350

インディーゲーム、探していくと面白い作品はいくらでもありますね。

この記事の関連タグ:

このエントリーをはてなブックマークに追加