ダリ展
先週の平日、時間を作って国立新美術館で開催されているダリ展へ行ってきました。宣伝の通りそこそこ充実した展示で、見応えは十分にあったので行ってみて良かったです。特定の画家のファンというのは別段ない私ですが、ダリは学生時代からすごく好きで、いつだかの企画展(たぶん国内で10年ぶりの回顧展と謳っているのでそのときの企画)で作品を生で観て、いたく感激したんですね。今回は絶対行きたいなと思っていました。
展示はおおよそダリの生涯を追うようなかたちで網羅されていて、基本に忠実でそこも良かった。こうして初期作品から眺めていくと、若手のうちは意固地にならず、印象派でもキュビズムでも貪欲にスタイルをマネして試してみて、で逆に30代からは自分の描きたいモチーフ・手段を確立したら一生それを貫き、かつそのことによって商業的にも評価されて、十分に長生きして天寿を全うするという、ある意味で芸術家として理想の王道を行った人なのだなあというのが分かります。作風に反して、決して奇をてらったり邪道を行ったわけではない。
舞台背景とか絵本の挿絵の仕事もしているんだけど、完全にダリワールドなのね。「不思議の国のアリス」の挿絵なんか、まったくなんの脈絡もなく、アリスがずっと縄跳びをしている少女として記号的に描かれていたりする。今回とても良かったのが連作「ガラの晩餐」で、これとかは言ってみればピン芸人がやるフリップ芸"こんな料理はいやだ"のダリ版なんだけど、想像力と描写力がぶっ飛んでいる。これは回廊のようなところに展示されていたため、何度も往復して観てしまった。
もちろん、展示作に偏りがないかというとそうでもなくて、有名なあれとかこれとかがないというのがある一方、横浜美術館でいつでも見られる作品もラインナップに加わっていたりもする。それにしても、期待以上に楽しめました。平日だからか、混雑もそれほどではなかった。
売店はちょっとカオスで、巨大の福引きのガラガラがあって「1ダリ300円」と書いてあったりとか(ランダムでピンバッジだかが当たる)、ダリえびせんべいだとか、よく分からない感じになっていた。Tシャツとかは普通すぎて、特に欲しいものはなかったな。例のグニャッとなっている時計の置き時計みたいなゆるいグッズはもちろんある。
ダリ作品の好きなところは、芸術の価値基準が単純に美醜だけではなく、なんだかわからないけど心がザワザワする、という点にあるところですね。その意味では、思わせぶりな長い作品タイトルとかも実は私にはどうでもよくて、共感なのか畏怖なのか、はたまた嫌悪なのか、その色と形でしか伝わらない「何か」を感じたいからダリの絵を観に行くのです。会期も比較的長く、12月半ばまでやっているのでみんな行くといい。ダリになろう。
ダリ展 | 国立新美術館 | 京都市美術館
http://salvador-dali.jp/