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「機動戦士ガンダム展」と「メカニックデザイナー 大河原邦男展」

日記2015-09-28 15:45

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27日、行こう行こうと思っていて、気がついたら会期の最終日になっていた「機動戦士ガンダム展」に行ってきました。場所は、六本木ヒルズ52階の森アーツセンターギャラリー。混雑はイヤなので朝イチで出かけたところ、10時ちょい過ぎの時点で10分待ち程度。エレベーター下ではほとんど並ばず、予想に反してすんなり入れました。なんとか滑り込みで間に合ってよかった。

以前こちらの記事(『機動戦士ガンダム』を観た | EPX studio blog)に書いたのですが、私は子供時代にまったくガンダムを通ってこなくて、去年初めてファーストガンダム全話を通して観ました。それだけに、比較的鮮明にさまざまなシーンが思い起こされて、特に時系列ごとにまとめられた安彦さんの美しい原画の数々には圧倒されました。

アニメーター見本市の「安彦・板野 原撮集」を観たときも思ったけれど、セルにして撮影してしまうと、露骨に時代性を反映した「古いアニメ」の見映えになってしまうのに対して、原画は純粋に上手い絵なんですよね。鉛筆の筆致を活かした生き生きとした線が、キャラの魅力を伝えていて、この資料が残っていて良かったなと思います。

特におもしろかったのは、企画段階のプロトタイプからの変遷の様子。いわゆるテンプレ的な子供向けのデザインから、重厚な世界観を背景とした大人も楽しめるデザインに、(玩具化を前提としたスポンサーの要望を反映しつつも)落とし込んでいくさまは、結果として導かれた『ガンダム』の成功からみると興味深いものでした。端的にいうと妥協がない。

そして一方で、スポンサーの口出しがなく、富野さんと大河原さんの共同作業によって自由にデザインされたという敵MS/MAの「生態系」にも非常に興味を持ちました。ビグ・ザムなどの、「変」と「カッコイイ」のギリギリのラインを突いた突飛なデザインが素晴らしいんですね。で、ガンダム展を観終わったその足で、こちらもちょうど公開最終日となっていた「メカニックデザイナー 大河原邦男展」にハシゴすることにしました。場所は上野の森美術館。

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こちらも大変良かった!大河原(おおかわら)邦男氏は、ガッチャマン、ヤッターマンから、ガンダム、ボトムズに至るまで、日本の代表的なロボットアニメに携わってきたデザイナー。私はまったくこの方面には疎く、ほとんど何も知識がない状態で観覧したのですが、十分に楽しめました。
驚くのは、アナログ原画、設定資料の描線の美しさ。資料中に描き込まれた文字も、まるでレタリングのような端正な手書きの明朝体で統一されていて、独特の美学を感じました。

そして、メカ的フェティシズムのあくなき追求。説明がなかったので完全に私の想像ですが、初期においておそらく大河原氏は機械工学的な専門知識があったのではなくて、「このほうが自分はカッコイイと思う」というデザイン原理に基づいて制作している。もちろん、プロとして他の人の意見を取り入れたり(特に富野監督のダメ出しの書き込みがすごい!)、スポンサーや企画サイドの意向に沿ったりということはあるけれど、あくまで軸がブレていないからこその力強さ、謎の説得力がある。
図説の見本をパラパラ読んでいたら、天野喜孝氏がインタビューで「大河原さんはメカニックデザイナーというよりは造形作家」というようなことを仰っていたのだけど、そういう意味合いなのかなと思いました。アニメ分野以外での広範な意味でのメカニックデザイナーとは、厳密には違うような気がします。そう、作家性が強い。

展示の後半では、ポスター制作の作業風景を収めた映像も紹介されていました。デジタル絵が一般的になってしまった今では、これが気の遠くなるような地道な作業で、これだけの精緻な作品群を生みだすのにどれだけの時間が費やされたのかという点に、否が応でも想像が及びます。

惜しむらくは、作家をフィーチャーした企画展であるならば、氏がこのような美的感覚を得るに至った過程や、想像力の源泉となったもの、あるいは制作の苦労、仕事歴を超えた人となりを紹介してほしかったという点。今回の展示のほとんどは、アニメ作品単位での紹介にとどまっていて、その枠からはみ出すアーティストの本質に迫るものでなかったことは残念でした。作品を知っている人なら、懐かしがるという楽しみかたができるのだろうけど。

ともかく、ガンダム展に関連して、貴重な機会に悔いを残すことなく作品展を楽しめて良かったです。いやあ、ギリギリまで会期終了を把握してなくて危ないところだった。

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