Roland JD-Xi
NAMM絡みの新しい発表が各社出揃いましたね。ARP OdysseyとかProphet-6とかみたいな王道シンセもあれば、Teenage Engineeringの電卓みたいなのもあったり、はたまたSQ-1やBeatStep Proみたいな純粋なシーケンサーもある一方で、CASIOのやつみたいなキワモノ系グルーヴボックスがあったりで、今年はいつにも増して賑やかな感じがします。
そんな中、Rolandの新製品が気になったので書いておきます。
Roland JD-Xi | Synthesizer
http://www.roland.co.jp/products/jd-xi/
少しだけ事前情報が出て話題になっていたシンセ。パネル上のAnalogという文字が物議を醸していましたが、なんとアナログとデジタルのハイブリッドでミニ鍵という、ちょっと今までのラインからは想像できない製品でした。
「クロスオーバー・シンセサイザー」と謳われていますが、これは複数のオシレーターをミックスないしレイヤーできるというイメージではなくて、デジタル2パート、アナログ1パートが独立した系統として存在しているというもの。面白いのが、これに加えて1パートのPCMドラムパートがあって、これらすべてに対して16ステップ×4小節のシーケンサーによって、ループシーケンスが打ち込める(リアルタイム/TR-REC)。つまりこれは、世界観としてはかなりグルーヴボックスに近いシンセのようなのです。
4パートの簡易的なものとはいえ、こういうマルチなグルーヴボックスってMC-808を最後にRolandからはしばらく出ていなくて(その間にElectribeだとかが席巻してしまった)、こういう形で戻ってくるとは思ってもみませんでした。ってのも、キーボーディスト向けやプロ用のハイエンドなシンセは常にアップデートされていたけれど、DJ/クラブ系に寄せてくるのはAIRAブランドだけかなというイメージだったのです。実はINTEGRA-7やFA-06/08みたいな音すっごく興味あったんだ。
パネルを見ると、いわゆる正統派のシンセのような細かい音作りができるようには設計されていないようなのですが、それを差し引いても、スピード感第一で直感的に音を探して重ね録りしていけるというのが、要するに自分なりの使いかたが明確にイメージできて、これはいいなと。ビビッときました。
上の動画では、USB接続したPC上のCubaseにJD-Xiで弾いたフレーズを重ねて曲を作っていく様子と、後半ではビルトインシーケンサーの再生のみで、パートを抜き差しする様子が確認できます。
Roland USのブログ記事を読むと、ドラムパートは音色ごとにピッチやエンベロープをエディットして、自由な組み合わせでキットとして保存できるようで、思っていたよりも複雑なことができそう。また、これら各パートの音色とシーケンスの情報は、グルーヴボックス系でいうパターンのような概念で1セットとして保存できて、メモリー領域はプリセット256+イニシャル256とのこと(こちらの動画より)。
NAMMで同時発表されたのが、上位モデルにあたるJD-XA。プロトタイプ機の展示のみではあるものの、アナログがポリフォニックであることが示唆されているのをはじめとして、格段に高度な音作りができそうです。もちろんこっちの音も早く聴いてみたいし、最高に魅力的なんだけど、JD-Xiのフットワークの軽さというかパッケージ感はまた別物のような気がしています。第一これで、実売価格が税込54,000円くらいというじゃないですか。
ICONのインタビュー記事では、三木社長体制のもとでの新ローランドの哲学が、こういうある意味エントリークラスの製品にもはっきりと示されていることが語られています。
ICON ≫ 製品開発ストーリー #1:ローランド JD-Xi ~ ローランドが世に送り出す約30年ぶりのアナログ・シンセで、初のミニ鍵盤製品
http://icon.jp/archives/9758
私は、アナログかデジタルかという点にはまったくこだわらない派なんですが、あのAIRAにおいても頑なにデジタルによるブレイクスルーを標榜していたRolandが、こういう形でアナログを採用するというのは確かに意外でした。しかしそもそも就任当初の三木社長のインタビューを読むと、アナログやらないと言っているわけでは全然なくて、むしろ今回のような製品の開発を示唆しているようなところがあるんですよね。
アナログに魅力があるとお客様が見ている、そのことは素直に認めなくてはいけません。それがどんな点なのか、それがデジタルでできないのか、アナログのどの部分なのかは追究していきたいところです。もちろん、楽器を作る手段としてデジタルにこだわることはないと考えています。どんな技術をどう使うかは楽器職人の腕にかかっているものです。それがデジタルだろうが、アナログだろうが、創造性というのが満たされているのであれば、メーカーとして進んでいく道だと考えています。もちろん、いまの製品にもアナログ回路は搭載しているわけで、アナログでまったく新しい方向があるのなら、そうした手段もとっていきたいと思います。アナログ回路や真空管といったものへのリスペクトはあります。ただし、レプリカを作るという発想はありません。
― 【藤本健のDigital Audio Laboratory】第549回:Rolandの三木社長に聞く、新体制と製品展開 - AV Watch
JD-Xi、最初のフィーリングで「これ、買うやつだなあ」と思ってしまったので、今のところ買う方向です。シンセは直感だ。メインで使っているSH-201も、思えば2006年購入とじき9年経つので、久しぶりのキーボードです。3月末発売予定とのことで、今日あたりから各店舗で先行予約が始まっている模様。
AIRAの新製品についても書こうと思ったんだけど、長くなったのでまた別の記事で。