『ベイマックス』を観た
ネタバレなしレビューです。絵で魅せる王道ヒーローものなので、ネタバレがあったからなんだって話ですが、いちおう避けたほうが楽しめるかなという気はします。
『シュガー・ラッシュ(Wreck-It Ralph)』のスタッフが手がけているとか、コンセプトデザインにコヤマシゲトさんが関わっていると聞いてから興味はあって、先日観たNHKのジョン・ラセターの特番も面白かったので、公開したら観に行こうと思っていました。
ところが、いざ劇場を調べてみたら、近所の映画館は吹き替え版ばかりで…。シュガー・ラッシュのときの翻訳があんまりの出来で、できれば原語のニュアンスをそのまま楽しみたかったので字幕版が良かったのだけど、仕方ない。おまけに、アナ雪で味をしめたのか日本版エンディングテーマみたいなのもあって、これがどう考えても原作に敬意を払っていない選曲で、それが字幕版でも回避できないと聞いてげんなりしました。ただ、完成された作品をそのままの状態で届けてくれればいいのにね。どうにかならないものか。
ともかく観てみて、おもしろかったです。この手のヒーローものとして100点満点の作品でした。というのは、詳しくは書かないけど、展開や見せかたにおいて、そうそう!そうだよねというポイントを確実に拾ってくるようなところがあって、めちゃくちゃ「優等生」なのです。お話もいい密度でぐんぐん進むし、伏線の回収もスマートで。NHKのドキュメンタリーで観た通り、ああいう徹底して民主的なシナリオ打ち合わせで練り上げたストーリーが、こういう形で結実するのは納得です。
100点満点というのは、その意味で、中華料理を食べに行ったら美味しい中華が出てきましたみたいな感じです。フランス料理を食べたい人の口には合わないと思うし、あるいは、見たことも聞いたこともないような斬新な中華を求めている人には全然かも。私のなかで、パシリムとかシュガー・ラッシュは100点満点中12,000点くらいだったんですけど、ベイマックスは100点です。というか同じ評価軸に並べちゃいけないのかな。
思ったのは、この作品は記号の再生産でしかないのかもしれないけれど、たぶんメインターゲットである子供たちのことを考えると、時代性に合わせたアップデートというのは絶対に必要で、いつの時代にもこういう100点の作品がちゃんとあるのは素晴らしいなと。僕らにとっては、あの作品だったりあの作品だったりというのがあって、今の子供たちにとってはそれがベイマックスなのかなあ、みたいな。
ところで原題の"Big Hero 6"に対する邦題の『ベイマックス』ですが、今回に限っては、これでも不正確というほどではないかも。戦隊ヒーロー群像劇というよりは、明らかにヒロとベイマックスの関係性にフォーカスしたお話だし。ただなんか、登場人物のキャラがみんなすごく立っていて、彼らをテーマにした連作をもっと読むなり観るなりしたいし(たとえばワサビが主人公の回とかね)、そのときはビッグヒーロー6かなあ。
エンドクレジットにコミック風の静止画が採用されていて、その絵のタッチが超かわいかったです。あれで新作が読みたい!
同時上映の『愛犬とごちそう(Feast)』は、犬のオーバーな仕草や裏で展開するドラマが面白かったけれど、個人的には『紙ひこうき(Paperman)』のほうがずっと良かったな。
ちなみに日本版EDソングはエンドクレジットのあとのスタッフロールで始まるので、速攻で席を立って、聴かずに事無きを得ました。映画で最後に聴く曲って余韻に響いてくるし、すっごく大事だよね…。エンドクレジットの曲がまたカッコイイんだ。