『インターステラー』を観た
22日に公開されたばかりで気になっていた映画『インターステラー』を観に行ってきました。わりと最近『インセプション』を勧められて観て、すっごく面白かったので(これも近いうちに感想を書いておきたい)、トレイラーなどはチェックしていました。なんだか、事前の印象としては「超強いパパが娘を守るため、地球を救うために宇宙へ」という、ははーん、またそういうやつねみたいな感じでした。でもSFとか宇宙とか興味あるし!
以下、続けて感想を書きますが、既に気になっている人は読まずに観に行ったほうがいいです。
映画『インターステラー』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/
観てまず思ったのは、こんなマニアックな映画をおそらく巨額の費用をかけてよく作れたなあと。確かに宇宙冒険映画的な側面はあるんだけど、舞台はどこも地味だし、派手なアクションとかは全然ないし、それが3時間もある。面白かったかというと面白かった…でもすごく感想が難しい。
理屈をすっ飛ばして表層だけ捉えると、無茶苦茶シンプルなプロットで、誰にでも起承転結のはっきり分かる、悪く言えばありきたりのお話なんだけど、理屈を追いかけると途端に難解になる。例えば、「相対性理論」「重力波」「5次元」「ブラックホール/ワームホール」のような宇宙物理学上の概念を教養として持っていないと、シチュエーション理解の前提条件が欠けた状態のままで、素直に感動できない。お、おう、みたいな感じ。
イメージとしては、作品自体が2つのレイヤーに分かれていて、表層的な理解だけでも筋はシンプルで100%楽しめるし、深い科学知識がある人は精巧なシミュレーションとして楽しめるのだろうし、という。なのでどっちつかずの自分は戸惑ってしまったのかな。
少なくとも国内では、感動的な父娘の絆を描いた作品、みたいな触れ込みだったと思うので、それはそういう売り方なだけで、そんなわけはないだろうと思っていました。中盤で登場人物の様子がおかしくなってくるあたりは、来た来た!と思ったし、素直に面白かったんだけど、なんか最終的にはうーんみたいな。「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」を体現したようなシーンもあって、オカルトというかファンタジーというか、もうどのようにも解釈できる余地を残していて。
ただ、宇宙に関して無教養な自分にとっても、知的好奇心をくすぐられる作りにはなっていました。誰も見たことがないワームホール間移動やブラックホールを、最新の科学的知見に基づいて映像化するとこうなるのかみたいなの、純粋に興味あるし、実際観て興奮した。これから、この作品をきっかけに宇宙物理学を志す子供たちはきっといるのだろうし、そうでなくても、興味を持って入門書でも読んでみるかみたいな入口にはなりそうです。relativityやgravityという単語が、こんなに台詞中に頻繁に、しかも本来の物理学の文脈で出てくる作品というのもそうそうないのでは。
私はとてもじゃないけどフラットな批評ができるほど映画を知らないので、個人の嗜好に帰結する好き嫌いの軸での評価しかできないのだけれど、それでいうとノーラン監督では『インセプション』のほうが好きでした。宇宙シミュレーションなら"Gravity"のほうが好きだし、ディストピアを描いたSFならブロムカンプ作品のほうが。映画館ならではの見ごたえは十分にあって楽しめたけれど、ちょっと期待しすぎてしまったな。しかし例えばこれを教材にした物理学の講義があるとしたら楽しそうだし、宇宙やSFに詳しいいろんな人たちの感想なり解説を聞きたくなってしまうようなところはある。