最近観た映画から(2014年9月~10月)
先月に続いて(最近観た映画から | EPX studio blog)、9月~10月くらいの間に友人知人にお薦めされて観た映画の感想メモを、個人的な備忘録として書き残しておきます。新作も観に行きたいんだけど、別段映画館へ出かけるほど興味がありそうなものがなくて。強いて言えば、マルタ・アルゲリッチのドキュメンタリーくらいかなぁ。
そういえば最近また、自分がもともと映画嫌いだったことを思い出す。嫌いな理由を並べ立ててもあまり建設的でないので端折って書くと、2時間なら2時間じっと受け身でいなければいけないのが辛くて。それでおもしろい作品だったら良いんだけれども、自分に合わなかったり楽しめなかったりすると、ただ無為に過ごす2時間よりもしんどいというか。実は本・マンガにしろ音楽にしろ、昔から好き嫌いがかなりあるほうなので、合わない(可能性がある)ものを一定時間排他的に強制させられる、というのがたぶん性格的にダメだったんですね。
ところが今は、趣味の合う友人知人、もしくは観測範囲内でアンテナを張っておくだとか、事前にざっくり調べておくってことができるので、わりと大丈夫になりました。おかげで、素晴らしい作品がたくさんあるということも(今更ながら)分かってきたし、映像と音楽の総合芸術としての映画そのものに対しては、苦手意識はだいぶ軽減されました。ゼロではないけれど…。
もっと早く観ておけば、という作品もあるし、かえって未見のまま新鮮な体験ができてよかったという作品もあります。なので、感覚が真新しいうちに、メモ程度にでもフィードバックを残しておきたい。薦められた作品に関しては、薦めていただいた手前ということも多少はあるし。
閑話休題。
サカサマのパテマ
前から興味のあった作品で、ここうさんの家に遊びに行ったときに見せてもらいました。設定ありきのSFファンタジー。設定に関するSF的な考察は無用で、ただただシチュエーションが美しいし、それだけで十分。悪いイミでアニメ的な台詞回しと演出は自分の好みとは違いましたが、小物のデザインや『キルラキル』『LWA』の金子雄司さんによる美術は素敵だった。音楽が大島ミチルさんで、ボーイミーツガール&手を取っての逃走劇というシチュでもはや『ICO』と比較されるのは避けられず。テーマ曲もそっくりで…。
オブリビオン
トム・クルーズがモテまくりながら人類を救う映画。以前観た『月に囚われた男』にプロットが似ているなと思ったら、案の定指摘されまくっていた。ただ、こちらはサスペンスよりもヒロイックなアクション要素に重点が置かれていて、これはこれで最後まで楽しんで観ることができました。観終わったあとのもやもやは、How It Should Have Endedのおかげですっきり解消されたし(もちろんネタバレ)。メカデザイン最高。戸田奈津子の日本語字幕がちょー雑で、英語音声聴きながら頭のなかで再翻訳しつつ字幕と照らし合わせるという二度手間で勘弁してほしかった。
スペースバンパイア
トリガーの大塚さんと今石さんのTwitter上でのやりとりを見ていて興味を持ったんだけど、これは私には合わなかった。中盤くらいで置いてきぼりにされてしまい、初めて途中で観るのをやめた。B級だからイヤってことではないハズなんだけど、何も惹かれなかったんだ。
デビルズ・バックボーン
ギレルモ・デル・トロ監督の初期作品のひとつ。幽霊がテーマのホラーものということで、いかにもおっかないタイトルも相まってスプラッタNGな私は身構えていたけれど、全然恐いやつじゃなかった。むしろ、『パンズ・ラビリンス』のようなゴシカルなトーンのファンタジーもので、観終わったあとに喜怒哀楽のどれとも表現しがたい不思議な感傷の残る佳作でした。やっぱデルトロ作品は好みに合うのかもしれない。観て良かった。
ニュー・シネマ・パラダイス
映画好きの知人に薦められた作品。いくつか編集によるバージョン違いがあるそうで、レンタルしたのは3時間の完全版にあたるものでした。なるほど確かにいい映画で、特に伏線を生かしたラストカットは、本作の明確なテーマを訴えかけてくる力があった。
エンニオ・モリコーネの音楽は大変美しいのだけど、いかんせん劇伴としてのメリハリがなく、スーパーのBGMのように3時間鳴りっぱなしで、今ひとつのめり込めなかった(そこが良いんだと言われてしまうと、何も言えなくなってしまうけれども)。
少年期、青年期を丹念に描いてこその、壮年期の「昔は良かった」パートなわけで、そういう意味では単純に3時間だから長すぎるっていうこともなくて。ただ、作中アルフレードが結局どうしたかったのかってのは、解釈の余地がある。これを観た人はきっとそれぞれに自分の人生を重ねるのだろうし、ある程度年を重ねてから見直すと、また違う感想になるのかもね。
エイリアン2
去年izさんに薦められて『エイリアン』は観ていました。実はこれまで、シリーズまったく観たことがなかったのです。パニックホラー大作というイメージに反して、もっとずっと小ぢんまりしたスケールで、しかも心理的な駆け引きを描いたSFサスペンス密室劇なところが意外と好きで。話によると、『2』は監督も違うし、これとはまた違うと聞いていて、どんな感じなのかなと。
そもそも英語の原題は2でも何でもなくて、1作目のAlienに対して"Aliens"なんですね。その名の通り、エイリアンがいっぱい出てきて、そこを探検するというアドベンチャー的な作品でした。先に全滅した先遣隊の足跡を辿るシチュエーションだとか、この手の作品で定番になっている表現の元ネタがいっぱいあって、おもしろかった。特に後半は目まぐるしく展開が変わり、楽しめました。それでもなんというか、武器や兵器や海兵隊が出てきてワーみたいなやつよりも、1作目のほうが好きでしたが。
バンド・ワゴン
1953年のミュージカル映画。これは「ニンジャスレイヤー」に登場するキャラクターである「ザ・ヴァーティゴ」が、ついこの前、読者からの質問に答える形でAsk.fm上で薦めていた作品です。このアカウントは(細かい作中の設定をすっとばして書いてしまえば)「ニンジャスレイヤー」翻訳チームが運営しているもので、つまりはあの作品がどういうルーツを持っているかの鍵になりうるのではないかと。まあそうでなくても、単純に興味があって。
で観たんだけど、すっごく良かった。これまでまったく自覚したことはなかったけれども、私はミュージカルが好きなのかもしれない。歌もダンスも、名人によるショウそのもので、全体として人間離れした完成度に素直に感激してしまう。お話としては極めてオードソックスなもので、大筋はあらかた思い描いた通りに進むにもかかわらずですよ。
そしてまた、エンターテイメント作品の本質を問うたメタ的なテーマに、『ギャラクシー・クエスト』に近いものを感じた。特に本作は、異なる分野のエキスパートが出会って、新しいモノを作っていくことの困難が描かれていて、まさに今アニメを含めたマルチメディア展開を進めている「ニンジャスレイヤー」の制作者が(と敢えて断言してしまうけれど)、いま読者に薦めたい作品がこれなのかと得心しました。なるほどお。こういう映画ならいくらでも観たい。