Surface Pro 3でTraktorは使えるか
DJで使えるか動作検証してみました。結論としては、使えるけど…という感じです。三点リーダなのはつまり、実際に箱でプレイしたときにCPUのサーマルスロットリングが効いて、クロックが落ちたとしても安定動作するかが分からないからです。とりあえず簡単に報告を。
Windows 8.1なので、Traktor Scratch Pro 2のインストールと、Service Centerによるライセンスの登録は普通にできました。立ち上げるとやはりソフトウェア側が高dpiスケーリングに対応していないため、ボケて表示されてしまいます。なので、Traktor.exeで右クリック>プロパティ>互換性タブで「高DPI設定では画面のスケーリングを無効にする」のチェックをオンにすれば、OS側で150%ズームの設定になっていても100%で表示されます。
2160x1440という解像度だとさすがに広い。それと3:2なこともあって、下半分のブラウザー領域がかなり広々しています。デフォルトだとフォントサイズが小さいので、設定で最大値に。これくらいなら実用上の視認性は悪くないと思います。
さてLatencyMonで検証。Windowsマシン用のこちらの手順については、Sangoさんのブログ記事に詳しいのでぜひそちらを(Lost Arrangement Systems)。まず初期状態で5分ほどチェックすると、Highest reported DPC routine execution timeの値が3,000という危険水域で、原因がACPI.sysと出ています。で、デバイスマネージャーでバッテリ2項目を無効にしてみたのが、上のスクリーンショットの状態。これで560で、聴感上もノイズなどは乗らず安定しているように見えます。Wi-Fiは有効なままです。
ただ、LatencyMonの画面上部にアラートが出ていて、これはつまり、スロットリングが効いてCPU能力が落ちる可能性があるよということなのではと推測しています。Surface Pro 3のサーマルスロットリングの影響については、PC Watchの記事の通り(【Hothotレビュー】日本マイクロソフト「Surface Pro 3」 ~薄く軽く液晶が大きくなったWindowsタブレット - PC Watch)で、いまのところオプションで無効にしたりはできないようです。まだガッツリ何時間も回してないのであれですが、動作に影響が出てもおかしくはないですよね。
なので、もう少し長く使ってみて、様子をみる必要はありそうです。これメインの用途でSurface Pro 3を検討している方がいれば、もう少し待ったほうがいいのかも。もともとTraktorのタッチ操作は無理としても、ノートPCほどブースで邪魔にならないし、使えればいい感じのような気がするのですが。
付け加えるなら、USB3.0ポートが1つしかないうえ、バスパワーでは電力供給が足りないと思われるので、セルフパワーのUSBハブ必須です。念のため。
『Godzilla』
公開4日目に観てきました。いやーゴジラ超カッコよかったね!ていうかゴジラが超カッコいいだけの映画でした。別にネタバレがどうとかじゃなくて、シンプルに視聴覚体験のすごさではあるんだけど、私の場合まったく事前情報を拾わずに行ったことによる驚きが少なからずあったので、興味のある人は以下読まずに早めに観に行ったほうがいいと思います。って前置きをしたうえで。
ゴジラが出て殺す
いやなんか、先月初代のリマスター版を映画館で観たときに書いたように(リマスター版『ゴジラ』 | EPX studio blog)、ある種「詩的」で繊細な表現というのがゴジラ映画のあるべき表現の半分だというのは分かるんですが、もう半分、つまり怪獣が大暴れして街を壊しまくって脳内麻薬ドバーみたいな、「三歳児脳」にビリビリ来る表現が突き抜けてて、その意味で最高でした。これはいずれ、みんなで手を叩いて大笑いしながら外人4コマスタイルで観たい。
都市で戦うもんだから、その被害たるやまったく悪夢のようなもので、怪獣は無慈悲だし人間は無力だし。で無力なんだけども絵的にカッコいいカットがたくさんあって、って考えると、この映画における人間とは格闘技のレフェリーのようなものなのか。要するに主人公たちは手も足も出ないわけだけど、単に傍観者じゃなくて、引っ掻き回すんですよね。
確かにまあ、そこまで義理立てしなくてもというくらい、日本のゴジラに対するリスペクトは感じられて、別段話に絡んでくるでもない芹沢博士の存在感とか(口数が少なく説明的にならないあたりは特に好きだった)、あと恒例の「ヘンな日本」像とかは楽しませてもらいました。原発大爆発に始まり、大地震に大津波とか、他人事だと思ってやりたい放題な感じもそれはそれで。核の扱いがちょー雑みたいなのは、それ自体がハリウッド的なサービスだと思うし。
でもなんといっても、ゴジラの鳴き声が痺れますよね。これ、なんだか公式がSoundCloudにこれだけダウンロードフリーで上げてたりするプロモーション手法が面白いんだけど(ROAR by GodzillaMovie on SoundCloud)、この劇場を震わせる音声とともにバーンと登場するシーンはかなり熱くなれる。そこまで、周辺のこまごました事象をこと細かに描きながら徐々に盛り上げていく手法は、確かに同監督の前作"Monsters"の流れを汲むもののように感じました。
だいぶいろんな要素を詰め込んでしまった結果、全然キャラが立ってない登場人物がけっこういて、そこはまあ。そのわりに異様な権限を持った司令官とか、バスの運ちゃんの超判断とかは笑えました。あと嫁がすごいかわいいです。
それにつけても、何度「ジプシー!早く来てくれ」と思ったことか。これデルトロさんならまた全然違ったアプローチで作ったのだろうけど、とはいえ本人は悔しいだろうね。個人的には、完全に去年の『パシフィック・リム』でぼっこり空いた穴を埋めてくれる作品で、感動するとか良い映画とかそういうことじゃなくて、同種の視聴覚体験としてこれ以上のものはない感じで。
で関連して、日本のある時期の特撮技術のすばらしさは尊重されるべきだけども、それはそれとして、今のCGには全然かなわないし、過去の栄光にしがみつくスタンスはダメなんじゃないかとは思いました。CGのあの圧倒的な質量を踏まえた実在感はすごい。例の2012年の「特撮博物館」展にも行ったけれど、あれはかの時代に未踏の地を目指したことこそが尊いのであって、言ってみれば電気がない時代における蒸気機関のようなもので。この新しいゴジラのVFX的な先進性は、特撮とはまったく別の文脈で評価されるべきなのではと思いました。
パシリムと同じで、アレな層に向けてものすごい特化した作品なので、誰彼構わずおすすめという感じでは全然ないけど、家族とかパニック感を重視しているという意味では、こっちのほうがメジャー感はあるかも。機会があればまた公開中にまた観に行きたいし、BD/DVDが出たらチェックしたい。今回は2D字幕で観たので、次は3D吹き替えかな?
それにしても日本の地名でジャンジラってのはやばいね。
Surface Pro 3を買いました
Surfaceを買うまで
仕事で使うノートの買い替えが必要になって、いろいろ検討した結果、発売されたばかりの「Surface Pro 3」にしました。ここまでにはそれなりに紆余曲折があり、自分のなかで何周か検討を重ねた結果、やっぱりSurfaceかなという直感に頼ることに。ハードウェア的なレビューは他所の記事に譲るとして、例によってごく個人的な感想だけをまとめます。
まず、去年中古で買ったばかりのASUS ZenBook UX31Aなんだけど、私の環境なのか設定なのか、はたまた個体差なのか、使用中に突然OSが落ちるという現象に悩まされていました。何度かリカバリを試みたものの、この前仕事の打ち合わせ中に何度もブラックアウトして再起動、ということがあって以来、買い替えを決意。それさえなければ特に不満なく使えていただけに、なんだか残念です。去年の夏~秋あたりはこれでがっつり仕事していたので、一定の元は取ったとは言えますが。
で、次何にしようかなってときに、条件としてやっぱもう少し持って移動しやすいものがいい。ZenBookは薄くてコンパクトだったけど、13インチなだけにそこそこの大きさで、気軽にという感じではなかった。であれば小さければいいかというとそうでもなくて、以前Vaio TZを運用していたときに(これ自体はすごくいい製品だった)、画面の小ささですっかり疲れてしまって、要はこれでデザインファイルをスライスしてコーディングしたりという自分の使い方は無理があるなと思っていて。それに、前の記事の通り長期的に考えて視力を温存しないといけない体になってしまったので、画面に近づいて作業するみたいなのは避けたい。難しいものです。
以上を踏まえて、13インチ近辺のクラムシェルで候補に挙がったのがこのあたり。
- Lenovo Yoga 2 13
- 機能としては必要十分で、ぐにゃっと曲がってタブレット的に使える機構も、打ち合わせの場なんかでは便利そうだった。しかしいかんせん1.6kgは重い。あとLenovoのマシンを買ったことがないので、信頼性の点で何とも言えないものが。
- SONY VAIO Duo 13
- wacomのペンデバイスの評判が良かったのと、スライド機構に興味があって。あとその割にYoga 2より軽くて、バッテリーで18時間動くらしいという。VAIOは過去に3回買って、割といい印象があったんだけど、ソニーがあんなことになって。で、中古ではいっぱい出てるんだけど店頭に実機が全然なくて、試さずに買うのもなあみたいな。あとディスプレイの角度が変えられないのが。VAIO Proという選択肢もあるにはあった。
- NEC LaVie Z LZ650
- 13型で1kg切ってる軽さで、そこそこ頑丈そうでいいなという印象でした。ただ店頭で触ってみたらキーボード付近がけっこう熱くて、これは自分には向かないかもと。わりと手汗をかくほうなので、ノートPCの手のひらが当たるあたりが熱いのは決定的にダメで、あとなんかキー配置が。左下にCtrlがあってほしい派なので、Fnになっていたのを見て、うーんとなった。
あとまたASUSとかも考えたんだけど、もっかい初期不良的なクセのある個体を引いても意味ないし、そう考えると、どうもいわゆるノートPCに分類されるマシンで決定打になるものが見つからないんですよね。少し前ならあったのかもしれないけど、Windows 8とかのこのタイミングでとなると。
さて、そこへ来て7月17日発売のSurface Pro 3。どうやらスマートで良さそうですよね。Surfaceシリーズが良さげというのは、前に仕事先の方に見せてもらって知っていたので、わりと興味津々で、発売されたと聞いてさっそく実際に店頭であれこれ触ってみました。
画面の大きさは、まさにジャストなイメージで、13インチほど大きすぎず、11インチほど狭くない。十分に軽いし、キーボード(タッチカバー)側に発熱する要素がないので手元も快適に作業できそう。タブレットとして使うには難ありのサイズ感だけど、ノートPCとして使うならこれは全然アリかもしれないと思いました。
Pro 3のレビューでよく言われているのは、「本体の右上あたりが熱くなりやすい」というもので、どんなもんかと実際にあちこちのお店でぺたぺた触ってみたのですが、私としてはさほど気になるほどではなかった。いまどきスマホですら高負荷のときは熱を持つし、i5とか積んでいてこの薄さなら、まあある程度は当然というもので。しかもノートPC的に使うなら、個人的には前述のようにキーボード側に放熱がなくて、本体側(液晶のある側)が熱くなるのなら全然いい。
ただ、見た感じの印象で、液晶の白が黄色もしくは緑に寄っているような気がして、その点は比較的Surface Pro 2のほうがいい。実際に並べてみても差を感じる。でいて、さらにペンは筆圧1024段階のwacom製を採用していたPro 2のほうが良くて、そう考えると型落ちのほうを狙ったほうが費用も抑えられる。でも、11インチを切る画面の小ささは(高解像度とはいえ)どう考えても私には向いていなくて、それならやっぱり無難にクラムシェル型ノートを買ったほうが幸せになれるのでは、みたいな堂々巡りを。
そして結局Surface Pro 3を
特に何が決め手だったというのはないんだけど、ソフマップで25日の中古の日に売るものを買い取りに出したら、意外とそれなりにまとまった額になったのと、そのお店にたまたまCore i5/128GBの在庫があったのと、あとタイプカバーの「ブルー」が自分の(EPX studioの)イメージカラーにかなり近くて気に入ってしまったのと、まあそのような理由です。別にノートでも良かったけれど、どうせWindows 8.1にするならMSの提唱するエコシステムに一度乗っかってみるのもいいんじゃないかなと。
そして開封して3日くらい使ってみて、多少クセはあるものの、この感じなら余裕で仕事でも使えそうだということが分かりました。ヘタに妥協しないでPro 3にして良かったです。
その「クセ」というのも主にWindows 8に関するもので、要するに高dpi環境に対するスケーリング対応がガチャガチャなんですね。古いアプリケーションは軒並みボケた表示になってしまうし、かといって実行ファイルごとにスケーリング無効オプションを設定すると、異常に小さくて細い文字になってしまったり…。Adobe Readerのように、そこにタブレットモードみたいなのが混在すると完全にカオスで、これはMacとかにこだわる人にはとても受け入れられないだろうなあと改めて。
私は別に、そのあたりは許容できるんだけど、Google Chromeがまともに使えないのだけは困っていて、これはどうも次期アップデートで解消するらしいとの報を聞いてホッとしています。IEやFirefoxでは現時点でも問題ないわけだし、Surface以外にもRetina並の高dpiのデバイスは今後も出てくるだろうし、その点ではさほど心配していませんでしたが。
動作は極めて快適で、もたつきを感じる場面は今のところないです。ひとことで言うとちょー速い。あとWindows 8.1のスタート画面とデスクトップがごっちゃになっている感じ、嫌いじゃないというか、むしろ慣れたらけっこう好きかも。普段の作業のなかで、画面をぐいぐい直に触るのが、シーンによってはかなり直観的で便利に感じたのは意外でした。タッチカバーのパッドは手のひらが触れて誤動作してしまうので、オプションで無効にしておいて、デスクトップ画面ではBluetoothマウスと画面タッチを併用しています。
ペンの使用感についてはまず、ノックひとつで速攻でOneNoteが使えて、ファイル名とか決めず自動でOneDriveにストックしてくれるのが最高です。筆圧まわりは、確かに普段使っているintuos3ほどセンシティブではなく、気持ち強めに書く必要がある感じ。試しにClip Studio Paint Proを入れてみて、アプリケーション内の筆圧設定を調整してみたら、けっこういい具合になりました。この書き味はドロー系のOneNoteとは全然別世界のものです。とはいえ、指摘されているようなゆっくり引くと線がブレがちになるという現象は確かにあって、例えば漫画原稿のペン入れは厳しいかもだけど、これも今後ドライバのアップデートとかで解消する可能性もあるし、まず自分が慣れてみないことにはね。
このあたり、私自身も興味のあるトピックなので、後日また実例を交えた記事を書くかもです。
留意点として、USBに直挿ししたLogitecの外付けDVDドライブ(LDR-PME8U2LBK)が電力量不足で機能しませんでした。なので早速セルフパワーの4ポートハブ、iBuffaloのBSH4A05U3BKを買ってきて噛ませたところ、無事に使えました。そもそもPro 3にはUSB端子が1つしかないので、この手のハブはあったほうが。欲を言えば有線LAN端子を兼ねているものとかがあれば、そっちのほうが良かったのだけど、USB3.0でバスパワー以外でとなると見つかりませんでした。USBハブって、おもちゃみたいなのを除くと意外に選択肢ないのね。
微妙なところ
本スレなどを見ているといくつか報告されているようですが、スリープから復帰したときに無線LANを掴まないことがけっこうな頻度であります。体感で4割くらいの確率。正確には、掴まないというか、他のAPは拾っているのに、それまで使っていたAPのみ「制限あり」という表示になってしまい、そのまま待っていても再接続しない。Wi-Fiを一度オフにしてオンし直すと速攻で繋がります。ルータはBuffaloのWZR-450HPで、念のためファームウェアも最新の1.96に更新してみましたが解消していません。
接続中は安定していて、電波の掴みも他の機器に比べてかなり優秀なので、これだけ解消してくれればネットワークに関しては完璧なんだけどな。
あと、タイプカバーの使い勝手、実用上は問題ないものの、F9~F12キーとHome/Endキー関連がFnでスイッチしないと使えないようになっているのがちょっと困る。Fnキーの動作もCapsキーでロックできるものの、その度に切り替えるのもね。カバーは、磁石で傾斜をつけるとぺなぺなした打鍵感でクセがあります。Pro 2までのように接地面にべたっとすることもできるので、こっちのほうが私はいいかな。
もうひとつ、2回くらい発生したのが、Bluetoothマウス(iBuffalo BSMBB17)がいきなり認識しなくなる現象。BTデバイスを使うのが初めてなので、この手の機器でよくある現象なのかも分からないのだけど、別段予兆もなく突然反応しなくなるのがけっこう困る。これも再接続を試みると急に解消する。これ、もう少し再現する状況を見極めてみます。
あとこれはDTMやってる人には痛い。どう考えてもWavesがアレなんだけど、Wave License Centerで、Surfaceをクラウドからのライセンス移動先デバイスとして認識してくれないのです。なんだろこれ、サポートに報告したほうがいいのかどうなのか。
Surface Pro 3、買いかどうか
率直に言って、向き不向きはありそうです。まずタブレットを期待する人は買っちゃダメで、大きさ重さとか、アプリの不自由さとか、タブレット持ちしたときの発熱やファン動作から、普通にノートPCを抱える状態をイメージしてもらえれば、他にもっといいタブレットがあるので。
あと、Windowsの伝統的なカオス感に寛容になれない人もたぶん向いてなくて、つまりスマートに見せているけど裏側は新旧がちゃがちゃで複雑で、でもそういう箇所まで分かる人には一通り弄れるようになっているという、いつもの「Windows感」が凝縮されていて、iPhoneやMacユーザーなんかを見ていると、そういうのを見たくない人はたぶんいっぱいいると思うんですよね。でも、かえって積極的にそっちに寄ってしまう層というかタイプの人は、えっ意外といいじゃん、みたいになれるかもしれません。
私には向いてました。これなかなかいいですよ。他に使っているうちに気づいた点が出てきたら、また書いてみます。
網膜裂孔の治療(2回め)と緑内障の発覚
網膜裂孔の治療(2回め)
先週、半年ぶりの眼科の定期検診で右目の網膜裂孔が見つかって、即日レーザー手術(光凝固術)となりました。5年前の29歳のときに左目をやっているので、2回めです。私は10代から強度の近視で、これはまあ、穴が見つかったら塞いでいくしかなくて、どうにか網膜剥離になる前に手を打っていくという感じで。
ところでこのブログ、継続的にアクセス解析を見ていると、前回の治療の記事(網膜裂孔の治療体験記 | EPX studio blog)だとか、その前の飛蚊症に関する記事(飛蚊症との付き合いかた | EPX studio blog)へのアクセスがコンスタントにあって、それを見るにつけやはり書いておいて良かったなあと思います。なにごとも当事者となると、自分以外の他のいろいろな人のケースを知りたいもので。ニッチな趣味なんかもそうだけども、こういう話題はインターネットに向いてる。なので、今回の件もいつか誰かのなにかの参考になることを期待して、一応書いておきます。
穴が見つかったのは、眼球をラグビーボールに例えると下辺部のあたりで、強度近視によってまさにラクビーボール状に変形することで、そのあたりが薄くなるのだそうで。前回と同じように、機械で強い緑色の光をチカチカと30回近く当てていく要領で、痛くも痒くもない代わりに、猛烈に眩しい。でいて、瞬きができなくて、涙はぼろっぼろ出るし拷問のような。
考えてみれば、眼球を通して網膜にレーザー光を当てて焼くというのは、なかなかえらいことだ。普段眼科のお世話にならない人にとっては、想像しただけで卒倒するようなことなのかも。実際には、別になんにも恐いことはないんだけど、できればもうあんまりやりたくないですね。あと、治療費が3割負担で35,000円とかになるので、痛いか痛くないかと言われれば、そっちの意味で痛い。
一週間して経過を観てもらって、色素が定着するような感じになるらしくて、異常がなければ引き続き定期検診で経過を観察していく。これ自体はそのようなものです。
緑内障の発覚
で、右目のその網膜裂孔が見つかったのと同じタイミングで、左目に眼底検査で初めての異常が見つかりまして。視神経乳頭に一部暗くなっている箇所があって、視神経の活動を診るヒートマップのようなカラーの図でも、視神経が反応していないエリアができている。これは緑内障の疑いがあるので、視野検査をした方がいいですねってことで、タイミングよく予約の取れた翌日に初めての視野検査。
まず私はおそらく人間の目における「視野」というのを誤解していて、それはいわゆる液晶画面の視野角のような、角度ないし幅を持った一定の範囲であって、緑内障ではそれが端から狭くなっていくイメージでした。なので、そもそも視野が欠けてきたら、検査するまでもなく自分で気づくでしょと思っていた。
けれど人間の脳というのは良くできているもので、見えないとか見えにくいものは、画像処理のプロセスで補完してしまうそうなのです。「見えない部分が見えていない…ように見える」というのは、つまるところ、本人が自覚できるレベルにおいては「欠け」が存在しないのと同じことで、そのために検査機器で検査をするのだということでした。
といっても、視野検査ってのは、なんだか素人にとっては原始的とも思える仕組みによるもの。機械に顎を乗せ片目で一点を見つめて、視界の上下左右にランダムに出現する白い光点が、見えたと感じた瞬間にボタンを押す。所用時間は両目合わせて10分そこそことはいえ、なかなかに集中力を要する作業でした。もちろん、誤認やボタン押しミスもあって、そういった誤差も含めて、見えない箇所は何度光っても見えないのだそうで、それを紙に2次元的にマッピングして出力するようなシステム。
結果として、私の場合、先の眼底検査で視神経が機能していない部分と、視野検査で無反応だったエリアが対応しているということで、左目のみ緑内障と診断されました。視野欠けは、縦横20ドットくらい?のマトリックスで表現された視野の1、2ドットに現れていて、症状としてはごく初期のものらしく、自覚症状がまったくなかったというのももっともな話。
眼圧は以前から正常な値だそうで、今回の時点でも数値的には14~15の範囲ということで、「正常眼圧緑内障」というのに該当するみたいです。緑内障イコール高い眼圧みたいなイメージがあったので、そういうものがあることも知らなかった。どうも、これにもやはり強度近視が関係しているらしく、あと遺伝の疑いがあるとのことでしたが、私は近親者に緑内障の人はいないのでなんとも。
緑内障とは、放置しているとだんだん眼球を満たす水分の圧力で視神経細胞が間引かれていって、その結果として視野が欠けていき、数十年スパンで失明するおそれもあるというこわーい病気です。しかも視神経は自然再生しないので、進行は不可逆のもの。治療としては、点眼薬でどうにか進行を止めることが目的ってくらいで、原則的には一生付き合っていくようなものです。
でまあ感想としては、30代も半ばだしあちこちガタも出てくるよねという具合で、さほどネガティブにはなっていません。少なくともいまの時点では、お風呂に入ったり歯みがきする要領で目薬を差せばいいだけで(ちなみに処方されたのは「キサラタン」という緑内障治療ではメジャーなお薬)、定期的に通院しないとなのは、飛蚊症出始めた20代から変わらないし。
そりゃ失明なんていうのは避けたいけど、自力でどうにもできないことを気に病んでもね。変な話、目が弱くてもすばらしい仕事をしている人はいっぱい知っているし、とりわけJ.S.バッハの充実した人生と晩年の仕事ぶりを思うと、もはや何も言えないでしょう。
それにしても、人生色々なことがあるもので、みなさんもどうぞお大事に。ともかく強度近視の人はそれだけで複数のリスクを抱えているそうなので、数か月~半年スパンの眼底検査は欠かさないようにしたほうが良さそうですよ。私はといえば、先天的後天的問わず、自分がたくさん持っているポンコツな箇所のひとつとして気は配りつつも、普段通りに生活していくつもりです。
ニンジャスレイヤーの新刊とあれこれ
「ニンジャスレイヤー」の10巻めの物理書籍版(Twitterでリアルタイム翻訳された小説のリライト版…つまり単行本)であるところの『マグロ・アンド・ドラゴン』が今日発売になりました。相変わらずのサブタイトルなんだけど、これはもう本文中に出てくる固有名詞だからね。一部書店では、発売日前日の早売りが通例となっていて、私も昨日購入しました。
さっそく中をパラパラ見てびっくり。ウキヨエ・コンに採用されてるー!
これはどういうものかというと、巻末恒例のファンアート掲載コーナーです。いわゆる読者投稿ページですね。先日、忍殺アンソロ本に参加してみた勢いで、初めて投稿してみようと思って送ったんだけど、まさか採用されたうえにモーゼズ氏のコメントがつくとは…。これは本気でうれしい。
トリガーによるアニメ化
先日LAでのイベントで、2015年のアニメ化が正式に発表されました。
『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』公式サイト|NINJA SLAYER FROM ANIMATION
http://www.ninjaslayer-animation.com/
キービジュアルやロゴのアートワークなども含めて、まさにツボを突いた仕上がりで、これは大いに期待していいのでは。しかも監督が「キルラキル」副監督の雨宮哲さん。ANIME EXPOで配られたトリガーキャラ+ニンジャスレイヤーのイラストは、天才アニメーター吉成曜さんの作とのことで、いよいよ夢のタッグが現実味を帯びてきました。これはもうね、ついて行きますよね。
でなんか、私がニンジャニンジャと言っているので、どこから入ったらいいか最近たまに質問されることがあるんですけど、これは無難に書籍の1巻(『ネオサイタマ炎上1』)を薦めています。といっても1,300円とかするので、未読でいきなりというのが躊躇われる方にはiPhoneなら「NJRecalls」、Androidなら「Njslyr Reader」というアプリで、無料で全話読めます(書籍化にあたって書き下ろされているごく一部のエピソードを除く)。特に後発のNJRecallsはすごい勢いでバージョンアップを重ねていて、実況タグを交えた臨場感も楽しめるので、iOS端末を持っている方にはお薦めです。
あるいは、手っ取り早く雰囲気を掴みたいのであれば、田端・余湖先生によるコミカライズ版が、原作小説の雰囲気を忠実に再現していて最適です。
そのほか、こまごまとした紹介やお薦めエピソードなどは、去年書いた記事にもまとめてあります。
『ニンジャスレイヤー』にハマる | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1118_ninja-slayer.html
調布音楽祭&バッハ・コレギウム・ジャパン「ブランデンブルク協奏曲」
7月3日から6日にわたって調布で開催されたクラシック音楽イベント「調布音楽祭」の最終日へ行ってきました。いまの形で開催されるのは昨年に続いて2度めということで、私は先のBCJの公演のチラシで初めてこの音楽祭の詳細を知りました。Webサイトがきれいにまとまっているので、概要はこちらで。
調布音楽祭 2014 | Chofu Music Festival
http://chofumusicfestival.com/cmf2014/
大きな特徴としては、調布を本拠のひとつとするバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が全面的にバックアップしているという点で、大手の音楽事務所がついている「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」や、大きなスポンサーがついている「東京・春・音楽祭」とはまた違い、良い意味で手作り感のある音楽祭でした。
総合プロデューサーは、BCJの一員でもあり、バロック~現代音楽と幅広く活躍されている音楽家の鈴木優人さん。先日、Twitterでフランチェスコ・トリスターノと食事をしている写真が流れてきてびっくりしましたが。また副プロデューサーは、ニコニコ界隈では「ピアニート侯爵」として知られ、ついこの前も知性溢れる論評(「より正しい物語を得た音楽はより幸せである ~佐村河内守(新垣隆)騒動について~」)が話題となったピアニストの森下唯さん。ピアニート侯爵は、今から6年前とかに「時報によるロマンス ト長調」で知って以来好きだったけれど、まさか鈴木優人さんと同級生で、こんな音楽祭で繋がるとは思っていなかったです。
今回は、このお2人のコンサートを聴く機会こそなかったものの、自分と同年代の音楽家がバリバリ活動してこういう市民レベルの意欲的な音楽祭を動かしているというのを知ると、なんだか嬉しいですね。
会場は、京王線調布駅の南口周辺でいくつかに分かれていて、調布市グリーンホールの大小ホール、文化会館内のホールとオープンスペース、それにグリーンホール外の広場でも演奏会をやっていました。有料公演だけでなく、フリーのステージもそこそこあって、早めに着いたので調布駅周辺をぶらぶらしつつ、オープンスペースのミニコンサートを覗いたり。若手演奏家によるヴァイオリンやピアノ素晴らしかった。お客さんのレベルも高いというか、無料公演でもマナー良くて拍手も暖かい感じで、雰囲気がいいなと思いました。
さて、目当ての有料公演はBCJによるブランデンブルク協奏曲全曲。1番から6番まで、これ全曲をいっぺんにというのは大変なことで、楽器編成も全然バラバラだし、アンサンブルを率いる鈴木雅明先生は足かけ2時間半チェンバロを弾き通しだしという、タフなコンサートです。演目としては、6番から5番と遡っていく要領で、最後にもっとも大編成の1番でお祭り的に締めくくるという構成。これがまさに素晴らしいアイデアでした。
ちょっと静かに深いところから始まる6番、第三楽章でバッハらしい歯切れの良いリズムとヴィオラの緻密で鮮烈なデュエットにさっそくテンションが上がってしまう。次いで、チェンバロに反響板を立てての5番。この5番は特に好きな曲で、通奏低音の楽器だった鍵盤楽器を協奏曲のソロ楽器として前面に押し出したごく初期の作品として知られています。快走する雅明先生のチェンバロの勢いに圧倒された。トラヴェルソも良かった!4番は何と言っても寺神戸さんの軽やかな超絶技巧とリコーダー2本の絡み。
休憩を挟んで、後半は3番から。ここの冒頭で注釈があって、2楽章からなるこの3番の間に、3台のチェンバロのための協奏曲の緩徐楽章を3人ヴァイオリン、3人ヴィオラ、3人チェロ+コンティヌオ用に編曲して挟むとのこと。これが驚くほど違和感がなかった。この編成、視覚的にも大変面白いのと、低音がものすごく強調されて、特に第三楽章はビート感が強くまるでダンスミュージックだった。2番はギィ・フェルベ氏によるトランペットソロもカッコ良かった。最後は、盛大に1番を演奏して、祝祭の余韻を残しつつ終了。
ブランデンブルク、明るくて心が躍るような曲が多いし、どこまで行っても最後は冒頭に戻ってくるという安心感がある。あとバッハは何でもそうだけど、ひとつの音型がコピーされ、拡大され、どれほど複雑に網目のように展開しても、ラストはみるみるうちに折りたたまれてひとつの点に収束するという美しさ!堪能しました。
音楽祭に関わっている方々にとっては、あれこれと表からは見えないご苦労もあるのだろうけど、この挑戦的なイベントはぜひ来年以降も続けてほしいなと思います。何をおいてもBCJという世界に誇る古楽アンサンブルを擁するというのはすごいことだし、調布市はこういう音楽祭があることを内外に誇っていい。市外からの観客としては純粋にうらやましいなあと思う。すごく楽しかったです。
コンサートが終わって、以前少しだけお仕事でお世話になった調布駅前のたけちゃんにぼしらーめんさんへ。調布へ行く機会があったらきっと食べに行こうと決めていたのをようやく。私はまったくのラーメン初心者なんだけど、煮干しのダシがすっごく効いた醤油ラーメン、美味しかった。また行こうっと!
KAOSS PAD QUAD
昨日書いたAlesisの8chミキサーをさっそく売って、中古のKAOSS PAD QUAD(以下KPQ)を買いました。差額は支払う感じになったけど、いいタイミングでいい買い物ができて満足です。
半年前、DJミキサーをエフェクターのないDJM-250に買い替えたときから、DJでもライブでも使えるマルチエフェクターがあるといいなと思っていて、KPQは視野に入れていました。春にパイオニアのRMX-500が出たときはかなり揺らいだけど、価格的にちょっとまだ手が出ないので様子を見る感じで。
それで昨日、例のAlesisのミキサーを売りに出したいなと思って、ついでにKPQのことを思い出してデジマートで中古を検索してみたら、たまたま高田馬場の某楽器屋さんで状態のいいものが安く出ていたので、これは渡りに船かなと。今朝メールで問い合わせて、ついでにミキサーの買い取り価格も見積もってもらって、即決でした。仕事の合間を縫って、直接お店へ。
KAOSS PADは、既に初代のmini-KPを持っているんだけど(赤黒のやつね)、ちょっと単機能すぎるのと、どうも電池駆動のときにラインアウトのレベルが小さいような気がして。KPQの手軽さと剛性、それに機能のバランスは、今回の目的にはちょうどいい感じです。
少し使ってみていいなと思うのは、エフェクトの種類が絞られているのでアクセスしやすい点。ダイヤルを回してとか、プリセットから何番を選んで…とかじゃなくて、次はHPF、次はリバーブと速攻で呼び出せるのがシンプルでいい。それでいて、ウリであるところのエフェクトの重ねがけ機能についても、例えばHPFとリバーブを同時にかけたりとか、よく使う組み合わせにできるよう設計されていて、無駄がないなと思いました。
ただ、いかにもKP使ってますみたいな派手なエフェクト使いって、もはやちょっとダサいみたいなところがあって(私だけかもしれないけど)、さりげなくいい感じに使えるようになるにはトライ&エラーが必要だと思うので、しばらくはあれこれ練習してみます。
ちなみにミキサーは、前に使ってたTapco Mix60を引っぱり出してきました。やっぱMackie系の安心感はありますね。次にミキサー買い替えるならMackieにしようかな。
Alesis MultiMix 8 USB 2.0 FXが残念だった話
機材のことなんだけど、去年の9月に導入したAlesisの8chミキサー(Alesis MultiMix 8 USB 2.0 FXとTracktion 4 | EPX studio blog)が、いざちゃんと使ってみようと思ったら結構ながっかり仕様で、どうしたもんかという。
MultiMix 8 USB 2.0 FX 8-Channel Mixer with FX and 24-bit recording
http://alesis.com/multimix8usb20fx
これって何がウリかというと、USBオーディオインターフェイスとしても機能するうえに、各chのインプットをパラで(というかマルチトラックとして)DAWで録れるという点で、まさにその機能に期待して買ったんです。買ってすぐ試してみたりなんかして、なるほど確かに録れるねっていうのだけは確認したんだけど、どうも実際に録音したオーディオクリップのレベルが小さい。
ミキサー側のマスターのレベルメーターはもちろん0dB超えてて、それでもなお-20dbくらいでしか録れないので、明らかにおかしいなとは思いつつ、設定かなにかだと思って放置していました。それ以降、ライブとかでも使ったんだけど、レコーディング用じゃなくて、単にミキサーとして使う分には別に困らないので、まあいいかみたいな。
そして最近、久しぶりに機材のセットアップを再開してみて、この件をきちんと検証してみようと思ってあれこれ試したんですが、やっぱりダメで。録れるは録れるんだけど、すっごくレベルが小さくて、例えばマスターボリュームを+15に振り切るまで上げても-6dBとかで、全然。諦めてググったら、似たような報告がいっぱいありました(しかもメーカー公式のフォーラムに)。
USB volume too low on line inputs in Multimix 8 2.0 FX
http://community.alesis.com/alesis/topics/usb_volume_too_low_on_line_inputs_in_multimix_8_2_0_fx
結果もうこれは仕様みたいで、Alesisダメじゃんという…。
ついでに、他にもアレだなと思った点を書いておくと、「2 TRKS/USB TO MONITOR」ボタンでUSBオーディオI/Fのメインアウトをモニターできるんだけど、明らかにノイズが乗っている。あとなんか本体の発熱が、例えば前に使ってたTapcoのミキサーと比べても相当すごい。場所によっては、触ったらあちってなるくらい。
なのでこれは早々に手放そうと思っていて、Alesis製品もエフェクターとか買ったけど、当分新しい製品には手を出さないようにしようかなと。
で考えたのが、TR-8なら同じような用途に代用できそうなんですよね。例えば、キックとかパラで録って外部のハードウェアでいじりたいパートだけアサイナブルアウトで出して、Tapcoの普通の6chミキサーに他のシンセとかの音を集約しつつ、TR-8のエクスターナルインに戻してUSBでPCで録ればいいんだもんね。
そう考えるとTR-8の設計ってほんと良くできていて、いろんな組み合わせの可能性が広がる。ヘッドフォンで最終的なマスターの音をモニターしていても信頼できる(AlesisのMultiMixは、ミキサー側のモニターレベル次第で実際の鳴りと全然違うことがよくあった)し、ハード主体の曲作りは、しばらくこれであれこれ実験してみようかなと思います。