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オランダ・バッハ協会の「All of Bach」

クラシック2014-05-23 23:38

1921年創設の歴史ある古楽演奏団体オランダ・バッハ協会(Nederlandse Bachvereniging)による、にわかには信じがたい壮大なプロジェクトが始まっています。題して「All of Bach(バッハのすべて)」。J.S.バッハが生涯に残した全作品1080曲についての演奏記録映像と解説記事を、今後20年間(!)にわたって毎週金曜日に公開してゆくというものです。サイトは5月2日に公開され、初回の6曲と合わせて今日までの3週分、計9曲が公開されています。本気で毎週やるつもりなのか!
まずは公式の告知映像を。

作品の公開順には特に法則性はないらしく、金曜日の更新とともに公開されるようです。もちろん1080曲というのはバッハ作品主題目録番号(BWV)によるナンバリングに基づいているので、ある週は30分くらいの教会カンタータだったり、別の週は数分の鍵盤楽曲だったり、またある週は2時間超の大曲だったりするのでしょうが、いずれにせよ、本当に全曲やるつもりのようです。

例えば、今日23日に公開されたのはカンタータ146番「われらあまたの苦難をへて(Wir müssen durch viel Trübsal in das Reich Gottes eingehen)」でした。

Wir mussen durch viel Trubsal in das Reich Gottes eingehen - All of Bach
http://allofbach.com/en/bwv/bwv-146/

コンテンツは演奏映像がメインで、楽曲の詳細と演奏者、録音に関する全情報、声楽曲の場合はオリジナルテキスト全文が付いています。さらに、その曲についての指揮者または演奏者へのインタビュー映像と解説記事までがあって、これで1セット。それなりにボリュームがあります。
ちなみに、映像自体はvimeoがホスティングしていて、HDの美しい画質で観ることができます。これ、このクオリティのものが本当に無料で、煩わしい会員登録とかも一切なくて、いつでも鑑賞できていいんですかという。

サイトの説明を読むと、団体の創立100年に向けたプロジェクトの一環だそうで、それにしてもどういう理屈でこんな壮大な企画が成立するのかが不思議です。だって、例えば研究目的でいうとISMLPやパブリックドメインクラシックみたいなサイトがあって、また有志レベルではKickstarterで成功を収めたOpen Goldberg Variationsみたいなプロジェクトがある。一方で、歴史的価値のある演奏なんかはバンバン無断でYouTubeにアップロードされていて、便利ではあるものの玉石混淆だし。

このAll of Bachが今後も20年間続いていくのならば、まさに永久保存版的なバッハ作品のアーカイブになるはずで、ひとつの団体によってクオリティコントロールされた演奏記録、シンプルながらそれ自体が革命的な挑戦のように思います。

映像的に特におもしろいのがロケーションの違いで、あるときはフローニンゲンの17世紀の教会オルガン(Toccata and Fugue in D minor - All of Bach)で、またあるときは小ぢんまりとした邸宅?の一室のチェンバロだったりする(The Well-Tempered Clavier I no. 12 in F minor - All of Bach)。けれどいずれの場合も演奏、映像に一切手抜きがない。

調布音楽祭 2014にも出演されるヴァイオリニストの佐藤俊介さんは、このオランダ・バッハ協会管弦楽団のコンサートマスターだそうで、今日公開された先のBWV146の映像のなかでも弾いておられます。この曲、冒頭の2曲はチェンバロ協奏曲第1番BWV1052からの転用ですが、オルガンで聴くとまた素晴らしいですね。

とにかく、これから毎週金曜日が楽しみになります。完走(完奏)まで見届けたい!

Homepage - All of Bach
http://allofbach.com/en/

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