ファーストパーソン・シンセサイザー「FRACT OSC」
「FRACT OSC」(以下FRACT)というインディーゲームをやってます。もともと去年Steam Greenlightのころから注目していたタイトルで、一時期あまり情報も下りてこなくて、開発が進んでいるのか不明だったのですが、無事に発売されました。PCとMac用が日本時間23日午前2時に発売されたばかりで、Steamでは4月30日まで10%オフの13.49USDになっています。
今ちょうどコミティアの準備などでバタバタしていて、まだトータル数時間しか遊んでいないのですが、どういうゲームか分かりにくいと思うのでざっくりレビューしてみます。
まずは公式のYouTubeトレーラーを。
カナダのゲームデザイナーRichard Flanagan氏率いるPhosfiend Systemsが、3年以上をかけて開発したFRACT。アバウトに説明すると、Tronライクなオープンワールドを探索し、各地に散在するパズルを解くことで、仮想の音楽スタジオのさまざまな機能をアンロックしていくゲームです。まず、ビジュアルがキャッチーなので、これに引っかかる層はだいたいツボなんじゃないかと思います。世界観はRezとかWipeoutとかで、音楽遊びの部分はDepthとかグルーヴ地獄Vとか、と言えば通じそう。THE VERGEの開発者インタビューを含む記事では、Myst+Tronと表現しています。
'Fract' is a trippy game that tricks you into making music | The Verge
http://www.theverge.com/2014/4/22/5625828/fract-is-a-trippy-game-that-tricks-you-into-making-music
さて、実際のゲームはどんなかというと、まず文字情報が一切なくて、どこへ行って何をすればいいかということも含めて、探索して見つけていく感じ。世界は大きく3つのエリアに分かれていて、赤がリード、青がベース、緑がパッドというように、シンセサイザーのパートが割り当てられています。たとえば、赤のエリアのパズルを進めていくと、リードシンセのパラメータが解放されていく。
エリアは完全にシームレスに繋がっていて、読み込みは最初だけ。けっこう広いので、かなりの距離を歩くことになるのですが、各エリア間のポイントを移動するリフトがあって、それがこういうの。ピューンと飛んでいくのが異様に気持ちいいです。
操作は、普通にWASD移動とマウスで視点操作。ジャンプとか攻撃はなくて、エリア外に落ちたり動く障害物に潰されるとゲームオーバーです。Eキーか右クリックで、探索モード?になって、昔のCRTのようなモアレがかった画面に。この状態で、パズルに必要な色々な操作ができるようになるので、怪しいところを見つけたら右クリックで調べていきます。
パズルは、ツマミを操作して回路を繋いだり、簡単なピアノロールに「打ち込み」をして仕掛けを作動させたりと、これもシンセサイザー的なものがテーマになっています。いわゆる音楽ゲームのミニゲーム的なものでは全然なくて、すごく良くできていて感心してしまう。サイバー感溢れる風景のなかを探索しつつ、観察と試行の繰り返しをのんびり楽しめる人向け。
ビビッドな色使いなので勘違いされそうだけど、音楽的には、流行りのEDMとかでは全然ないです。もっとアナログ的なアトモスフェリックな音で、ハイスピードで脳汁ドバーみたいな感じというよりも、サイバースペースをじっくり探検するという雰囲気。音楽を担当したMogi Grumbles氏によれば、打ち合わせ段階ではBoards of Canadaをイメージしていたとのこと(FRACT: first-person synthesizer video game soundtrack | Brooklyn Music Lessons)。
同インタビューでは、Roland SH-101などのアナログシンセサイザーやハードウェア機材へも言及していて、実際に作中にもこれらの音が使われているそう。ビルトインの動的なシンセサイザー部分はPure Dataで作られていることも明らかにされていますね。
で、スタジオ画面はこういう感じ。スタジオは、ゲーム部分とは独立して存在して、ゲーム中どの状態からもEscキーのメニューから移動することができます。
超かっこいいです。四方をパネルに囲まれた、宇宙船のコンソールのような。前述のとおり赤がリード、青がベース、緑がパッドのシンセに対応していて、ソングが組める16ステップのループシーケンサー(ピアノロール)があります。写真は、まだ全然ロックがかかった状態だけど、ちょっと触ってみたところ、これは単にそれっぽく見せているだけじゃなくて、普通にソフトウェアシンセです。隠れているパラメータの種類と数によっては、ちょっとした曲も作れてしまうかも。
面白いのは、デフォルトでYouTubeとの連携機能があって、ゲームから直で演奏動画をアップできるようです。あと、同じ設定画面でいうと、パズルがめんどくさい人向けに全パラメータをアンロックするボタンも一応あります。
マシンスペック的に厳しい場合、ウィンドウモードにして解像度を落とすと快適に遊べます。
正直、遊んでみるまでどういうゲームかよく分からなかったのですが、これは期待以上でした。ピンと来た人にはぜひおすすめします。私も時間が取れたら、じっくり最後まで遊んでみようと思います。
FRACT | An Indie Adventure Game by Phosfiend Systems
http://fractgame.com/
バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲」
4月14日、先月の「ヨハネ」に続いて、ミューザ川崎シンフォニーホールで鈴木雅明氏率いるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による「マタイ受難曲 BWV244」を聴いてきました。1月から楽しみにしていたコンサートで、まったくの初心者の私は、関連本を読んだり、鈴木先生によるレクチャーを聞きに行ったり、あるいはいくつかの録音を聴き込んだりしてきました。その成り行きは、以前の記事でも書いています(マタイ受難曲に関する覚え書き | EPX studio blog)。
特に、最も新しいヤーコプス盤は寝ても覚めてもというか、移動中も家に居るときも、時間があれば聴いていました。もちろんドイツ語なのでただ聴いているだけでは分からなくて、対訳を参照しながら。なので、到底深くは理解できないまでも、ひと通りは、自分なりに消化した状態で今回のコンサートに臨みました。でないと、きっと良さが分からないと思ったのです。
そして、多分それが良かったんだと思うんだけど、アリアやレチタティーヴォの言葉が、音楽と同化して自然に入り込んできて、特別な体験ができました。
BCJのマタイは、ヨハネと比べて驚いたのは、すごくゆっくりと、噛み締めるように演奏するんですね。鈴木先生が以前仰っていた、「マタイは瞑想のための音楽」という解釈とも無関係ではないんだと思います。第1曲から、しずしずと歩み寄るような出だし、I群とII群のコーラスの掛け合い、ソプラノ・イン・リピエーノの歌うコラールの旋律と共に天上から降り注ぐ、ミューザ川崎の巨大なパイプオルガンの音色!この時点で、ヨハネとは(どちらが上ということではなく)質的にまったく違う体験なのだと分かりました。
今回の席は、前回とは反対の2RA側だったのですが、良かったなと思うのはメインで演奏するI群のオケがよく見えたのと、角度的にコンティヌオの鈴木秀美さんと鈴木優人さんの活躍ぶりがよく分かった点です。序盤のBuß und Reu(大好きなアリアです)や、Erbarme dichのピッツィカートなどでは特に。
引退を発表されているゲルト・テュルク氏によるエヴァンゲリストは、ヨハネの回に続き本当に完璧で、安心してずっと身を委ねていたい感じ。第20曲のテノールのアリアは"Meinen Tod"(私の死)というフレーズが印象的な曲ですが、特に沁みました。
全体としてはゆったりとした演奏だった一方で、やはり後半の劇的な効果のある箇所ではメリハリが凄かったです。例えばソリストやコーラスは、ある程度先々の展開を踏まえて準備をするわけですが、"Barrabam!"の箇所では、突然立ち上がって合唱するのです。そしてLaß ihn kreuzigen、第46曲のコラールへと続く流れるような展開。
ソプラノのハンナ・モリソンさんのレチタティーヴォからのAus Liebeも、素晴らしい美しさで感激しました。でここからまた急転直下なんだけど、今回はここでたっぷりと余韻を残してからの、2度目のLaß ihn kreuzigenでした。私にとって、マタイ受難曲の魅力ってつくづくこの落差で、つまり預言の実現とかの教義的な側面には同調できないけれど、人間らしい愚かさに真っ直ぐに向き合おうとする真摯さや、切実な死生観にはある種宗教とかを超えた普遍的なところがあって、そこにバッハさんが完全無比な音楽をあてている。かように罪深く不完全な地上の人間が、音楽においてはperfectionを実現しているところがバッハの凄さだと思うのです。
途中休憩20分を挟み、ちょうど3時間半に及ぶ公演。大喝采のなかで考えたことは、私はこの年齢で遅まきながらこの曲に辿り着くことができて、しかもこういうコンサートを体験できたことは、今後ずっと自分の財産になるだろうなということ。そのうちBCJの過去の同曲の録音も探したりしつつ、長く聴き込んでいきたいと思います。
ニンジャスレイヤーがアニメ化
ニンジャスレイヤーのアニメ化が決定しました!!
アニメーション制作は、「キルラキル」「リトルウィッチアカデミア」のトリガーさんです!
ヤッター!アニメ化決定! | ニンジャスレイヤー物理書籍公式サイト
まさかこんなに早く夢が実現するとは。4月2日にTwitter上で電撃的にアニメーション化の告知が発表され、この時点では11日まで制作会社名を伏せるとのことだったので、トリガー制作だったらいいな的なことを書いたのだけど、まさかまさかの。だって『キルラキル』の熱狂覚めやらぬ今だよ。ハヤイ!ハヤイすぎるぞニンジャスレイヤー。
そして今日、12日発売の書籍新刊『ピストルカラテ決死拳』の早売りをアニメイトで買ってきました。オビ!ほんとにTRIGGERって書いてある…。なんでも、7月のLAでのアニメ関連イベントで詳細発表があるようで、それまでは待機ですね。アニメ版の公式サイトもティーザー的にローンチしているようです。
制作会社のこととかあまり分からないけど、私はトリガーは絶対にニンジャスレイヤー合ってると思うのです。そもそも忍殺は、半神的なニンジャ同士のカラテ・アクションの表現なくしては絶対に成り立たない作品で、かつ、古今東西のあらゆる定型表現をパロディ的に盛り込むことができて、カッコイイと笑えるの二極を先鋭化して表現できると言ったら…トリガーでしょう。すごい。誰がこの話を持って行ったのか、翻訳チームがオファーしたのか、エンターブレインが話をつけたのか、コミカライズを担当している余湖裕輝先生は初めから推していたみたいだけれど。ともかくありがとうございます。
ところで新刊『ピストルカラテ~』の最初のエピソード「シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー」を早速読んだ。これは…Twitter連載時の同エピソードと比べて、ほぼ全面改訂じゃないですか。この話は前巻収録の「ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション」に続くお話で、ある事件のあと主人公であるニンジャスレイヤーがマルノウチ・スゴイタカイビルを脱出するストーリーなのだけど、シチュエーションが圧倒的不利なウルトラハードモードとして加筆されている!しかも、その状況を更に乗り越えてくるニンジャスレイヤー。
実際のところ、これだけの仕事量を翻訳チームがどうやってこなしているのか全然分からないです。いまTwitterでは原則としてこれまで通り2エピソードを並行連載しているし、3種類のコミカライズの監修も同時進行しているはずだし、グッズなどのマーケティング行為もやっているし、トリガーとアニメの話も進めていたとなれば、クレジットされている通り1人や2人でできるものなのか。
そして、ここへ来て原作(英語版)の連載も始まってしまった。
「マシン・オブ・ヴェンジェンス」の原作(英語版)が連載決定! | ニンジャスレイヤー物理書籍公式サイト
http://ninjaslayer.jp/info/275/
もともと「ゼロ・トレラント・サンスイ」の英語版は公式のFacebookに掲載という形をとっていましたが、どうもこちらも本格展開するような感じ。まさか原作者=サンは実在す011010001
ともかく、これから読む人がいるのならば、まず今出ている新刊の『ピストルカラテ決死拳』がおすすめです。いきなりこれから入っても全然大丈夫です。漫画が良ければコミカライズ版も2種類の単行本が出ているし、オーディオドラマ(ニンジャスレイヤー サウンドドラマ「ゼロ・トレラント・サンスイ」 - YouTube)という選択肢もあってこれも翻訳版に完全に忠実な内容になっています。
去年こんな長い紹介記事も書いているのでよろしければ。
『ニンジャスレイヤー』にハマる | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1118_ninja-slayer.html
自転車再開、恩田川の桜とズーラシア
自転車を再開しました。冬のあいだどうしてたかっていうと、3ヶ月間くらい屋内に保管したきりの状態になってました。根っからのインドア派なので、近頃ようやく暖かくなってきて、久しぶりにその気になってきたというところです。ちょうど、ESCAPE AIRを買ってから1年経つんですね(初めてのクロスバイク | EPX studio blog)。
何回か乗ってみて、さっそく運動不足を実感しています。去年一番乗っていたころはもっと軽く漕げていたハズなのに、明らかにペダルが重い。坂なんか、もともと苦手だったのによりキツく感じるし、一生懸命漕いでしまうものだから背中の変な筋肉を痛めてしまったり。自転車ってこういうものなのかぁ。
フリーランスなだけに平日、仕事の隙を縫って、またちょこちょこ乗るようにしようかなと思っています。小さなことでも、目的を持って出かけると楽しくなりますね。
というわけで、最近行ったところについて少しだけ書いてみます。
恩田川の桜並木
4月1日、満開の桜を観に近くの恩田川へ出かけました。このあたりは毎年桜祭りをやるほどの有名な桜並木があるんだけど、私は行ったことがなくて。場所でいうとJR横浜線の成瀬駅付近、上流は高瀬橋(成瀬街道の高瀬橋交差点近く)から、下流は都橋(成瀬クリーンセンター近く)へ至る3kmほどの区間。
噂に違わぬ立派な桜でした。もう、川の両側ずうっと見渡す限り満開の桜。それでも平日とあって花見客もまばらで、ゆっくり観ることができました。今年は個人的にはいわゆるお花見的なイベントはなかったので、自転車押しながらひとりで満喫した。
あんまり見事なものだから、初めは感動していたのだけど、さすがに終わりのほうは慣れてきてしまって。Flickrに上げたそのほかの写真はこちらに。ちょっと寄り道したりなんかして、この日は20kmほど走りました。
2014-04-01 Ondagawa Cherryblossoms - a set on Flickr
https://www.flickr.com/photos/epxstudio/sets/72157643248602083
一年ぶりのズーラシア
4月10日、ふと思い立って、これまた近所のよこはま動物園ズーラシアへ行ってきました。ここは去年自転車を買ったばかりのころ、つまり同じくらいの季節に行ったことがあって、その様子はココにも書きました(ズーラシアに行ってきた | EPX studio blog)。ちょくちょく行こうと思っていたのに、なんだかんだで1年経ってしまった。
年パスでもあれば、と思って帰って来てから調べたら、「横浜市動物園友の会」ってのがあって、これに入ると3,000円で12回までフリーなのね。ズーラシアが600円だから、5回行けば元が取れる計算。なんだー、作ってしまえばよかった。次行ったとき考えよう。
よこはまのどうぶつえん | 会員向け(友の会・アニマルペアレント)
http://www2.hama-zoo.org/member/
ズーラシアは、ずーっと作っている園内一番奥のエリア「アフリカのサバンナ」が、予定だと今年の秋に全面オープンするらしくて、それができるともっと充実しそう。現状、オカピはいてもキリンがいないので、物足りない感じがあって。
しかし、平日の動物園最高に気持ちよかったです。この日は関東でも最高気温が25度を超えて、Tシャツでちょうどいいくらい。木陰で動物たちを眺めながらぼーっとしたりして、いい気分転換になりました。また近いうちに行きたいな。
VERSUSありがとうございました
5日のVERSUS@茶箱に遊びに来ていただいた方、またSNSなどを通してメッセージを下さった方、どうもありがとうございます。今年は誕生日がたまたま土曜日に当たったってことで、馴染みの茶箱さんでこんな企画をやらせていただいて、おかげさまで楽しく過ごすことができました。
肝心のunaくんとのB2B、3時間がとっても早く感じた。案の定、あっちゃこっちゃ飛び回るような音が次々出てきて、全然落ち着きがないセットではあったけれど、とにかく楽しかった。あれは、なかなか余所ではできないね。事前のかなりざっくりしたオーダーに対して、unaくんはさすがによく意図を汲んでくれて、私も知らない魅力的なレコードをたくさん持ってきてくれました。ほんとに感謝しています。ありがとう!
DJにTR-8/TB-3を組み込むのは2回めで、あらためて出音の良さに感心。今回は特に90年代の、ハードウェア由来のニュートラルな音をそのままプレスしたみたいなレコードばっかり持ってきたのに、それらの曲とミックスしても全然違和感がなかった。もちろん、私がまだあまり使いこなせてないので、あくまで音質的な意味合いでだけだけれど。やっぱ、あんな簡単にああいう音が出てしまうのはAIRAの強みだなぁと思いました。
そうそう、AIRAって言えば当日配布したフリーペーパーで、またちょこちょことAIRAネタの漫画を描いたりしました。一部は、落書き公開用のTumblr(PAPERWORX)にアップしています。このペーパー、例によって前日とかに描き始めて、当日の朝4時にやっと8ページ完成して、レコードと機材をガラガラ引っ張って行く道中のキンコーズでコピーしました。
それにしても、久しぶりにレコードでDJしてみて、じわじわと昔の感覚を思い出した。あの、思い通りにいかない感じ。それでも、瞬間的にガチッとギアがハマるところがあったりして、難しいけれどそこが楽しいんだよね。もう、これ以上買い足すことはほとんどないと思うし、いま持っているレコードたちは大事にしたい。
イベント後は、izさんの車でみんなで中野ココスでご飯。帰りも送っていただいて、朝4時とか。荷物が半端なく多かったうえ、雨もパラパラ振っていたのでものすごく助かりました。
34歳になりまして、相変わらず人生ままならないことだらけですが、ありがたいことに、不思議と人の縁には恵まれていると感じます。これからもよろしくお願いします。