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『25年目の弦楽四重奏』を観た

クラシック2014-01-08 17:58

以前から気になっていた2012年公開の映画『25年目の弦楽四重奏』(原題:"A Late Quartet")がレンタルになったので、さっそく観てみた。ベートーヴェンのOp.131(弦楽四重奏曲第14番 (ベートーヴェン) - Wikipedia)という曲を題材に、架空の弦楽四重奏団のメンバー間の人間模様を描いたフィクション。決して、クラシック音楽ファン向けに作られたマニアックな映画ではなくて、ごく現代的な人間の過ちや苦悩を、あまり奇をてらわずに描いた作品でした。特別なことはないけれど、面白かった。

舞台は冬のニューヨーク。結成25年を迎えた、世界的に有名な弦楽四重奏団「フーガ・クインテット」に転機が訪れる。チェリストで最年長メンバーのピーターが、パーキンソン病を患ったことで引退を宣言し、それを期に第2ヴァイオリンのロバートが第1をやりたいと言いだす。妻であるヴィオラのジュリエットとも不仲になり、また彼らの娘のアレックスが第1ヴァイオリンのダニエルと問題を起こす。完璧と言われたアンサンブルがあっという間に崩れていき、四重奏団はどうなっていくのか、というようなあらすじ。

盤石と思われている人間関係が、実は簡単に壊れてしまうほど脆いもので、その連鎖的な表現がリアルで怖かった。そして、みんな言いたいことを内に秘めて生きているのに、それを洗いざらいぶちまけてしまったら…というくだりは、大人の青春映画という感じもしました。『あの花』11話のAパートみたいな。

題材としてOp.131という1曲を選んだのはいいですね。私はベートーヴェンにはまったく親しんでいなくて、この曲も全然知らなかったのだけど、作品を観ればちゃんと意味があることが分かりました。冒頭のフーガからして印象的で、誰が主役ということではなく、全部のパートが主役であることが分かる。つまり、エゴを殺してチームワークを追求する意味とは、という本作の主題をいきなり提示してくるのです。

もうひとつ印象的だったのは、「やめる(=止める、辞める)」ということの難しさ。作中で再三挿入される、四重奏団へのインタビュー映像(もちろん架空の番組だけれども)の中で、血気盛んな20代の音楽家が結成したグループの初心が、彼らの口を通して語られる。始めるのは簡単でも、これだけ続いた関係を終わらせるというのは決してスマートにはいかない。その対比が皮肉というか、現実味をもって感じられました。

バッハの曲も少しだけ出てきた。チェリストのピーターが若き日にパブロ・カザルスに会ったときの話として登場するエピソードは、英語版のWikipediaによると実際にあった話なのだそう。そのくだりで、無伴奏の4番のプレリュードとアルマンドの一節が。

約100分にほどよくまとまっていて、終わりかたもちょっと渋い感じで、ものすごく泣けるとか感動するとかそういう類の作品ではないけれど、音楽はいいなあと思える作品です。

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