2013年のテクノ(トラック編)
アルバム編に続いて、バラで買ったトラックのなかで良かった作品についてひとことレビューを書いておきます。普通に界隈で流行った曲も入っているし、そうでないものも。昔は、レコード買うたびに何かしらコメントつけてブログに書いてたんだけど、書くと忘れないんですよね。ちょっと当時の感じを思い出しながらやってみます。
ちなみに、テクノに関しては私は好みがハッキリしているので、内容的にはかなり偏ったものになっているはずです。重くて硬くて、音が詰まっている感じで、縦ノリの4つ打ちものがほとんどかな。125~130bpmくらいで。あと、分かりやすいシンセのウワモノにも弱いです。
- Truncate /Modify [Truncate]
- これはよくかけた。ラフな質感と単調なボイスサンプルがいいんですよ。このくらいシンプルでしかも特徴的だと、DJでも使いやすいというか、ここぞというときにすぐ引っぱり出せる。Truncate作品はBandcampで買うことにしています。最近はここまで激しいのはなくて、ディープめの曲が多いですね。
- Annulled User /Ending #02 [Annulled User]
- Beatportでは出ていなくてBandcampから。謎の覆面レーベルの1枚目で、今のところこの1枚だけみたい。どこで知ったんだったかな?3曲とも良いんだけど、そのなかで一番ハードなのがこの2曲目で、よく使いました。この重くて前のめりなグルーヴ、深いリバーブの聴いたシンセのシーケンス。ガシガシ踊ろう。で結局誰なのか。
- Pepe Arcade /MRZ [Natch LTD]
- たぶん初めて買うアーティストなんだけど、すごく90年代のジャーマンテクノな感じが。音質はあんま良くなくて、ワンフレーズの抜き差しの勢いだけで押し切るという。昔だったら140bpm超えてるよねこれ。ブレイクのクラッシュシンバルの恥ずかしげないノリとか、荒削りながら聴いててすごく楽しい。
- Thinkfreak /Painkiller (Miriam Macri Remix) [Benthic]
- 浮遊感!Conrad Van Ortonがリミックスを手掛けていて知った、イタリアの女性アーティストMiriam Macri。CVO系の深みのある重いトラックで、いい。こういう主張しすぎないミニマルなハマり系のパッドのフレーズ好きです。
- Brendon Moeller /Far Out (Mike Parker Remix) [Electric Deluxe]
- 改めてMike Parkerすごいなと。キックの上に、16分で細かく揺れるドープな呪術系シンセが延々と繰り返されるだけで、裏を刻むハットも目立ったパーカッションもなし。マイクパーカーワールド。もうなんか、ずっと聴きたい。
- Benjamin Damage /010x [50 Weapons]
- 50 Weapons、実験的なのに混じってこういうキャッチーなダンストラックも混ぜてくるから油断できない。ブレイクの上げすぎない抑制的な感じも、空気感をよく分かっているというか。試聴してすぐ買った。後に出たTruncateのリミックスも良い出来で、そっちも買いました。
- Mutate /Circle 2 (Machined) [Blank Code]
- これといった特徴があるわけではないけど、グルーヴキープ系で使いやすくて、無意識についつい選んでしまう。特に今年の前半は何度もかけた。このレーベルはBandcampでも展開しているデトロイトの新興レーベルで、1番から安定して良いので注目しています。
- Antigone /The Melody [Children Of Tomorrow]
- ハードウェアくさい生々しさ。多層的に展開する尖ったシンセのサウンドがなんだか昔っぽくて、こういうテクノが増えてきてほんと今楽しい。このEPは他のも全部良かった。Jonas Kopp的なプリミティブな良さが。Antigoneはよく知らないけどフランスのアーティストのようです。
- SHXCXCHCXSH /ZZNNZNZNNZN [Avian]
- アルバム編でも触れた通り、今年はSHXCXCHCXSHが良かった。タイトルのワケの分からない迫力もさることながら、轟音ノイズの向こうで淡々と刻むキックが渋くてかっこいい。Avianはフロアにもリスニングにも寄らない絶妙なバランス感覚を保っていて、いま信頼しているレーベルのひとつです。
- Headless Horseman /Hessian [Headless Horseman]
- ジャケも名前も不気味な覆面プロジェクトHeadless Horsemanの1番より。これは重い!こういったコンセプチュアルなフロア向け作品は、わりとアナログオンリーとかでリリースされがちな昨今、ちゃんとデータも出ていてありがたい。現在のところ3番まで出ていて、また3番の"Northfield Lane"が、シンセパッドの美しいソリッドな作品で超良かった。
- Takaaki Itoh /Slicer [Wols]
- Wolsの5番から、特に硬くて攻撃的なトラック。職人によって極限まで研ぎ澄まされた刀のようなカッコよさ。ブレないですね。
- Ben Sims feat. Tyree Cooper /I Feel It Deep (Sandwell District Remix) [Drumcode]
- 11年のアルバムからすこし間を置いてリリースされたリミックス集。Sandwell Districtによるリミックスは、最高の食材を腕利きのシェフが料理するとどうなるかという好例で、一見シンプルで地味だけど機能的。ModuleでRodhadがかけていて、この曲の威力を思い知った。
- Pfirter /The Fall of the Empire is Imminent (Developer Remix) [MindTrip]
- 覚醒的でミニマルなリフがジワジワと上げるトラック。ずうっと聴いているとたぶん意識が混濁してきて、時間の感覚がよく分からなくなってくる系の。
- Jonas Kopp /Mountak [Sleaze]
- Jonas Koppは安定して良くて、気に入ったものは端から買っていった。Brian Sanhajiのリミックス盤も超良かったし。これはパッドがふわふわしながらも、往年のハードミニマルを連想させる派手めのトラック。ひたすら縦ノリで引っ張って、ライドシンバル炸裂。
- Zadig /TTRXL [Deeply Rooted House]
- この曲はgommaさんが推してて知りました。これもまた往時のテクノを思わせる疾走系のパワートラックです。もうこの、リズムマシンとシンセの16分シーケンスだけで作るテクノの様式美というか。
- The Advent & Jason Fernandes /Get Up (Industrialyzer Remix) [H-Productions]
- このド派手なブレイクはアガる。H-Productionsは去年やっていたオンラインストアも畳んでしまって、今年は特筆すべき作品がなかったのが残念だな。リリースはそれなりにあったのだけど、個人的には引っかかるものがなかった。カリレケがんばって。
- Single Cell /Wavechasing Tool (Andrei Morant Remix Tool) [Scope]
- かつてJack Mackrel名義などでも大ファンだったAndrei Morantの、近年の積極的な活動を知れたのが今年の大きな収穫だった。しかもまったくスタイルを変えていなくて硬派。これなんか、bpmこそ遅いものの、今こんなの出していいのというくらい典型的なハードミニマルだ。他にもガンガン出しているし、Facebookページも面白いので要チェックです。
- Barker & Baumecker /Crows (Blawan Remix) [Ostgut Ton]
- この前の来日公演に行けなかったのが未だに悔やまれるBlawan。だだっ広い工場の中のような鳴りにウットリしていると、発狂しそうな金切りノイズシンセ音にやられる。犬ジャケのテクノは名作が多いという説を、またひとつ裏付けるかたちになりましたね。
- Dj Surgeles /28.000 Light Years (Jeroen Search Remix) [Nasty Temper]
- またハマり系のハードミニマル。DVS1がUnitでプレイしていて、ぶっ壊れたように踊った。Jeroen Searchもほんとツボな曲が多くて今年よく買いました。これ以外だとFigure SPCのPが特に印象深い。
- Recondite /Cleric [Dystopian]
- 今年、1曲だけ選ぶとしたらこれかなあ。別段凝ったことをしているわけではなくて、シンプルなのに、一度聴いたら忘れられないほどの破壊力。先日のWomb Adventureのライブでもプレイしていたらしくて、それだけは聴きたかった。Dystopianは待望のデジタルリリースが始まったこと自体がニュースだったし、特にこの曲はあちこちで聞いた。
- Vedomir /Musical Suprematism (Marcel Dettmann Remix) [Dekmantel]
- これもなんだかいろんなDJがかけていましたね。このベースラインの異様な存在感はなんなのか、フロアで聴くとまた全く違った聴こえかたをするのがおもしろい。Marcel Dettmannは今年アルバムも出していたけど、個人的にはアルバム買いをするまでには至らず、こっちのリミックス曲の印象が強かったです。
- Jonas Kopp /M31 [PoleGroup]
- 最近出たPoleGroupの未発表曲を集めたコンピより、またもJonas Kopp。この脳に来るシンセはやばい。はやく真っ暗なフロアで大きい音で聴きたい。
総評として、いま本当にテクノの新譜楽しいです。ここ10年で間違いなく一番楽しい。上に挙げたものはすこし極端かもしれないけれど、ジャンルの細分化やいろんなムーブメントを経て、狭い枠に捉われない無印の「テクノ」の普遍的な良さが、再認識されつつあるような気がしています。
アルバム編は下記です。
2013年のテクノ(アルバム編) | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1219_6-techno-albums-of-2013.html