『重装少女~Einleitung~』に参加しました
真っ只中の冬コミ情報。LINEARのアツシオハラくんの主宰する「重装少女開発機構」の作品『重装少女~Einleitung~』に、書き下ろしトラックを2曲提供しています。本作は、メカ+少女+重装備+電子音楽をテーマにした、イラスト本とCDによるハイブリッド作品とのことで、今回が一作めのようです。まずは公式サイトで。
重装少女開発機構
http://hwgs-pr.tumblr.com/
参加は3日目(あした)、ブースは西地区 く-40a「重装少女開発機構」とのことです。
秋ぐらいに打診をいただいて、送られてきたイラストを元にElectribeを中心とするハードウェア機材で曲を起こしました。ビジュアルが先にあるというパターンはすごく久しぶりだったので、楽しかった。
キャラは、はっちゃけた感じでチェーンソー?を振り回す金髪の女の子だったので、"Dressed To Kill"という、ダブルミーニングっぽいタイトルにしました。ここ数年BIなどで取り組んでいるような、ラフな質感の130bpmのテクノです。ミ゛ョンミ゛ョン言っているのはvolca keysで、大きい音で聴くとだいぶエグい鳴りかたをします。ボーナストラックで、パートをいくつか差し替えたテイクも収録してもらっていて、こちらも純粋なDJツールです。
LINEARさんへは、過去も3曲くらい(うちひとつはリミックス)提供しているんですが、昔のゴリゴリのハードテクノから随分スタイルが変わってしまっても、また誘っていただけるというのは光栄でもあり、なんだかいいのかなって感じもあり。アツシくんのトラックが相変わらず重くてハードでカッコイイので、作品に馴染めているか正直不安です。
が、今回の曲は、自分がテクノのDJで使うトラックとしてはそこそこの自信作で、かつ今後ほかで一切再発表はしない予定なので、明日コミケに行かれるかたはぜひとも手にしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
茶箱の年越しパーティーに参加します
茶箱年越しカウントダウン・パーティー2014 | 音楽喫茶 茶箱 sabaco music&cafe
http://sabaco.jp/e/2791/
今年ラストのお知らせです。いつもお世話になっている早稲田の茶箱(さばこ)で行われる、年越しカウントダウンパーティーにDJで出演させていただくことになりました。正真正銘、2013年のテクノ納めとなる23:15からの45分セット。実は、今年は新年初アクトもライブで行っているので(あけましておめでとうございます | EPX studio blog)、光栄なことに2013年茶箱の最初と最後の音楽係を担当することになるのですね。
茶箱さんも、10周年イヤーとなる年を無事に完走されて、来年は11年め。私が初めて行ったのが、2004年のSpiel!というパーティーだったので、オーナーのエージさんと出会ってからもじき10年になります。見渡してみると、10年続いている箱というのもそうそうなくて、ましてあの空間とサウンドシステムだし。この場を借りて、改めて10周年おめでとうございますと言いたいです。
takaukeくんや加賀くんとも久しぶりの共演で、楽しみ。この日は、今年ハマったテクノでガッツリ踊れる感じにしますので、テクノ納め・テクノ初めはぜひ茶箱で。また、カウントダウン係を仰せつかったので、さっそく編集作業に取り掛かったところです。今年、カウントダウンといったらこれでしょう、というネタで。
近所の穴八幡で初詣もできますので、この機会にどうぞ遊びに来てください。せっかくなら大晦日はわいわいやりましょう。よろしくです。
Frederic Robinsonの『Mixed Signals』
先日YouTubeで、London ElektricityことTony Colmanがだらだらお喋りしながら今年良かった曲を紹介するポッドキャスト(Hospital Podcast 217 - The Xmas Cast 2013 - LIVE - YouTube)を観ていたら、一発で好きになってしまう曲に出会った。動画だと17分過ぎからで、ノリノリで踊りまくるトニーおじさんもかわいらしいんだけど、なんだろうこの曲はっていう。ドラムンベースには間違いない。だけども、DJでプレイしたいような感じじゃなくて、純粋にもっと聴きたいと思える。
トラックリストから辿ると、これはFrederic Robinsonという若手アーティストによる"Theme Park"という曲でした。で、これを収録したデビューアルバム"Mixed Signals"が今年の10月にリリースされているのを知り、どうしてもCDで通して聴きたくなったので、ディスクユニオンの通販で。2、3日のうちにメール便で届きました。Beatportでも視聴できます。
Mixed Signals [Blu Mar Ten Music] :: Beatport
http://www.beatport.com/release/mixed-signals/1165366
いやあ、これは。アコースティックな音をサンプル的に散りばめつつ、ビートは骨のあるドラムンベースで、ジャズのようにフリーフォームな。真っ先に連想したのがAphex Twinの"Girl/Boy Song"で、けどもっと器用で視野が広いというか、音響的というよりも音楽的に響く。しかも曲のそれぞれは幻想的なビジョンの端切れのような、短いスケッチのようでいて、まるでなにかのサウンドトラックかと思えるほど。
4曲めの"Shut"なんかは、特に自然の音と極端な電子音の対比が鮮やかで、ビジュアル的には思わずインディーゲームの"Proteus"の世界が脳裏をよぎりました。また7曲目の"Bloom"では、今年Exitから出た"Matchsticks EP"で、大胆なフットワークのドラムンベース的アプローチで度胆を抜いたStrayとコラボしています。
これを聴いて、さぞPCで緻密にプログラミングしているんだろうなと思っていたら…実は、想像していたのとまったく逆の作りかたをしていてぶっ飛んだ。本人がベッドルームスタジオで録った動画がいくつか上がっていて、それがこういうの。
ひとりで即興のようにジャムしながら音を足していき、みるみるうちに曲になっていく。MIDIコン、電子パーカッション、電子ヴァイオリン、カリンバ、それにカリンバの裏に付けたマイクで声を重ねているみたい。頭で作っているんじゃなく、体から湧き上がるように音楽が出てくる完全なパフォーマーで、こりゃ天才だと。これで21歳というのだから、ニュータイプですね。
はじめに挙げた"Theme Park"という曲はPVもあるようです。これは音に映像を合わせる形でライブ映像を再構成しているのだと思いますが、かなり器用に、突飛なことをやっているのは分かります。Wiiリモコンも使ってるし。このパフォーマンスで、この音楽が出てくるというのがすごいところ。一気にファンになりました。
作家の狂気『Indie Game: The Movie』
前から気になっていた映画『Indie Game: The Movie』を観たので、感想ちょこちょこと。アメリカとカナダにおける、インディーズ(ここでは日本の慣例的に複数形で)のビデオゲーム開発の現場を捉えたドキュメンタリーで、2012年の作品。
国内では現時点ではソフト化されていなくて、ダウンロード版として、日本語を含む多言語字幕付きのものを購入できます。題材が題材だけに、Steam経由で買うことができるのがおもしろいところで、たまたま年末セール中で4.99ドルだったこともあって。
いや、これは良かったです。感激しました。ゲーム開発のみならず、あらゆる創作活動に通じる作家の狂気がありのままに描かれていて、恐ろしくも感動的でした。
本作では、『Super Meat Boy』、『Blaid』、それに『FEZ』という3つのインディーズゲームタイトルと、それぞれの作品の開発に携わった作家を取り上げています。といっても、開発の過程を追った、いわゆるゲームの作りかたを説明するような内容ではまったくなくて、映像のほとんどは開発者へのインタビューのみで構成されている。それは、まさに開発途中であったり、トラブルにぶつかる瞬間であったり、リリース当日であったりという色々な場面なのだけれども、基本的にはその時その時の悩みや思いというものを、開発者自身が吐露する。
冒頭ではまず前提として、海外においてインディーズゲームが今、どういう位置づけにあるかが紹介されます。大企業が膨大な予算を費やして制作する、いわゆる大作ゲームに相対するものとして、少人数・低予算で開発される作家性の強い作品が、インディーズゲーム。ここ数年で流通システムが激変して、Steamというダウンロード販売が可能なゲームプラットフォームができ、それを追いかけるようにXBOX、PS、Wiiといったコンソールも同様のサービスを始めたことで、アマチュア作家にも門戸が開かれるようになった形ですね。
本作で取り上げられる3作品の開発者は、いずれも一筋縄ではいかない人物ばかり。幼少のころからグロテスクなモンスターの絵ばかり描いて教師に精神科の受診を進められたり、あるいは、初めてのコンピュータで作った作品が、高速で点滅するCGを間近で凝視するだけというヤバイものだったり。基本的に、まわりの人間とふつうのコミュニケーションができない人たちなのです。
そして、彼らがなぜゲームを作らなければならないか、ゲームを作る以外には何もない人間か、ゲームを完成しなければ死んでしまうかが、淡々と語られる。それは、単に経済的な事情というよりは(もちろんそれも大きいのだけど)、もっと生に対して逼迫した、芸術家、表現者としての焦燥のように思われるものでした。
1人2人だけで、数年間にわたってひとつのゲームの開発に携わるというのは、ほとんど世捨て人のような生活にならざるを得ない。同居している妻ですら、コンピュータに向かう背中しか見れないような。しかも、本人は作品に近づきすぎて、自分自身でもそのゲームが面白いのか面白くないのか、価値ある作品かどうかが麻痺して分からなくなる。
自信を持ちたい、評価されたい、けれどもささいな批判で心が折れてしまうナイーブなところも正直に描かれていて、リアルでした。
とりわけ、『FEZ』を開発したPhil Fishは相当にひねくれている。彼は2012年のGDCで「今の日本のゲームはクソ」と発言したことで騒がれた人物でもあるのですが、本作を観ればこれは別に差別的な意見でも何でもなくて、彼は実はアメリカの大作ゲームも等しくクソ扱いしていることが分かる。物事をうまく進めることができず、仲違いしたかつての共同経営者と権利でモメて、作中で「殺してやる」とまで言っている。まるでロックスターの自伝のエピソードを見ているよう。
「日本のゲームは最低」 波紋を広げたゲーム開発者の発言 :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO39919920X20C12A3000000/
しかし、そうした血気盛んな振る舞いが、実は尋常ならざる『FEZ』への執着、狂気と言ってもいいほどのゲームへ愛に基づく、筋の通ったものであることが分かるのです。実際に『FEZ』をプレイすれば、彼自身として世に出たこのゲームがいかに「心優しい」「愛に溢れた」作品であるかが、実感として理解できました。
そもそも、作家やアーティストに対して人間的に品行方正であることを求めるほうがおかしいのであってですね。私自身は、この発言の意図を汲んだうえでPhil Fishに大いに賛成です。言いかたは侮辱的に映るかもしれないけど、続くゼルダについての言及を聞くともっとよく分かる。
Phil Fish「日本のゲームはクソだ」 - ニコニコ動画:GINZA
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21461477
それはともかく、今年になってにわかにインディーズゲームに興味が出てきた自分にとってはかっこうの題材で、映画としてもきちんとドラマがあって見応えがありました。自分も絵を描いたり曲を作ったりするけれども、ひとつの作品にかける時間はせいぜい数週間で、(魂を込めて作ってはいるものの)生死がかかったりしているわけでもないので、ちょっと、数年にわたり一対一で作品に向き合うという孤独、失敗すればすべてを失うという恐怖は、想像を絶するものがあります。これが狂気でなくて何なのかと。
こちらのレビュー記事にも共感しました。
インディーゲーム開発に携わるということと、我々が払うべき敬意。『Indie Game: The Movie』感想 | NYDGamer
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/10/indie-game-movie.html
2013年のテクノ(トラック編)
アルバム編に続いて、バラで買ったトラックのなかで良かった作品についてひとことレビューを書いておきます。普通に界隈で流行った曲も入っているし、そうでないものも。昔は、レコード買うたびに何かしらコメントつけてブログに書いてたんだけど、書くと忘れないんですよね。ちょっと当時の感じを思い出しながらやってみます。
ちなみに、テクノに関しては私は好みがハッキリしているので、内容的にはかなり偏ったものになっているはずです。重くて硬くて、音が詰まっている感じで、縦ノリの4つ打ちものがほとんどかな。125~130bpmくらいで。あと、分かりやすいシンセのウワモノにも弱いです。
- Truncate /Modify [Truncate]
- これはよくかけた。ラフな質感と単調なボイスサンプルがいいんですよ。このくらいシンプルでしかも特徴的だと、DJでも使いやすいというか、ここぞというときにすぐ引っぱり出せる。Truncate作品はBandcampで買うことにしています。最近はここまで激しいのはなくて、ディープめの曲が多いですね。
- Annulled User /Ending #02 [Annulled User]
- Beatportでは出ていなくてBandcampから。謎の覆面レーベルの1枚目で、今のところこの1枚だけみたい。どこで知ったんだったかな?3曲とも良いんだけど、そのなかで一番ハードなのがこの2曲目で、よく使いました。この重くて前のめりなグルーヴ、深いリバーブの聴いたシンセのシーケンス。ガシガシ踊ろう。で結局誰なのか。
- Pepe Arcade /MRZ [Natch LTD]
- たぶん初めて買うアーティストなんだけど、すごく90年代のジャーマンテクノな感じが。音質はあんま良くなくて、ワンフレーズの抜き差しの勢いだけで押し切るという。昔だったら140bpm超えてるよねこれ。ブレイクのクラッシュシンバルの恥ずかしげないノリとか、荒削りながら聴いててすごく楽しい。
- Thinkfreak /Painkiller (Miriam Macri Remix) [Benthic]
- 浮遊感!Conrad Van Ortonがリミックスを手掛けていて知った、イタリアの女性アーティストMiriam Macri。CVO系の深みのある重いトラックで、いい。こういう主張しすぎないミニマルなハマり系のパッドのフレーズ好きです。
- Brendon Moeller /Far Out (Mike Parker Remix) [Electric Deluxe]
- 改めてMike Parkerすごいなと。キックの上に、16分で細かく揺れるドープな呪術系シンセが延々と繰り返されるだけで、裏を刻むハットも目立ったパーカッションもなし。マイクパーカーワールド。もうなんか、ずっと聴きたい。
- Benjamin Damage /010x [50 Weapons]
- 50 Weapons、実験的なのに混じってこういうキャッチーなダンストラックも混ぜてくるから油断できない。ブレイクの上げすぎない抑制的な感じも、空気感をよく分かっているというか。試聴してすぐ買った。後に出たTruncateのリミックスも良い出来で、そっちも買いました。
- Mutate /Circle 2 (Machined) [Blank Code]
- これといった特徴があるわけではないけど、グルーヴキープ系で使いやすくて、無意識についつい選んでしまう。特に今年の前半は何度もかけた。このレーベルはBandcampでも展開しているデトロイトの新興レーベルで、1番から安定して良いので注目しています。
- Antigone /The Melody [Children Of Tomorrow]
- ハードウェアくさい生々しさ。多層的に展開する尖ったシンセのサウンドがなんだか昔っぽくて、こういうテクノが増えてきてほんと今楽しい。このEPは他のも全部良かった。Jonas Kopp的なプリミティブな良さが。Antigoneはよく知らないけどフランスのアーティストのようです。
- SHXCXCHCXSH /ZZNNZNZNNZN [Avian]
- アルバム編でも触れた通り、今年はSHXCXCHCXSHが良かった。タイトルのワケの分からない迫力もさることながら、轟音ノイズの向こうで淡々と刻むキックが渋くてかっこいい。Avianはフロアにもリスニングにも寄らない絶妙なバランス感覚を保っていて、いま信頼しているレーベルのひとつです。
- Headless Horseman /Hessian [Headless Horseman]
- ジャケも名前も不気味な覆面プロジェクトHeadless Horsemanの1番より。これは重い!こういったコンセプチュアルなフロア向け作品は、わりとアナログオンリーとかでリリースされがちな昨今、ちゃんとデータも出ていてありがたい。現在のところ3番まで出ていて、また3番の"Northfield Lane"が、シンセパッドの美しいソリッドな作品で超良かった。
- Takaaki Itoh /Slicer [Wols]
- Wolsの5番から、特に硬くて攻撃的なトラック。職人によって極限まで研ぎ澄まされた刀のようなカッコよさ。ブレないですね。
- Ben Sims feat. Tyree Cooper /I Feel It Deep (Sandwell District Remix) [Drumcode]
- 11年のアルバムからすこし間を置いてリリースされたリミックス集。Sandwell Districtによるリミックスは、最高の食材を腕利きのシェフが料理するとどうなるかという好例で、一見シンプルで地味だけど機能的。ModuleでRodhadがかけていて、この曲の威力を思い知った。
- Pfirter /The Fall of the Empire is Imminent (Developer Remix) [MindTrip]
- 覚醒的でミニマルなリフがジワジワと上げるトラック。ずうっと聴いているとたぶん意識が混濁してきて、時間の感覚がよく分からなくなってくる系の。
- Jonas Kopp /Mountak [Sleaze]
- Jonas Koppは安定して良くて、気に入ったものは端から買っていった。Brian Sanhajiのリミックス盤も超良かったし。これはパッドがふわふわしながらも、往年のハードミニマルを連想させる派手めのトラック。ひたすら縦ノリで引っ張って、ライドシンバル炸裂。
- Zadig /TTRXL [Deeply Rooted House]
- この曲はgommaさんが推してて知りました。これもまた往時のテクノを思わせる疾走系のパワートラックです。もうこの、リズムマシンとシンセの16分シーケンスだけで作るテクノの様式美というか。
- The Advent & Jason Fernandes /Get Up (Industrialyzer Remix) [H-Productions]
- このド派手なブレイクはアガる。H-Productionsは去年やっていたオンラインストアも畳んでしまって、今年は特筆すべき作品がなかったのが残念だな。リリースはそれなりにあったのだけど、個人的には引っかかるものがなかった。カリレケがんばって。
- Single Cell /Wavechasing Tool (Andrei Morant Remix Tool) [Scope]
- かつてJack Mackrel名義などでも大ファンだったAndrei Morantの、近年の積極的な活動を知れたのが今年の大きな収穫だった。しかもまったくスタイルを変えていなくて硬派。これなんか、bpmこそ遅いものの、今こんなの出していいのというくらい典型的なハードミニマルだ。他にもガンガン出しているし、Facebookページも面白いので要チェックです。
- Barker & Baumecker /Crows (Blawan Remix) [Ostgut Ton]
- この前の来日公演に行けなかったのが未だに悔やまれるBlawan。だだっ広い工場の中のような鳴りにウットリしていると、発狂しそうな金切りノイズシンセ音にやられる。犬ジャケのテクノは名作が多いという説を、またひとつ裏付けるかたちになりましたね。
- Dj Surgeles /28.000 Light Years (Jeroen Search Remix) [Nasty Temper]
- またハマり系のハードミニマル。DVS1がUnitでプレイしていて、ぶっ壊れたように踊った。Jeroen Searchもほんとツボな曲が多くて今年よく買いました。これ以外だとFigure SPCのPが特に印象深い。
- Recondite /Cleric [Dystopian]
- 今年、1曲だけ選ぶとしたらこれかなあ。別段凝ったことをしているわけではなくて、シンプルなのに、一度聴いたら忘れられないほどの破壊力。先日のWomb Adventureのライブでもプレイしていたらしくて、それだけは聴きたかった。Dystopianは待望のデジタルリリースが始まったこと自体がニュースだったし、特にこの曲はあちこちで聞いた。
- Vedomir /Musical Suprematism (Marcel Dettmann Remix) [Dekmantel]
- これもなんだかいろんなDJがかけていましたね。このベースラインの異様な存在感はなんなのか、フロアで聴くとまた全く違った聴こえかたをするのがおもしろい。Marcel Dettmannは今年アルバムも出していたけど、個人的にはアルバム買いをするまでには至らず、こっちのリミックス曲の印象が強かったです。
- Jonas Kopp /M31 [PoleGroup]
- 最近出たPoleGroupの未発表曲を集めたコンピより、またもJonas Kopp。この脳に来るシンセはやばい。はやく真っ暗なフロアで大きい音で聴きたい。
総評として、いま本当にテクノの新譜楽しいです。ここ10年で間違いなく一番楽しい。上に挙げたものはすこし極端かもしれないけれど、ジャンルの細分化やいろんなムーブメントを経て、狭い枠に捉われない無印の「テクノ」の普遍的な良さが、再認識されつつあるような気がしています。
アルバム編は下記です。
2013年のテクノ(アルバム編) | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1219_6-techno-albums-of-2013.html
2013年のテクノ(アルバム編)
テクノに関して、私は普段あまりアルバムという形態で音楽を買うほうではなくて、どちらかというとDJツールと割り切っているので、本当に使いそうな曲だけをピンポイントで買うことが多い。レコードを買っていた頃から、使う曲は使うけれども、そうでない溝に針を落とすってことは稀で、その分の質量がもったいないなと感じていました。単曲で買うことができるのは、デジタルデータの大きなメリットだと思います(まあ、なかにはB2に入っているからこそ良いみたいなトラックもあって、そういう文化は今でもすごく好きだけれど)。
そんな今、敢えてアルバムごと買いたいと思う作品というのは、単に捨て曲がないだとか、アーティストのファンだからとかいうことの他に、作品全体を通してのコンセプトとクオリティが一貫していて、全体通して聴くからこその価値があると思われるもの、だったりします。少ないけれど今年もいくつかそういった作品を買ったので、良かったものについてつらつらと感想を書きます。
各表題はアーティスト名 /作品名 [レーベル名]。リンクはBeatportのアルバムページへ飛びます。
Function /Incubation [Ostgut Ton]
FunctionことDave Sumnerのファーストソロアルバム。アルバム出してなかったっけ、と、そう言われると出してない。Portion ReformもSandwell Districtも共同プロジェクトだったしね。試聴したときに、よくデザインされた音という印象を受けたので、これは通して聴きたいとアルバム買い。結果的には、DJでちょいちょい使う曲と、聴くだけの曲がはっきり分かれた。リキッドでのアルバムリリースツアーにも行ったけれど、アルバムの世界観とDJの内容が乖離していたのでそれはガッカリだったかな。
Mike Parker /Lustrations [Prologue]
リリース予告を聴いたときから楽しみにしていた。12年ぶりのアルバムは、自身のGeophoneレーベルからではなく、Prologueからというのも。全曲Mike Parker節を貫いていて、どこを使ってもおいしい金太郎飴的な。気持ちのいいアナログシンセのシーケンスがポリリズミックに淡々と展開する、これはもうほんと、この完成されたスタイルの先には何もないんじゃないかという気がします。コンセプチュアルなアルバム作品というよりも、純粋に使えるツールだけを集めた武器庫のような。かっこよくて痺れます。
SHXCXCHCXSH /STRGTHS [Avian]
昨年、突如現れた謎のスウェーデン2人組。はじめはその特異なユニット名と曲名に気を惹かれるんだけど、ちゃんと聴くと、インダストリアル的な荒さとテクノのグルーヴが同居していてレベルが高い。特にこのアルバムは素晴らしくて、移動中などによく聴きました。
まったく予期しないところから、聴いたことのないシンセ音が飛んできたかと思えば、獣が吠えるようなノイズが脳にじわじわと入り込んでくる。それでいてビートは素直で、どの曲もまぎれもなくフロア映えするテクノ。個人的には今年のベストアルバムに推したいです。
Drumcell /Sleep Complex [CLR]
Truncate名義でブレイクしたAudio Injectionに続いて、DrumcellのファーストがCLRから。アルバムで買うつもりはなかったのに、試聴してことごとく良かったのと、ハードウェア中心の制作スタイルに強く共感したので。実用性を備えた、いま最もハイファイで洗練されたテクノトラック集のひとつだと思います。というかこれをアルバムで聴かせられたら、どの曲を買うか選べないよね。全部買うしかない。
Peter Van Hoesen /Life Performance [Tresor]
意表を突かれました。90年代に僕らが好きだったテクノそのものじゃないか、これは。なんでも、ハードウェア機材オンリーのライブセットに転向して、実際にライブレコーディングしたものをアルバム向けに整形したそうです。身体から湧き起こるグルーヴが、ダイレクトに抜き差しやツマミにフィードバックされているのがよく分かる。新規性があるかと言われたら分からないけど、こういうテクノが普遍的に価値の高いものとして認知されるのは、古いリスナーとしてはとても嬉しい。テクノが聴きたいという欲求に確実に応えてくれるアルバム。
R-9 /Organic EP [Body Inform]
手前味噌ながら、今年作った自分のアルバムを。ハードウェア一発録りによるラフな質感は残しつつ、少しでもいい音に近づくように苦心したので思い入れはあります。今作ったらまた違ったものになったかもしれないけど、この時点でベストなもの、と考えると、写真のアルバムとも近い意味合いはありそうですね。まだまだいろんな人に届いてほしいので、YouTubeに上げたPVを貼っておきます。CDは通販できますので、興味のあるかたはお気軽にメールください。
考えてみると、Mike Parkerのアルバム、DrumcellやPvHの作品など、ひとことで言って2013年はハードウェア機材復権の年ではなかったかと思います。既に「マシーン・テクノ・リヴァイヴァル」や「Mike Parkerとハードウェア・テクノ」といった記事で触れたように、去年からその予兆はあったにせよ、この潮流が確固たるものになったという印象を受けました。KORGのアナログシンセ、volcaの発売も見逃せないポイントですね。
また、冒頭のようにジャケットを比較してみると、荒んだダウナーなビジュアルであると同時に、どこか生々しい、自然や生体をモチーフにしたものが多い。これがハードウェア回帰と重なるものなのかどうか分かりませんが、少なくとも最後の自分の作品に関しては、それを念頭においてデザインしています。
余裕があれば、年内に別の記事でトラック編の2013年レビューを書こうと思います。
12-20追記:トラック編を書きました。
2013年のテクノ(トラック編) | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1220_top-techno-tracks-of-2013.html
『ゼロ・グラビティ』を観た
14日、TOHOシネマズが安い日なので、公開されたばかりの映画『ゼロ・グラビティ』を観てきた。前に映画館で予告を見て、これは面白そうだと思っていたところ、先日出た『パシフィック・リム』DVDのギレルモ・デル・トロによるコメンタリーの最後のほうで、本作と監督のアルフォンソ・キュアロンに言及していて、俄然気になりだす。なんでも、共にメキシコ出身で仲が良いらしく、事実、本作のエンドロールのスペシャルサンクスの筆頭にデル・トロさんの名前がありました。
『ゼロ・グラビティ』(原題"Gravity")は、現代の宇宙を舞台にしたフィクション。スペースシャトルで船外活動中の作業員たちを、スペースデブリ(ロシアが破壊した自国の衛星の破片)が襲う。シャトルは壊滅的な打撃を受け、身ひとつで宇宙空間に放り出された作業員が、無事に帰還する手段はあるのか…というようなお話。
以下、できるだけプロットの本筋に触れるようなネタバレを避けて、断片的に感想を書きますが、今この時点で興味がある人は、読むのをやめて観に行ったほうがいいです。内容よりもまず純粋に視覚から受ける映像体験が100%なので、下手に自分以外の人によって言語化された情報を入れてしまうよりも先に、観たほうが。あと付け加えるなら、3D大画面で観ないと意味ないやつですこれ。情報量が明らかに違う。
でなんか、観終わったあとは本当に疲れてしまって。上映時間は90分程度と長くなく、3D酔いも全くなかったのだけど、フラッフラでした。
本作の面白いところは、出演者としてクレジットされているのはたった2人だけで、つまり全編にわたってほぼこの2人しか出てこない。宇宙空間で「密室劇」。しかも予告の通り、冒頭で宇宙服のみの状態で放り出されて、『ファイナルファンタジーVIII』の宇宙遊泳のシーンで何度もゲームオーバーになった自分からすれば、ここからどうドラマが展開し得るのかという。どう考えても"詰み"でしょう。でも、そこはそれ、ちゃんとドラマがありました。
序盤を観ながら、例の「車が故障した男女のコピペ」をずっと思い出していました。まあ、サンドラ・ブロックのほうが未熟な宇宙飛行士という役回りとはいえ、パニックにおけるありきたりな女性像が、あるあるで表現される。で、それをジョージ・クルーニーがどうするかというと、ダンディーなアメリカンジョークを交えて、やさしーく諭すのです。やっぱこうするのが正解なのかって感じ(けど、分かっててもこうはいかないよねぇ…)。
今年、地上波で放送された『エイリアン』を今更ながら初めて通して観たんだけど、観ておいてよかった。というのは、ところどころ似たような場面があって、明確にオマージュと言えるものはないかもしれないけど、リスペクトが感じられた。ごつい宇宙服と、引き締まった人体の対比とかも。
物理シミュレーションという意味では、ほぼ全編フルCGという本作がどれくらい理に適ったものであるのかというのは、素人には知る由もないけれど、これがこうなったらこうなるよね、っていうのを常に頭のなかで予測しながら。で、そのうえで宇宙空間での物理運動は、想像のさらに上を行く、冷徹で無慈悲な動きをするのです。その怖さは、無重力を体験したことがない自分にとっても十分に実感できました。
あるシーンで登場する胎児のアナロジーは、ちょっと露骨でこじつけっぽいとも感じたけれど、結果的にラストを引き立てる構造になっていて感心しました。要するに、あれを挟んだことによって、単にワーキャーいうパニック映画ではなくて、明確にひとりの主人公の決断と成長の物語になっている。そのあたり上手いなと思いました。
上手いといえば、音楽のつかいかた。徐々に極大に達する「爆音」と突然の「静寂」のコントラストが鮮烈で、この手法が最初から最後まで何度も繰り返される。そりゃあ宇宙空間は無音だけど、そのなかでの生命(=人間)の息遣いやテンションを音で表現するというのは、映像を補佐、補強する役割の映画音楽としては、十分に効果的な手法でした。
偶然、上映中に地震があったのはドキドキした。しかも始まって1時間くらいの、ある意味ヤマ場のシーンで震度2くらいで長く揺れたので、自分が映像にハマりすぎて錯覚しているのかと思ったほど。心臓に悪い。
ところで、原題は「ゼロ」のついていない"Gravity"で、いくつかのレビューを読むと誰もが思っているみたいだけど、原題のほうが本作のテーマを正しく表していてずっといい。つまりですね、「無」重力空間におけるパニックを再現しているだけの作品ではないということが、ちゃんと通して観ていれば分かるはずで、そこは尊重してほしかった。というか邦題とかもう要らないのにね。
個人的には、『パシフィック・リム』のように何度も観に行きたいかというとそうではなくて、最初の1回の体験がものすごく刺激的で、それだけで満足でした。
映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/#/home
「非ゲーム」なゲームたち
PS3の『Flowery』とか『風ノ旅ビト』みたいなゲームが好きで。パラメータもアイテムもなくて、敵キャラも戦闘もない。いかにもゲーム的な謎解きや駆け引きが一切なくて、だけど、確実になにかしらの新鮮な体験を、短い映像と音で伝えてくれるような作品に興味があります。
こういう作品って、バリバリ攻略するようなゲームが好きな人からしたら、ともすれば「雰囲気ゲー」と揶揄されても仕方ないようなところがあって、手放しにはお薦めしにくい。というのは、これらはおそらくゲームプレイのある一般のゲームとは本質的に別のもので、例えるなら絵画とサッカー、落語と野球、くらいの違いがある。たぶん、同じコンテクストで語るべきではないのです。
Steamで、そうした「非ゲーム」的なインディーゲーム作品をいくつか購入したので、通して最後までプレイした作品について、それぞれ覚え書き程度に、簡単に感想をまとめておきます。一人称視点の、FPSスタイルのものが多いですね。
『Proteus』
ロービットでデジタルな風合いで描かれた「野生」を、ひとつの島での何日分かの昼と夜を通じて体験する作品。単純なポリゴンともちょっと異なり、なんだかギザギザした、ブロックのような世界観。文字情報は一切なし、本当にただただ自然を観察しながら、無目的に島を歩き回るだけです。
でも、何度かハッとするような美しい光景に出会うことも。特に良いのがSEで、ちょっとした動物や虫、草木の動きからも生々しい(というと語弊があるけれども、この世界にふさわしい)音が聞こえてくる。場所によっては、ダイナミックに風景が変化して、思わず身構えるようなサイケな体験ができました。
プレイ時間は40分くらい。何度も遊ぶかというと微妙だけど、ラストはそれなりの演出もあって、一風変わった絵の世界に入ったなあ、という感じでした。2013年の作品。
Steam:Proteus
http://store.steampowered.com/app/219680/
『Dear Esther』
この手のゲームについて調べていると、度々言及されている作品のようなので、遊んでみました。2012年の作品ですが、ValveのSource Engineのmodとしては、08年ごろにオリジナルが発表されているようです。上のトレーラーの通り、ものすごくリアルな自然描写という点で、先のProteusとはまったく対照的な作風でありながら、いろいろな共通項がある作品でした。
エスターという謎の人物に宛てた手紙を読み上げるような体裁で、ナレーションが入る。島を探索していくと、いかにも何らかの事件か事故?かの痕跡がいくつも見つかるのだけど、別に謎解きをするというわけでもなく(触ったり拾ったりできるわけでもない)、プレイヤーは純粋に暗示的な風景を目撃していく。
ナレーションは英語のみ、しかも表現が抽象的というか、すごく詩的で、残念ながら初見のプレイではいまひとつ理解できませんでした。おそらくは何かしらの複雑なプロットがあって、単に私の英語力が足りないだけだと思うのだけど。それでも、最後は不思議な感傷に浸れました。
序盤の、キレイだけれど退屈な荒れ地で、淡々と山登りするのがちょっと辛い。そのあとは、おおっというような風景のなかに入って行けたり、探検っぽいこともできます。もし有志かなにかで日本語字幕が出たら、もう一度プレイしてみたいとは思います。
Steam:Dear Esther
http://store.steampowered.com/app/203810/
『The Stanley Parable』
これはですね、端的に言うと、ゲームというフォーマットを使ったコメディー作品でした。すごく面白かった。メタ・ゲームとして考え得る仕掛けを、端から試していくような内容で、例えるなら『Portal』の"The cake is a lie"が延々といろんなパターンで迫ってくるような感じ。あるいは、先鋭的なミステリ小説が、突飛な犯人を提示してくるような。でも、ものすごく笑えるんです、これ。
主人公はスタンリーという人物。彼はある会社で、従業員「ナンバー427」として、毎日毎日、画面に現れたとおりにキーを叩くというだけの仕事をしている。あるとき気がつくと、彼を除いたすべての従業員が忽然と姿を消してしまい、スタンリーはその原因を探るためにまず会議室に向かうが…、という導入。
この、ある意味ありきたりの導入は、実はすべて「フリ」なのです。ここを発端に、ナレーターがあらゆる手で、その…ネタを仕掛けてくる。しかもプレイヤーの行動に応じて、そのネタがリアルタイムに変わっていく。これは、純然たるコメディーだけども、ゲームでしか実現できなかった。そこが非常に知的で、上手い。
興味を持ったかたは、プレイ動画などのネタバレを避けて、まずはSteamでダウンロードできる無料のデモをプレイすることをお勧めします。私はこれ遊んでみて、The Stanley Parableが何なのか全然分からなかったけれども、完全に逆説的に、どういうゲームなのかだいたい分かってしまった。
2013年10月にリリースされたばかりの作品。日本語字幕はないけれど、そんなに難しい英語はないので、デモが楽しめれば本編も大丈夫です。タイトルのparableは寓話、たとえ話という意味。
Steam:The Stanley Parable
http://store.steampowered.com/app/221910/
『9.03m』
2013年9月に発表された本作は、上のどれとも少し毛色の違う、ごく短い作品です。というのも、本作は2011年の東日本大震災の被災者へ捧げられた作品で、売り上げの50%が寄付金になるとのこと。タイトルは、津波の高さかな。
夜の海を舞台として、プレイヤーが蝶を追っていくと、さまざまな物語性が見えてくる。といっても、仕掛けはごくシンプルでゲームプレイとは呼べないようなもので、むしろ、しばしの瞑想のような体験。誰もがこのゲームの最中、被災者について思いを馳せるだろうし、ゲームとしてこういう作品表現もできるのか、と考えさせられました。1.99USドル。
Steam:9.03m
http://store.steampowered.com/app/263100/
1282回のミニマルな再挑戦『VVVVVV』
先週、Steamのホリデーシーズンに合わせたセールで、いくつか気になっていたゲームをまとめて購入しました。ちょっとした時間が空いたときにでも、少しずつ消化できればいいかなという感じで。以前つらつらと書いた通り(「ゲーム」の記事一覧 | EPX studio blog)、相変わらず大作よりもインディーゲームに興味があって、そういうので評価が高くて自分に合いそうなものを選んでます。なにしろ、今までPS3だの3DSだのっていうコンソール系しか眼中になかったもので、未知のタイトルがいっぱいある。良かったものは、ブログに書いていこうと思います。
その中から、アクションゲーム『VVVVVV』をクリア。何年か前にちょっと話題になったゲームらしく、いくつかレビュー記事を読んで面白そうだなと思ったのと、何と言っても下の紹介映像が超刺さった。コモドール64ふうの色数少ない画面のなかを、すっとぼけたキャラがちょこまか動く。ああーこういう感じねっていう、だいたいその通りです。
開発したのはUKのインディーゲーム開発者Terry Cavanagh氏で、最近ではiPhoneアプリの『Super Hexagon』が少し話題になりましたね。サイトを見たら、もうずっと草の根でフリーゲームを作ってきたという人物で、いまもバリバリ作っているっぽい。
VVVVVV(読みかたはヴィーとかなんとか)のルールは単純明快で、操作は左右とボタンひとつのみ。このアクションボタンはジャンプですらなくて、重力を反転して天井方向に落ちていくというだけのもの。この単純な操作系だけを使って、障害物を避けつつ先に進んでいく。VVVVVVってのは、Vがいっぱい、つまるところ、この障害物であるトゲトゲのことを指しているんだと思うんだけど、すごくいいネーミングだ。
というのもこのゲーム、とにかく死ぬ!ちょっと滑ると死ぬし、ボタンを押すのが0コンマ何秒早くても遅くても死ぬ。わー死にそうと思って行くと死ぬし、おっ行けそうと思って行っても死ぬ。いわゆる、死んで覚えるゲーム。冒頭のスクリーンショットの通り、私は初見クリアまでの3時間弱のあいだに1282回死にました。
私はこういったゲームにコンプレックスがあって、世の中の歯ごたえのあるとされるアクションゲーム、たとえばロックマンだとか、クリアできた試しがなかったのです。こんなハンドル/DJネームにしているけど、R-TYPEみたいな硬派なシューティングは苦手だし、全然自信がない。
で、これも多分途中で投げ出すなと思って始めてみたところ…なんと、いけた。ものすごくヘタクソだけど、自分の力だけでできた!そして、すごく楽しかった。
ゲームバランスというのを考えたとき、プレイヤーがクリアできない壁に突き当たった場合にどういうオプションを提示するかという点に、その作品の思想が表れると思うわけです。例えば、3DSの『スーパーマリオ3Dランド』には、所定の回数同じ場所で死ぬと無敵になれるというのがあって、私もこのおかげで最後までお話を楽しめた。だけどこれって、今考えても、ゲーム屋さんとして禁じ手中の禁じ手だったのではないかと思う。
だって、アクションゲームの楽しさって、壁を乗り越えて先に進むこと自体にあるのであって、キャラとかお話は二の次なはず。誰もが同じように学習して、それでも乗り越えられない壁があるのなら、それはレベルデザインがおかしいんですよ。
VVVVVVは、これを、ひとつひとつのチャレンジを極端にミニマル化するという方法で解決していました。つまり、コンティニュー可能なチェックポイントをものすごく細かく設置して、必ずミスの直前から、しかも残機の概念なしで無限にやり直せるようにした。なので、根気が続く限りチャレンジできるし、繰り返していれば"まぐれ"の1回でもクリアできて、そのすぐ先でセーブできる。さらに全体として、プレイヤーに妥当な学習曲線を辿らせるような、良くできたステージ構成になっていました。
それでも、同じ場所で何十回と死んでると、さすがに心が折れる直前までは行く。くじけそうになったとき、やる気にさせてくれるのが音楽で、これが本当にカッコ良かった。昔のゲームさながらの勇ましい8ビットサウンドで、ドラムだけPCMみたいな。Bandcampで、『PPPPPP』というかわいいジャケのアルバムも出ていて、YouTubeにも作曲者本人が全曲アップしている。実質的なテーマ曲の"Positive Force"がしびれる。10曲目の"Potential for Anything"もいい。
外国の作品らしいなと思うのが、各ステージ、というかほとんど全部の部屋に短いタイトルがついていて、そのセンスがいいのです。画面の下部に出ているのだけど、遊んでいて、ここがいつも気になっていた。スタッフを見ると、この部屋の名前を考えるだけの作家がクレジットされていた。
ちゃんとヘタクソな人でもクリアできて、かつ、鬼のようなチャレンジもあるという。笑うのが"Doing Things The Hard Way"という縦長の部屋で、これはTumblrで流れてきたので見てください。
EPX studio.clip - zekter: VVVVVV - Doing Things The Hard Way
http://epxstudio.tumblr.com/post/69068458308/zekter-vvvvvv-doing-things-the-hard-way
左上の入り口から入って、ずーっと下まで落ちて、キャラが立っている位置にごほうびアイテム(Trinket)がある。間にブロックみたいな障害があって、単純なジャンプができないため、ここへ行くためには重力を反転してずーっと上まで「落ちて」行き、頂点でまた反転して落ちてくる必要がある。って簡単に言うけど、これトゲに当たらないように落ちていくの無理でしょ!なんか、戻ってくる途中にワナもあるしさあ。
これはクリアしてもしなくてもいい最難関のチャレンジだけど、全体的にこういうゲームです。この、キャラのふざけた感じと音楽が好きになってしまったら、4.99ドルはものすごく安く感じるかも。私はハマりました、これ。
Steam:VVVVVV
http://store.steampowered.com/app/70300
SBCDNB6、ありがとうございました
おかげさまで、6回目も大盛況のうちに終了しました。来ていただいたみなさま、出演者のみなさまにはただ感謝です。どうもありがとうございました。
私の感想に代えて、TL上や検索で見かけた、遊びに来ていただいた方の感想をいくつか引用させてください。
こういうのを聴きたかったんだよ~このイベント最高か! #sbcdnb
https://twitter.com/mikaru_chan/status/409257524525670400
茶箱の低音血行良くなりそう
https://twitter.com/caramel_au_lait/status/409287446845591552
茶箱もSBCDNBも本当にやっと来れた、って感じ。毎回来たい。
https://twitter.com/Ren07_/status/409295944966893568
途中抜けしましたがお疲れ様でした!茶箱音響に乗せた各出演者皆さんの特色あるドラムンベースが聴けて最高でした!また行きます! #SBCDNB
https://twitter.com/HE4DCH4RGE_yas/status/409301100290789376
SBCDNB良かった!
https://twitter.com/bishamon_bell/status/409321477863780353
SBCDNBが終了して茶箱離脱。最高の音響で浴びるドラムンベースが気持ちよくてグルーヴにいざなわれるまま踊りまくりでした…が、残り15分というところで体力が尽きてヒザにも違和感がw やはりドラムンメインのイベントは肉体的にキツいw でも思いきり踊ってスカッとしたなぁ。サイコー
https://twitter.com/sr_sigma/status/409316648722911232
皆さんお疲れ様でした。とても楽しかったです!ありがとうございました! #sbcdnb
https://twitter.com/H_T_/status/409348696925429760
「SBCDNB」(読みかたはエスビーシーディーエヌビーでもさばこドラムンでも何でも)というイベントは、その名の通り、茶箱さんのサウンドシステムありきのパーティーです。ああいう音をああいう環境で出せないのであれば、そもそも私もドラムンベースでパーティーやろうと思わなかったかも。なので、不定期ではありますが、茶箱さんの力をお借りできる限りは、続けていきたいと思っています。次は、予定では来年の6月かな?
というかですね、誰かほかに茶箱でドラムンのパーティーやってほしいんですよ私は。オーガナイザーとかDJとしてサーブする側じゃなくて、単純に遊びたい!昨日みたいな感じだったら6時間ずっと踊れるね。やーほんとに、お願いします。
自分のパートのプレイリストを起こしてみました。今回もオープンからの60分。ラストのB2Bは短い時間ながらも楽しかったし、またやりたいな。
01. The Statesmen /Never On Sunday
02. mSdoS /Sun Rising
03. Random feat. Aliya Sachi /So Alive (Mage Remix)
04. Nelver /Not Coming Down
05. Break /Enigma (Calibre Remix)
06. DJ Chap /Let Me Love You
07. Sundesire & Nelver /Evening Stars
08. Task Horizon /Far Away
09. London Elektricity /Meteorites (Danny Byrd Remix)
10. Camo & Krooked /Reincarnation
11. Genetic Bros /Uplifting
12. sanodg /Hand Your Hand
13. Netsky feat. Dynamite MC /The Whistle Song
14. Phors /Stay
15. Dub Phizix /Break It
16. Stray feat. Fracture /Bounce That
17. Clarity /Parallels
18. Stray /Akina
19. Limewax /Zombie vs Zombie
20. SPL /Reckoning
21. Dream McLean /Sloe Gin (Dub Phizix Remix)
22. Dub Phizix & Skittles /I'm A Creator
23. Calibre /Even If
B2B:
Netsky /Come Alive
Truston Keepon /Karmi Karma Remix
リキッドに始まり、ちょっと派手めな感じに行ったり、トリッキーなのやミニマルなのに加えてダークステップを経由して、リキッドに戻ってくる感じで。いろいろ詰め込みすぎたけど、これくらいの振れ幅でもオッケーな感じこそがドラムンの楽しさだと思うのです。4つ打ちだとこうはいかない。
ドラムンDJのときはいつも3つくらいの人格がある感じで、ディープで音楽的なものをやりたいってのと、超アッパーでメーター振り切るくらいハイになりたいのと、まったく無感情な変則的で実験的なビートをミックスしたい、という。自分のDJスタイルとしてはひとつに決めきれないところがあって、今回は久しぶりの機会ということもあって全部入りで。ひたすら楽しかった。
明日、SBCDNB6@茶箱です
不定期に続けているドラムンベースオンリーイベント、「SBCDNB」の第6回をやります。前回が去年の9月だったから、1年以上空けてしまったこともあって、今回は盛りだくさんですよ。
以前からお呼びしたかったTruston Keeponさんをライブセットで、また秋葉原MOGRAの「どらむん町内会」より、レジデントのDJ MAHIRUくんとMegsisさん、そして前回からの再登場でFLKADくんとらいおんさん。豪華な布陣で6時間、みっちりドラムンベースやります。といってもスタイルは千差万別、あまりにも色々な種類があって、目移りしているとあっという間に過ぎ去ってしまうかも。
事前にお名前をお伝えいただければゲストディスカウントをさせていただくほか、早割として17時までに入場されたかたは一律で1,500円となります。長丁場ですので、もしご飯とかで一時退出される方がいたらひと声かけてくださいね。私はだいたいキャッシャーにいるつもりです。
こんなパーティー、本当だったらお客さんとして遊びに行ってずっと飲んで踊っていたいんだけど、そこはぐっとこらえて。いい音楽を一緒に、いい音で楽しんでもらえるというのは、それだけで嬉しいし、これからも続けていきたいので応援よろしくお願いします。
SBCDNB6 - 2013.12.7(Sat.)16:00-22:00
http://dnb.epxstudio.com/
そういえば、2013年に買った曲のなかからBeatportでDJチャートなんてのも作りました(R-9 "SBCDNB6" Drum'n'Bass Chart 2013-12 :: R-9 :: Beatport)。リキッドファンクは相変わらず買っていて、そのほかに音数が少ないDub Phizixみたいのをちょいちょい。あと、Strayっていうアーティストがフットワーク的な音使いをドラムンベースに持ち込んでいて、すごく面白いです。明日、チャンスがあったらかけたいな。