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Thomas Was Alone

ゲーム2013-10-15 21:27

Steamで気になっていたインディーゲーム"Thomas Was Alone"をクリア。ビジュアルがいい、音楽がいい、そしてタイトルがいい。「トーマスはひとりぼっちだった」。

UKのゲーム開発者、Mike Bithellによる2012年の作品。海外ではPS3/Vita用も出ていて、今年の8月には累計70万本を突破したという話題作で、前評判通りのよくデザインされたゲームだと思いました。

主人公を含むキャラクターは単なる色つきの四角形、左右移動とジャンプを駆使してゴールへ進むというシンプルな内容。特徴の異なるキャラクターを使い分けるなかで、不思議とこの色つき四角形が、意思を持ったキャラクターに見えてくる。それというのも、情感たっぷりのナレーションが語る通り、彼らはコンピューターのなかに生まれたAIで、彼らの関係性や進んでいく方向が徐々に明かされていくわけです。そして、意外に深いSF的なバックグラウンドが、随所にほのめかすような形で提示される。

ゲーム自体はさほどの難易度でもなく、アクションが苦手な自分でも計100ステージを4時間くらいでクリアできた。レベルデザインそのものが、ナレーションと深く連動している箇所が多くて、むしろストーリーを味わってもらうために意図的に簡単にしたのではないかと思うくらい。なので、9.99ドル(Steam価格)ぶんの物語というか、映像作品を楽しんだという感じがします。

無機質で記号的なものに、叙情的なストーリーや音楽をつけるというのは、特段に新しい試みではないかもしれないけど、これだけ高いレベルでバランスのとれたものってあまりないと思う。『風ノ旅ビト(Journey)』もシンプリシティがテーマになっていたけど、これはもっとミニマルな表現。しかも、単純に見えて実は大きく斜めっていたり、影の表現が美しかったり、あるいは凝ったテクスチャがアニメーションで動いていたりと、細部にセンスの良さを感じました。

また、特筆すべきはDavid Housdenによる音楽で、ドラマが深まる部分ではちゃんと演出された音が添うように流れてきて、ぐっと来ます。それによって、出会いと別れ、友情、自己犠牲などがエモーショナルに表現されている。四角形なのに!
サウンドトラックがBandcampでリリースされています。

David Housden
http://thomaswasalone.bandcamp.com/

以下、いいなと思ったレビュー記事あれこれ。

彼らは皆かけがえのない存在「Thomas was alone」感想・そして「ICO」から思う今のパズルアクションがもたらす物語の考察: GAME・SCOPE・SIZE
http://game-scope-size.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/thomas-was-alon.html
Steam版『Thomas Was Alone』のリリースによせて | NYDGamer
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/11/steamthomas-was-alone.html
4Gamer.net ― インディーズゲームの小部屋:Room#257「Thomas Was Alone」
http://www.4gamer.net/games/040/G004096/20121127076/

難点は、やはり日本語化されていないので早口のイギリス英語を追いかけなくてはならないこと。字幕も、キャラクターに追従するいい感じの演出で出てくるのだけど、すぐに消えてしまうので、表面的にしか追えないのが残念かな。特に、終盤はストーリーが大きく動いて、かつ抽象的な表現が多くなるので、何度かプレイしたりしないと意味が分からなかった。英語版のWikipediaにあらすじが簡潔にまとまっていたので、もしプレイ後に気になっているかたがいれば。

作者のMike Bithell氏は、既に次回作の"VOLUME"の制作に取り組んでいるそうで、こちらはメタルギアライクなステルスアクションゲームとのこと。2014年リリース予定だそうです。

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