火星探査機の着陸
昼間、あるツイートがきっかけで、今日がNASAによる火星探査機「キュリオシティ」の着陸予定日だと知る。その後、仕事の合間に公式のライブストリーミング中継を観ることができて、小一時間ほど興奮を共有しました。
火星探査機といえば、思い出すのが私が高校生のころ、同じNASAのマーズ・パスファインダーの成功が話題になったこと。97年の7月だから、当時まだインターネットを始めたばかりでした。28.8kbpsのモデムを介して、火星のカラー画像がじりじりとCRTに表示されたときは、感激したものです。ベタに、しばらく壁紙にしたりなんかして。インターネットで受けた衝撃は数あれど、あの赤茶けた岩だらけの地面の写真は、「未来」を感じさせるに十分なインパクトでした。
あれから15年、今回の計画については正直まったく知らなくて、去年11月の打ち上げのことも、具体的な着陸計画のことも、今日のミッションの直前に調べました。なので、にわかもいいとこですが、とんでもない高難度の計画だったんですね、これ!
NASA自身が、計画の難しさをドキュメント風に説明したビデオ「恐怖の7分間(Seven Minutes of Terror)」です。
マーズ・パスファインダーのときは、探査機の重量が10kgと軽かったため、パラシュートで減速してエアバッグを開けば、ゴムボールの要領で何度かバウンドして着陸できた。ただ今回は、1トンもの超精密な探査機を、壊れないようにそっと下さなければならない。しかも、地球の100分の1とはるかに大気の薄い星の、岩だらけの地面に。
段取りはこう。途中までは同じようにパラシュートで降下し、高度が下がってきたらロケット噴射で減速、さらに、探査機そのものをUFOキャッチャーよろしく宇宙船から4本のケーブルで吊り、ゆっくりと降下。探査機が地面に触れて2秒後に、即座にケーブルを切断してロケットをフル噴射、探査機だけを残してどこか遠くに落下する、というもの。
ここまでがたったの7分間で、このうち一つでも動作しなかったら、ドミノ倒しのごとく、あとの仕掛けがすべて水の泡になってしまう(探査機は原子力電池により、最低でも2年は活動する想定)。まさしく恐怖の7分間というわけ。
着陸計画そのものを、簡潔に1分で解説したPRビデオというのもあって、こちらのほうが概要が分かりやすいかもしれません。
で、これが今日実際に、ウソのように上手いこと実現していったわけですね。降下中、別に火星から動画がリアルタイムに届くわけではないので、管制室では淡々と状況が読み上げられていくだけですが、ひとつ達成するごとに歓声があがり、最後に火星表面のサムネイル画像を受信したときの盛り上がりには、思わず声を上げてしまいました。なんかもう、ドキドキしたし鳥肌立った。
詳しくは、今回の火星探査ミッションにおける宇宙船「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」の日本語Wikipediaページ、もしくは下記NASAのジェット推進研究所(JPL)のMSLのサイトで。
Mars Science Laboratory
http://mars.jpl.nasa.gov/msl/
探査機ローバー「キュリオシティ」のTwitterアカウントなんてのもあるようです。
また、この名前が勇ましい、取ってつけたようなものでなく、シンプルで率直に"Curiosity(好奇心)"というのがいいですね。科学はいつだって、好奇心に導かれて進歩するもの。NASAのブログの今日の記事のタイトルが、"Curiosity Takes Us Back to Mars"ってのも、いいなぁと。