インカ帝国展
日曜日、上野の国立科学博物館で開催中の「インカ帝国展」に行ってきました。ハイラム・ビンガムがマチュピチュ遺跡を見つけて100年とのことで、ミイラとかマチュピチュとか、日本人受けしそうなキャッチーな要素は押さえつつも、民俗学・人類学的な地味な史料も充実した、なかなか良い企画展でした。
今年ラストの花見チャンスを迎えた上野公園は、前日の悪天候もあってかものすごい人出で、インカ展も数十分待ちの状態。中に入っても、人垣の向こうの小さい土器とか織物を見るために、人が流れるのを待つか順番を工夫するかしないといけなかった。けど、その分3時間くらいかけてゆっくり見ることができたかな。
インカの遺物は、時代が新しいこともあって状態が良く、発色も鮮やかで見応えがありますね。土器に描かれた絵の様式も、極端に幾何学的なものと、動物や神をコミカルに図案化したものが入り混じっていて、親しみやすいです。マヤ文明のようなビジュアル・ショックはなくて、普通に興味をそそる。マヤやアステカ、ナスカは、もっとこう近寄りがたい神聖さというか、威圧的な感じがしたけれど。
実は今回、同行したTOM-BOYSの杉山さんに、事前にこの本を借りていました。
Amazon.co.jp: 天空の帝国インカ (PHP新書): 山本 紀夫: 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4569799043/
新書ながら、内容的には概説というよりはむしろ、農学的・民俗学的な視点からの独自の研究成果をまとめたもので、最終的にはインカの人々特有の精神性にまで踏み込んでいて、とても面白かったです。印象的だったのが「ワカ」信仰。人にしろ植物にしろ、異質なものを排斥せず、あくまで多様性を受容するという考えかたは、とかく均質なものを求める現代においては示唆的です。インカに関してこういう視点があったとは、新しい発見でした。
今回の展示そのものは、順を追った政治史的なものとはちょっと趣が異なるので、ある程度は予習をして行ったほうが、楽しめるかもしれません。もちろん、大スクリーンで3Dのマチュピチュを飛び回るだけでも、それなりに面白いのですが、それは最後のおまけって感じで。
TBS インカ帝国展 マチュピチュ「発見」100年
http://www.tbs.co.jp/inkaten/