Fumiaki Kobayashi - qualia 2
4月30日のM3でリリースされるフミアキさんの新譜「qualia 2」について、gatearray recordingsの公式ブログにレビューを寄稿しました。以下全文です。
武骨でいて優雅、無機質で動物的。
相反する要素が、作家のパーソナリティーを軸として自然に同居する一枚。
オリジナルアルバム"qualia 1"から間を空けずに発表された本作では、前作で定義されたサウンドスケープをそのまま拡張しつつも、これまでの氏の作品になかった新たな表現への挑戦が感じられた。
1曲目、深いリバーブのかかった瞑想するようなダブテクノは、前作との連続性を暗に示している。続く"Galungan in Kuta"は、本人が強く影響を受けたと語っていたバリ島での滞在経験が、直接的にサウンドにフィードバックされている、異色の作品。
昨今のハードグルーヴ回帰を踏まえたアグレッシブなテクノ"Flash Past"や、過去作のハードテクノをブラッシュアップした"Lost (VersionII)"がそれに続く。いずれも実用的なフロア向けトラックとして、10年以上にわたる長いDJキャリアで培われた「身体性」が、如何なく反映されている。
"Altar Track"は、前作収録版では生音に近いピアノとパーカッションで強烈な叙情性を打ち出していたが、ここではそれらが原形を留めないほど溶解して完全に混ざり合ったような、新しいアンビエント・ミックスとして再生。一方で次の"Twilight Wharf"では、オリジナルと同じイメージを保ったまま、リズムトラックがまったく異なるものに差し替えられており、その意外性のある跳ねかたに驚きを感じた。
最後は、ノイズが混信しながら消えていくようなアンビエントで、静かに幕を閉じる。
今回のアルバムは、音楽的にはいくつかのスタイルを飲み込みながらも、方向性は一貫しており、あたかもバラバラに立てられているように見える道標が、実は同じ行き先を示しているようなところがある。それは、氏が自ら「私小説的」と表現しているように、ごくプライベートな体験や感情をソースとして自然と表出してきた音を、前作から半年という短い露光時間で「撮影」できているが故なのかもしれない。
だとすれば、それらの道標が次に何を指し示しているのか。
本作を聴いて、まだ見ぬその先の風景にぜひイメージを巡らせてほしい。
前作同様、フミアキさんらしい徹底した音作りで、素晴らしいです。当日行かれる方、また後日通販や店舗でという方、たぶん期待通りですのでぜひゲットしてください。普通に部屋聴きでも、DJでも使えます。
5月20日、「SBCDNB4」やります
SBCDNB4 - 2012.5.20(Sun.)16:00-21:30
http://dnb.epxstudio.com/
前回から2ヶ月、応援してくださる方やDJ各位のご協力を得て、早くも「4」を開催できることになりました!
詳しくは上の公式サイトを見ていただくとして、改めてパーティーの概要を説明します。
知名度的にばっちり浸透しているわりには、今ひとつマイナーな「ドラムンベース(Drum'n'Bass)」という音楽ジャンルがありまして。高速リズムと存在感のあるベースが特徴的なダンスミュージックですが、これを極力大音量かつクリアな音で楽しもうというのが、パーティーの主旨です。「SBCDNB」のSBCは、言うまでもなく会場である「茶箱(Sabaco)」さんのサウンドシステムを前提としていることに由来しています。
ドラムンと一口に言っても、実際には音のスタイルにはかなり幅があって、そこから派生したサブジャンルがいろいろとあります。それこそ、美しいメロディーが主体の「リキッドファンク」から、ノイジーで破壊的な「ダークステップ」まで。敢えて4つ打ちに例えるならば、ディープハウスからシュランツくらい開きのある音楽が一緒くたになっているところが、ドラムンベースの醍醐味ですね。
「SBCDNB」では、これらサブジャンルを区別していません。もちろん、パーティー全体の流れは意識していますが、振れ幅としてよりダイナミズムがあるほうが楽しいかな、と思っています。そのために、いろいろなスタイルの異なるDJをお招きしています。
今回は、第1回に出演していただいたglicoさん、第2回からkoumeさんが再登場。加えて、最近は別名義でTraktor4デッキでゲームネタDJも展開しているmarixさん、ヘビーシックゼロで聞いて以来呼びたかったリキッド系DJ、大島いづみさんが初出演となります。
タイムテーブル、Ustreamなどについては追ってサイト上で発表します。例によってディスカウントを3パターン用意していますので、もし遊びに来ていただける方は、こちらもサイトをご覧になってぜひご利用ください。500円安くなります。
BeatportのDJページで、「SBCDNB4」を踏まえたドラムンベース・チャートを作りました。BjörkのCurrent Valueリミックス最高です。こればっかり聴いてます。
2012-04 "SBCDNB4" Drum'n'Bass Chart :: Beatport
http://www.beatport.com/chart/2012-04-sbcdnb4-drum-n-bass-chart/68309
インカ帝国展
日曜日、上野の国立科学博物館で開催中の「インカ帝国展」に行ってきました。ハイラム・ビンガムがマチュピチュ遺跡を見つけて100年とのことで、ミイラとかマチュピチュとか、日本人受けしそうなキャッチーな要素は押さえつつも、民俗学・人類学的な地味な史料も充実した、なかなか良い企画展でした。
今年ラストの花見チャンスを迎えた上野公園は、前日の悪天候もあってかものすごい人出で、インカ展も数十分待ちの状態。中に入っても、人垣の向こうの小さい土器とか織物を見るために、人が流れるのを待つか順番を工夫するかしないといけなかった。けど、その分3時間くらいかけてゆっくり見ることができたかな。
インカの遺物は、時代が新しいこともあって状態が良く、発色も鮮やかで見応えがありますね。土器に描かれた絵の様式も、極端に幾何学的なものと、動物や神をコミカルに図案化したものが入り混じっていて、親しみやすいです。マヤ文明のようなビジュアル・ショックはなくて、普通に興味をそそる。マヤやアステカ、ナスカは、もっとこう近寄りがたい神聖さというか、威圧的な感じがしたけれど。
実は今回、同行したTOM-BOYSの杉山さんに、事前にこの本を借りていました。
Amazon.co.jp: 天空の帝国インカ (PHP新書): 山本 紀夫: 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4569799043/
新書ながら、内容的には概説というよりはむしろ、農学的・民俗学的な視点からの独自の研究成果をまとめたもので、最終的にはインカの人々特有の精神性にまで踏み込んでいて、とても面白かったです。印象的だったのが「ワカ」信仰。人にしろ植物にしろ、異質なものを排斥せず、あくまで多様性を受容するという考えかたは、とかく均質なものを求める現代においては示唆的です。インカに関してこういう視点があったとは、新しい発見でした。
今回の展示そのものは、順を追った政治史的なものとはちょっと趣が異なるので、ある程度は予習をして行ったほうが、楽しめるかもしれません。もちろん、大スクリーンで3Dのマチュピチュを飛び回るだけでも、それなりに面白いのですが、それは最後のおまけって感じで。
TBS インカ帝国展 マチュピチュ「発見」100年
http://www.tbs.co.jp/inkaten/
TRAKTOR SCRATCH A6が来た
先週注文した「TRAKTOR SCRATCH A6」が届いた!発表の翌日にNative Instrumentsのサイト上でオーダーしたもので、国内では4月中旬発売予定となっていて、店頭にもまだ出回っていないみたい。とはいえこれは「DUO」としてパッケージされていたものの名称が変わって、添付のTraktor Scratchソフトウェアが、機能限定版からPro 2にアップグレードされたというだけ。オーディオI/FとしてTraktor Audio 6と、コントロールヴァイナル/CDが付属しているという内容です。
導入までのあれこれは省いて、まずは接続してみて気づいた点をいくつか。
手持ちのWindows Vistaノート(VAIO type-T VGN-TZ91HS)にインストールして繋いでみたところ、音飛びがすごい。結論からいうと、Sangoさんが当初直面していたのと同じ問題っぽいです。IntelのCore 2 Duoで、チップセットはMobile Intel 945GMS Express。ACPIとWi-Fiを切って、Traktor側のレイテンシも長めに設定して検証しましたが、何度試してもだめでした。DPC Latency Checkerで頻繁に黄色いバーが出て、その度に激しく音飛びしてしまう状態。お手上げです。
メインの制作マシン(Windows 7+Core i5 4コア)はもちろん、サブのMac mini(Lion+Core i5 2コア)でも安定して動作したので、やっぱりチップセット固有の問題なのかなぁ。それ以外のスペックはさほど厳しいわけではないと思うので、できればVAIOを使いたかった...。
ともあれ、Traktor Share Meetingに行ってSangoさんのプレゼンを見ていたおかげで、問題を早く特定できました。行った当時は、まだまだ自分には縁がないと思った内容だったけど、こんなに早く役立つ日が来るとは。ありがとうございます。
というわけで、セットアップにはまだ悩みそうです。コントロールヴァイナル/CDを使うか、インターナルでミックスするか、という点なども含めて。一応、昔使っていたM-AUDIOのX-Session UC-17というMIDIコンを引っ張り出してはみたのですが、さすがに古すぎてtsiファイルも出回っていないようなので、自力でマッピングするしかないですね。暇なときにでも。
FIERCESOUNDS feat. Neil Landstrumm
土曜深夜、仕事で前日のXhin来日@AIRも行けなかったし、どこか遊びに行きたいなと思って、Amate-raxiのハード系テクノパーティー「FIERCESOUNDS」にふらりと。5周年ってことで、ゲストがNeil Landstrumm。しかもライブセット!実は、木曜のDOMMUNEも見逃してしまって、気にはなっていた。
ニール・ランドストラムといえば、初めて買ったアルバムが"Bedrooms And Cities"で、17歳のときですよ。Cristian Vogelのアルバムを先に聴いて、そこから辿って行ったんだっけかな?90年代後半は一方でNo Future系、もう一方でハードミニマルをひたすら追っかけていたなぁ。
けどあれから15年経って、近頃はほとんどチェックしていませんでした。直前で、下のEle-Kingのインタビューを読んだくらい。これ、機材の話や過去の活動も含めてむちゃくちゃ興味深い内容で、案外知らないことばかりだったのを、改めて気づかされました。
Neil Landstrumm ベースを愛するUKテクノのベテラン、ニール・ランドストラム来日!
- ele-king Powerd by DOMMUNE | エレキング
http://www.dommune.com/ele-king/news/002284/
この記事のなかで、「もう昔やっていたような音はやらない」的なことを言っていて、しかもダブステップやグライムに傾倒しているとも聴いていたので、どんな感じかと思っていました。で、いざライブを聴いてみたら...全然昔と変わっていない!笑ってしまいました。そして楽しすぎた。130台後半くらい?の、今からすると早めのテクノ。ビート的にはエレクトロやダブステップもオカズ的に差し込んでいましたが、ほぼずっと4つ打ちでしたね。
機材セッティングはインタビューの通り、中央にESX-1、向かって右MachinedrumとMonomachine、左にMac(Ableton)とミキサー。ハードウェアライブにありがちな、ダレる感じがまったくなくて、僕らがElectribeでやるようなライブからすると異次元でした。がっつり潰したラフで太いアナログリズムマシンの音に、変態系のウワモノがギュンギュン入ってくる。かといって、あまりツマミをぐりぐりしたり、ましてやリボンコントローラを使うような場面もなく、ほぼパターン切り換えと抜き差しのみで、細かく展開を作っていました。もう相当、長年作り込んだサンプルとパターンが、秘伝のタレのごとく詰まっているんだと思う。
Abletonからと思われる音も有機的にミックスしていて、どの音がどこから出ているか分かりにくかったんだけど、Machinedrumはすぐ分かりますね。ESXで鳴らしているベースとはケタ違い。たまに同期がヨレていて、MIDIシンクしていないのかなぁと。あの機材で、あんなにアナログ感のある、かつタイトなミックスができるのは、本当にすごいです。
おかしかったのが、ライブ前にしきりに紙きれの束を見ているので何かと思ったら、手書きのカンペなのね。それ、やるやる!ライブ終わったあと、Machinedrumを片付けるときに、買ったときについてくる紙の箱(しかもボロッボロ)にしまっているのもなんか笑いました。
1時間のライブで、お腹いっぱい。生で聴いてよかった。
ほかのDJも、140bpm近いハードなトライバルテクノあり、BAKUさんはMaschineコントローラでダブステップからドラムンベースを行ったり来たり。締めのマユリさんは叩きつけるダーク系テクノで、広義のハードな音がいろいろと楽しめました。充実感!
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すっかり過ぎてしまいましたが、5日が誕生日でした。SNS等でいろいろとメッセージくれた方ありがとうございます。おかげさまで、っていうか、歳を重ねるごとに誕生日は感謝の気持ちが大きくなっていきますね。現状に多くは望まないので、日々楽しく健やかに、また一年過ごせればいいなと思っています。
前日の夜にお祝いをしてもらえて、嬉しかった。当日は仕事が立て込んでいて、そのあと数日も目が回りそうな忙しさだったんだけど、自分へのご褒美でTraktor買いました。買っちゃいました遂に。まあなんか予定していたわけではなくて、たまたま3日にNIからシリーズラインナップの変更が発表されて、渡りに船でって感じです。詳しくは、おなじみイケベ市原さんのブログにまとまっています。
TRAKTORシリーズラインナップまとめ|PowerDJ'sBlogPlus+ - 店長の部屋Plus+
http://shop.plaza.rakuten.co.jp/dj/diary/detail/201204050000/
手持ちのアナログ/CD資産を活かしたいなっていうのと、単純に一度タイムコードコントロールを使ってみたいという理由で、Traktor Scratchにしました。A6のほうですね。ちょうどオーディオインターフェースも買い替えたいと思っていたので、Traktor Audio 6、これでソフトウェアとコントロールヴァイナル/CDも込み込みで3万円ちょいというのは、昔に比べると相当にお得感高いです。5日に注文して、11日届くみたい。楽しみ。
しばらくはこれで頑張ってみて、コントローラが欲しくなったら、6月に出るTraktor Kontrol F1を検討してみようかな。ツマミとフェーダーとパッド全部入りでこのサイズっていうね。アイデア次第でいろいろできそうで、かなり気になっています。
iPadアプリ「Paper」とTouch Wand
iPad用アプリ「Paper」が素晴らしいと噂なので、試してみました。確かにこれはすごい。シンプルだけれど書き味は抜群だし、何よりUIがいい。iPadにデフォルトで組み込まれていてもおかしくない出来で、感心しました。
コンセプトが、手書きメモアプリと本格的なお絵かきアプリの"中間"とのことで、確かにその通りの作りになっています。前者では無料の「neu.Notes」や、ワコムがやけに力を入れている「Bamboo Paper」、それにイマイチだった「Adobe Ideas」...後者ではタカラトミーの「iせんせい」から、それなりにお高い「Sketch Book Pro」なんかも試してきましたが、これはどこにも属さないアプリですね。
書き味で言うとワコムの「Bamboo Paper」が素晴らしくて、筆圧感知のないiPadでよくぞここまで、というリアルなペンタッチを再現しています。「Paper」のデフォルトのペンでは、早く描くと線が太くなるという、現実の筆と逆の描線になるので、はじめは違和感がありますが、アプリ内課金で購入できるWriteというペンがBamboo Paperのに近くて、かつ極細で良いです。他にSketchという鉛筆ライクなペンも購入しました。
TwitterやTumblr、Facebookに速攻で共有できる機能も、今風らしくスマートでいいですね。
前述の通り、お絵かき系アプリは以前から好きだったものの、これまでは特にiPad用のスタイラスを欲しいと思ったことはなく、かなり割り切って使っていました。が、「Paper」があまりにも良いので、ここへ来て初めてペン形状のスタイラスを試してみたくなりました。
Apple純正のスタイラスは出ていないので、必然的にサードパーティー製のものになるわけですが、中でもワコムが売り出しているBamboo Stylusがメジャーで、今だと割とどこに行っても売ってますね。ただ、個人的にintuosについてるペンの形状が苦手で、ワコム製品はちょっと敬遠してしまう。せっかくならと思い、Amazonで評価の高かったミナトエレクトロニクスの「Touch Wand」を購入してみました。
これ、先端が導電性の繊維を束ねた筆状になっていて、まんまブラシでガラス面を触っているような感触。といっても毛先が短く、丸くなっているので、柔らかすぎもせず、なんだかこれで描けるのは不思議な感じです。指で使うよりもはるかに快適で、Paperアプリとの相性も良かったです。昨日いくつかの店頭を回ってみましたが、あまり扱っている店がなく、唯一新宿西口のヨドバシのMacフロアにありました。
日常的なアイデアスケッチに使えればいいかな、と思っています。
静電容量式タッチパネル専用タッチペン Touch Wand(タッチワンド)D-type TWD-002BK