「ユベール・ロベールー時間の庭」記念コンサート vol.1
平日だけど、時間を作って、再び上野で開催されている「東京・春・音楽祭」のコンサートを観に行ってきました。今回は、チェンバロの曽根麻矢子さんによる、18世紀フランスの鍵盤音楽がテーマの公演。場所は上野公園入ってすぐの国立西洋美術館の講堂で、同期間に開催されている企画展と連動した内容とのことで、楽しみにしていました。
始めに、美術館の研究員の方による企画展についての解説が15分くらいあり、続くコンサートは、正味40分くらいの内容。ラモー以降の、最後期バロック音楽の作曲家の小品からかいつまんだ曲目で、短い時間ながら充実していました。特に後半のデュフリやバルバトルは、不思議と現代的に聴こえる箇所が多々あって、編曲したら普通に今もポピュラー音楽として聴かれてもおかしくないんじゃないかなぁ、とか思ったりしました。D.スカルラッティの鍵盤ソナタ作品にも言えることですが。ロマン派のピアノ曲より、よほど親しみやすいと思うんですけどね...。
曽根さんのコンサートは、3年前の浜離宮朝日ホールでのゴルトベルク以来でしたが、相変わらず素敵でした。最近はフランソワ・クープランとラモーのクラヴサン作品全曲演奏会(連続12回)を継続されている途中とのことで、どこかで行ってみたいと思っています。
コンサート終了後は、半券で企画展「ユベール・ロベール―時間の庭―」を見ることができました。ユベール・ロベール(Hubert Robert)は18世紀、フランス革命前後に活動した風景画家で、若いころ滞在したイタリアの古代ローマの遺跡をモチーフに、帰国後も空想上の遺跡風景を描き続け、いわば「廃墟画家」として知られているそうです。
神話的な過去の都市のイメージではなく、あくまで「廃墟」と生い茂る草木、あるいは遺跡の周りで日常生活を送る(作家における"現代"の)人々とのコントラストがテーマ、というところに共感しました。私からすると、それこそ『ラピュタ』や『ナウシカ』だとか、『ICO』『ワンダと巨像』のような作品の世界を連想してしまうのだけど、こういった朽ち果てていくものに対する美意識が、少なくとも200年以上前からあるってことですね。
どの分野であっても、生涯をかけてひとつのモチーフを追求する作家って、憧れます。ロベールの場合も、廃墟を前景としてアーチの向こうに見える風景という構図が、素描にも油彩画にも執拗に現れる。作品にかける熱量とか、こだわりの強さがビリビリ伝わってきて、鑑賞する側も入れ込んでしまう。どちらかというと素描が中心の、大作の少ない地味な展示ではありますが、前述のテーマに共感する方にはぜひおすすめです。国立西洋美術館では、5月20日まで開催とのこと。
ミュージアム・コンサート
「ユベール・ロベールー時間の庭」記念コンサート vol.1
18世紀のフランス音楽~曽根麻矢子(チェンバロ)
2012年3月29日(木)14:00@国立西洋美術館 講堂
ダカン:《クラヴサン曲集 第1巻》より
「お気に入り」
「寛大な怨み」
「歓喜」
「荒れ狂う風」
A.L.クープラン:勇ましい人(ロンドー)
コレット:ディヴェルティメント《海戦の勝利》より「花火」
デュフリ:《クラヴサン曲集》より
「アルマンド」
「クーラント」
「ラ・フェリクス」
「ラ・ド・ブロンブル」
バルバトル:《クラヴサン曲集 第1集》より
「ラ・ド・カーズ」(序曲)
「ラ・デリクール」
「ラ・リュジャック」
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[アンコール]
デュフリ:《クラヴサン曲集 第4巻》より「ラ・ド・ドリュモン」
Voltage feat. Sandwell District
渋谷VisionのパーティーにRegisとFunction(David Sumner)のユニット、Sandwell Districtが出るというので遊びに行ってきました。昨年末で解散なんていう話もあったような、と思って公式リリースをよくよく見直したら、アナログのプレスはやめてライブは続けますという話だったようで、実際RAのアーティストページにも今年のライブ予定いっぱい入ってるし。
個人的にはこの2人の組み合わせだと、いまだにPortion Reformのイメージなんですよね。このユニット、Downwardsのなかでも特に好きで、最近また昔のアルバムをリッピングしてよくiPodでも聴いていたところ。Sandwell名義では、ついこの前アルバムをCDで買っていたんだけど、もっとダーティーでインダストリアルなのかと思ったら、普通にシンセパッドとかが綺麗でよくデザインされたサウンドだなって感じ。寝る前に良いですね。
さて、今回は1:30からの5時間DJ+ライブセットとのことでしたが、Sandwell名義の曲の印象とは裏腹に、激烈なハードミニマル&ハードグルーヴセットでした。開始から3時間はずっと上げっぱなしで、とにかくこまめに抜き差ししてスキを作らない、畳み掛けるような展開。大好きです。
立ち位置的には左にRegis、右にFunction。去年Sandwellで来日したときは交互にDJやったりしていたようですが、今回はずっと2人でやってました。それぞれにMacがあって、当日セッティング中の写真を見ると、それプラスUC-33e、Maschine Mikro、あとTR-909ですね。909は、ミックスに対してオカズ的にライドを足しつつピッチを上げ下げして盛り上げたり、スネアを並べてロールを作ったり、まあ、ありがちな使いかたでした。
笑ったのが、Regisがディープめのループを繋いでも、Functionがそれに16分のハットを足してハードグルーヴにしてしまうところ!なんかもう、全然下げる気配がない。それでも、BPM的には全然往年のハードミニマルほどでもなくて、行ってて130?くらいに感じました。遅いハードミニマル。
音はそこそこ良く、他のDJと比べて超爆音じゃないけど、たぶん仕込みでいろいろ整えてるんだろうなと。シャキシャキした高音域が、キックの裏ですごく立ってて気持ちよかった。
ただなんか、音に反してフロアが...これはVisionの構造上の問題なんだけど、メインフロアを挟んで両サイドに別々のフロアの出入り口があって、つまりフロアをずーっと客が行き来してる。通路で踊ってるみたい。混雑は全然いいんだけど、そうじゃなくて四方から人が来てはバンバンぶつかって、なかなか音に集中できない!あちこちクラブ行ってるけれど、過去最悪クラスに「踊れないフロア」でした。Vision行くの2回目だけど、前はメインにほとんど居なかったから、気付かなかったなぁ。あれ、本当なんとかしたほうがいい。
朝5時くらいまで遊んで、だいぶ音的にも落としてきていたので、充分と思って離脱。すごく楽しめたのに、本当はもっと没入したかったなという気も。ライティングやVJもチャラい感じであまり良くなかったね(ビカビカしすぎ)。
Sandwellのオールドスクールなパフォーマンス自体、これといって真新しい要素こそなかったけれど、確実にハードグルーヴ回帰の流れを実感できてテンション上がりました。
SBCDNB3、ありがとうございました
今回も遊びに来てくださった皆さま、出演者の皆さま、ありがとうございます。
BPMが速いぶん情報量も多く、いろんなタイプのドラムンベースがぎゅっと圧縮された、濃い5時間半でした。あっという間でしたね!
いろいろな方に遊びに来てもらえて嬉しかったです。話を聞いたら、ものすごく遠方からお越しの方もいたりして。今回は茶箱さんのご協力をいただき、珍しくフルでUstreamもやりました。現地ではコメントできませんでしたが、リアクションしてくださった方々も、ありがとうございます!
少しですが写真を撮りました。今回はけっこういいカットが撮れたかな。
2012-03-18 SBCDNB3 - a set on Flickr
http://www.flickr.com/photos/epxstudio/sets/72157629251469172/
録音は、ICレコーダ(PS603RM)でマイク録りした音源を、Mackie Final Mixでがっつり補正かけてアップしました。改めて聴いてみたら、結構いいじゃんというか、いま自分にできる範囲ではそこそこ会心のミックスだと思います。やっぱドラムンのDJは、多少飲みながらやったほうが調子がいい気がする。攻めに躊躇がなくなるっていうか。
R-9 - Live@SBCDNB3 20120318
http://dnb.epxstudio.com/R-9_-_Live@SBCDNB3_20120318.mp3
- Nu:Tone feat. 4 Hero /Invisible (Instrumental Mix) [Hospital]
- Calibre /Who's Singing [Signature]
- Dub Phizix feat. Skeptical /Four [Critical Presents : Modulations]
- Calibre /Garbage Man [Signature]
- Mage /Force Feedback [Pirate Station]
- Syncopix /Les Temps Moderne [Syncopix]
- Phors /Holding On [Fokuz]
- Calibre /Windows [Signature]
- Lynx /Randy [Soul:r]
- Blasta /Aerobar [Respect]
- ICR /Primavera [Covert Operations]
- Dub Phizix /Break It [Critical Presents : Modulations]
- Loadstar /Berlin [RAM]
- Camo & Krooked feat. Nemesis /Bounce [Mainframe]
- Danny Byrd /Junction 18 [Hospital]
- Current Value /Warship [Barcode]
- banvox /Lazer [Maltine]
- Camo & Krooked /Terra [Mainframe]
- The Prototypes feat. Darrison /Evolution [Viper]
- Fred V & Grafix /One Of These Days [Mainframe]
- Syncopix /Heaven Sent [Syncopix]
60分あったので、綺麗めのリキッドと音数少ないディープな曲中心の前半と、ブレイク長いPrimaveraを挟んで、派手めなトラック中心の後半にざっくり分けました。前半はCalibreのアルバム"Condition"から3曲使っています。このアルバム本当に好き。
後半、Danny ByrdとCurrent Valueの繋ぎは、思いつきにしてはハマりました。そこからMaltine RecordsのMARU-102から"Laser"。あまり上げない予定だったので、使えたら使いたい、くらいのつもりで持って行ったんですが、このテンションまで上げていけて結果的に良かったです。30過ぎて高校生の曲をDJで使える日が来るとは思わなかったし、こういう刺激的なことがあるから、音楽はやめられないなぁ。
そんな感じで、また次回「SBCDNB4」でお会いしましょう。次は1年もお待たせしませんよ!
シュテファン・フッソング~現代美術と音楽が出会うとき
上野を中心として、3月16日から4月8日にわたって開催されている「東京・春・音楽祭」の主催公演のひとつ、アコーディオンのシュテファン・フッソング(Stefan Hussong)氏によるソロ・コンサートに行ってきました。場所は不忍口のすぐ近く、上野の森美術館の展示室。いわゆるコンサートホールではなく、普通に企画展の作品が展示されている一室で、照明もそのまま、100席ほどのパイプ椅子を設けただけの不思議な空間でした。
フッソング氏の名前は、CDなどでは見かけていたものの、今回の公演を機に具体的な活動内容を知って、興味を惹かれました。まず、アコーディオン奏者としてレパートリーが独特!現代音楽をメインに、バロックや雅楽など、一見して両極端な音楽を追求しているよう。また意外なことにご本人は日本語がとても堪能で、曲間にユーモアを交えた解説をしながらの進行でした。
1曲目からの雅楽。アコーディオンの高音のリードで弾く高い音は、まるで笙そのもので、まったく違和感がなかった。次第に音が分厚くなって、空間を満たしていく感じ。一転して現代音楽のレパートリーでは、目にもとまらぬ速弾きで圧倒するというよりは、強弱の効いた確実な(けれど極めて複雑な)演奏でした。
ケージとバッハを続けて弾いていて、どうしても連想するのが、昨年「BACH×CAGE」でツアーを行ったピアニストのフランチェスコ・トリスターノのこと。選曲も似通っていて、今回ではケージの「ある風景のなかで」のほか、一昨年の公演ではストラヴィンスキーの「タンゴ」も取り上げていましたね。やはり、何かしら共通点があるのかも。
素晴らしかったのが「荒城の月」の(本人による?)編曲で、独創的な冒頭部分に次いで、主題が徐々にダイナミックに膨らんでいくところに感激。こんなにいい曲だったとは。
アンコールはサティのエンドレス・タンゴ。不思議な雰囲気の曲で、美術館のなかというロケーションにぴったり。最後は、弾きながら舞台を降りてフェードアウトしていく、というアコーディオンならではの演出に沸きました。
実は、今回の演目のうちの多くは、YouTubeのフッソング氏本人のチャンネル(HussongStefan)で映像が公開されています。ティエンスーの「ファンタンゴ」なんかおすすめです。最初聴いたとき面食らったけど、なぜか癖になりますね。アコーディオンという楽器の可能性にわくわくしました。これから、CDなどの音源も追っていこうと思います。
ミュージアム・コンサート
シュテファン・フッソング(アコーディオン)
~現代美術と音楽が出会うとき
2012年3月17日(土)19:00@上野の森美術館 展示室
雅楽(10世紀):盤渉調の調子
ヘルツキー:ハイウェイ・フォー・ワン
ケージ:ドリーム
J.S.バッハ:コラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659
ティエンス:ファンタンゴ
滝廉太郎:荒城の月
ストラヴィンスキー:タンゴ
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ケージ:ある風景のなかで
原田敬子:《BOOK I》アコーディオン独奏のための
ソレール:ソナタ 第62番 ハ長調「アレグロ・スピリトーソ」
J.S.バッハ:
コラール前奏曲「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」BWV687
グバイドゥーリナ:デ・プロフンディス
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[アンコール]
エリック・サティ:「スポーツと気晴らし」より第16曲「タンゴ」
風ノ旅ビト/Journey
PlayStation StoreでリリースされたPS3用ゲーム『風ノ旅ビト』をクリアしました。原題は"Journey"で、1年以上前から『ICO』の上田文人氏がTwitterで絶賛するなど、開発時から話題になっていた作品。制作したのは、同じPS3で『FlOw』や『Flowery(原題"Flower")』を作っていたアメリカのThatgamecompany。私はFloweryが超ツボだったので、今回もかなり楽しみにしていました。
といっても、事前に出ていた情報は、なんとなく世界観が伝わるYouTubeのトレーラーだけ。『ワンダと巨像』っぽい荒廃した砂漠や遺跡を、旅人が行くっていう感じで。どんなゲームかまったく分からないまま、プレイし始めました。
極端に文字情報が少ない(というか無い)ゲームで、開始当初はルールもストーリーも目的も分からないまま、砂漠に放り出されます。ただ、そこからの引き込みかたが見事で、映像の美しさに導かれるままのめり込んでいって、最後に爆発的なカタルシスに到達。クリアまでたった2~3時間のボリュームながら、不思議と充実したゲーム体験をしました。
なんというか、駆け引きやゲームオーバーはないので、厳密にはゲームとも言えない感じで、インタラクティブな絵画や詩の世界に引きずりこまれる感覚です。Floweryを体験している人は、あれが拡張されて、より完成度が極まった感じというほうが分かりやすいかも。
そしてプレイ中、薄々感づいていたことが、最後の最後スタッフロールの後に明らかになって「やっぱりか!」と思いましたね。すごく特別な体験をしたので、言いたいけど、言えない!ぜひ、事前に2chとかで情報を集めないで、ネタばれなしで遊んでみてください。
熱海合宿
この土日は、ここうさんの呼びかけで、フミアキさんと3人で熱海へ合宿に行ってました。旅行ではなく敢えて「合宿」なのは、楽器やPCを持ち込んで、籠って作業することが目的だったからです。あと、温泉ですね。以前からお誘いいただいていたこともあり、今回はスケジュールを調整してようやく実現!フミアキさん車で拾ってもらい、土曜の朝9時過ぎには熱海入りしました。
あいにくの天気ではあったけれど、今回は基本インドアなので関係なし。というか温泉が素晴らしかったです。土日の朝晩で4回入ってしまった。2人は淡々と作業をしていて、ここうさんはElectribe A/RとMonotribe、それにDS-10を使って慣れた手つきで音作り、フミアキさんは次回作に向けて、Mac上のCubaseで怖いインターフェースのソフトシンセをごりごり使って制作を進めていました。
自分はといえば、取り立てて曲作りに追われているスケジュールでもないので、5月のコミティアに向けたアイデアスケッチを延々と量産。たまに、iPadのiElectribeで174bpmのドラムンベースのループを試作したり。
うち、ここうさんの成果は既にブログにまとめられています。さすが早い!
extend::作曲合宿でした。
http://extend.ore.to/index.php?e=3201
土曜の晩は、ここうさんお勧めの寿司屋で廻ってない寿司を。美味しかった!帰って温泉入って、お酒飲んでわいわいと。そのあと作業を再開して、なんだかテンションが上がっていたのか、前日もあまり寝てないのに2時過ぎまで起きてました。
翌朝も9時からその続き。11時過ぎ、周辺をぶらぶらと散歩しつつ、朝食を兼ねた昼食に出かける。しつこかった雨もすっかり止んで、近くの梅園の有名な梅まつりのためか、熱海はそれなりに賑わっていました。びっくりしたのは、川沿いの桜がもう散りかけていたこと!熱海桜といってすごく早いのだそう。
散歩していると謎のB級スポットがいっぱいあって、飽きない。無意識に突っ込み待ちをしているような風景。若者向けブティックのディスプレイに、ラルクhydeのポスターと並んでMC-303が展示してあったのは笑ったなぁ。
フミアキさん一押しの、熱海銀座「山洋水産」で絶品のサーモンいくら丼を食べる。さすがに海産物はハズレないですね。これは最高!(夜中にこの画像を貼ると自爆テロになりそうなので、写真はリンクだけに留めておきます...。)
ちなみに、カメラはK-rを持参しました。がっつり撮影って感じでもなかったのですが、せっかく車移動だし一応。レンズは35mm単焦点のみ。観光地で漫然と風景を撮っても仕方ないし、もうちょい余裕があったら面白いモチーフを探して歩いてみても良かったかな。
そんなこんなで、楽しい週末でした。お2人ともお疲れさまでした!