曽根麻矢子 J.S.バッハ連続演奏会XII
聴いてきた感想など。
6年にわたる連続演奏会の第12回。最終回ってことだけれど、11回まではまだ存在も知らなかったので、最後列の席とはいえチケットが取れたのは運が良かった。情報を知って、ぴあで予約したのが2月の話。
浜離宮朝日ホールも初めてで、音の小さいチェンバロの独奏がどの程度の音量で聴こえるのか気になっていたけど、いい感じに反響して、一番後ろの22列でも全く問題なかった。小ぢんまりしていて、きれいなホール。
ってことで、「ゴルトベルク変奏曲」です。曽根さんは、昨年と11年前の2回この曲を録音しているらしいんだけど、今回は事前にどっちも聴かず、予習なしで行ってみた。チェンバロ版では、普段はラルフ・カークパトリックの録音を聴いていて、わりと堅実な、かっちりした演奏に慣れていた。
冒頭のアリアが始まるや、期待通り、激しい抑揚のあるアクの強いスタイルなのが分かって、テンション上がった。チェンバロは打鍵の強弱をつけられる楽器ではないけれど、曽根さんの独特のグルーヴの作り方で、いい意味でクセがあるというか、ここは好みが分かれるところなのかも知れない。
第10変奏のフゲッタでの跳ねるようなリズムは、ピアノでも聴いたことがない刻み方で、特徴的だなと思った。この曲はもともと好きなので印象に残っている。
第14変奏とか第29変奏みたいな激しい曲は、案の定イメージにぴったりという感じ。逆に、音符が散り散りになりそうなくらいのテンポで弾く25は、音が早く消えてしまうチェンバロだと、ピアノで聴くのとは全然違う曲のように聞こえた。
そんな派手な曲じゃないはずなのに、なんかグッときたのが第22変奏。明るく跳ねてる感じが合ってたのかな。後日、CDを買ったら確認してみよう。
基本的に、全ての変奏をAABBリピートして弾いていた。録音でもそうだったらしくて、CDに入りきらないのでいくつかをカットしたらしい。今回、最後のアリアだけ反復しなかった気がするのだけど、何か意図があるのかな。
連続演奏会のファイナルってことで、アンコールは無し。アリアの余韻が残って、これはこれでいい感じだった。
チェンバロで聴く「ゴルトベルク」の特徴は、二段鍵盤を使った反復部分の弾き分け。ピアノだとオクターブ上げたり下げたり、装飾音を足したりするけれど、チェンバロはストップ操作で音色そのものが変わる。このコントラストがすごく楽しい。第13変奏では、上だけリュート・ストップにして左手と右手を入れ替えながら弾いていた。
ただ、各変奏が終わるごとにこのストップ操作が入るので、流れが途切れがちになるのは難点かも(もちろん、同じ設定のまま弾き続ける箇所もあったけど)。これは、CDだとカットされる部分なので、分からなかったな。
今回、第15変奏の終わりで20分間の休憩が入った。この休憩の間に、再び調律師が入っていたのは驚いた。チェンバロって繊細な楽器なんだなぁ。
で、たぶんラ・フォル・ジュルネのときもG402で見かけた調律師だと思うんだけど、休憩だけに客がいっぱいステージ前まで行って物珍しそうに見てるんで、仕事し辛そうだった。一回終わりかけてから、また戻って時間ギリギリまで調律し直してたし。
曽根さんによるバッハの演奏会は一区切りってことみたいだけど、また何かの機会で聴けたらいいな。とりあえず、2枚出てる「ゴルトベルク」をチェックしないと。
- 曽根麻矢子チェンバロリサイタル
J.S.バッハ連続演奏会 第12回 "最終回" - 2009年5月23日(土)15:00@浜離宮朝日ホール
- ゴルトベルク変奏曲 BWV 988
- アリア
第1変奏~第15変奏
(休憩)
第16変奏~第30変奏
アリア