『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観た
3回行きました!公開直後からじわじわと話題に上がっているのは知っていて、そのうち観に行くかと余裕で構えていたら、案外公開終了が早そうだと聞いて、急遽7月1日に地元で2D字幕版を。続いてその3日後に3D吹き替え版を。さらに、立川シネマシティでの「極上爆音上映」企画がヤバいとの噂を聞いて平日に3回目を。いやー、何度でも観れる。
この感じをTwitterでうまく例えていた方がいて、曰く、好きなバンドが来日していたら何度でも行くじゃん、という。ライブ感があるんですよね。
私は初めこの映画(『マッドマックス 怒りのデス・ロード("Mad Max: Fury Road"、以下マッドマックスFR)』)のことを誤解していて、観た人のテンションがあんまり高いものだから、B級映画かバカ映画かそういう類のものと思っていたのです。つまり爆発とか暴力のようなキャッチーな要素を全面に出しつつも、完成度の低さをもメタ的に捉えた、ツッコまれビリティの高いエンターテイメント作品なのだと。
しかし、実際に観てみたらまるで違って、ものすごく完成度の高い、極上のファンタジー映画だったのでした。これは生半可な想像力では生み出せない作品だよ。小説とかマンガとかの作品を実際に自分の手で作ったことのある人だったら、なおのこと実感できるのではないかと思います。感受性の強い人がこれ観たあとに軒並み言語野をやられて、ウオーとかしか言えなくなるのは、単にあまりの精巧な世界描写とビジュアルショックに、脳が一時的に麻痺しているだけなんだ。
まあもちろん、ファンタジーという以前に本質的にはアクション映画なのだけど、いわゆるアクション大作のメソッドを全然なぞってない。主人公マックスを始め、みんな世界を救うためとかじゃなくて、あくまで自分のエゴで戦う。最大の敵であるイモータン・ジョーは、マックスとは直接的には何の因縁もないし、そもそも作中で会話を交わすことすらない。それどころか、イモータン・ジョーは通り一遍の悪役としてではなく、秩序を失った世界に社会システムをもたらす存在として描かれている。それに対するという意味でも、マックスは一貫して狂人=mad manなのです。まず目つきがヤバイ。
で、この「狂う」というのが本作のカギになっていて、マックスがあるシーンで"Hope is a mistake. If you can't fix what's broken, you'll go insane."と言う。その通りに、主要キャラはみんな一度それぞれの大きな希望を失って、そのあと狂っていく。フュリオサも、ニュークスも、ジョーも。大きな損失を出した人食い男爵や、光を失った武器将軍でさえもそうかも。そのなかで、過去に妻子を奪われ、冒頭で愛車さえ奪われたマックスだけが、最初から最後まで狂っている。
特に狂気を感じたシーンは、折り返し地点でマックスが言い出した提案のところ!あのシーンは、身振りや表情を含めて狂人だと思ったし、あそこでガツンとギアが入って、一気にヴォルテージが上がる感じはすごかった。
あとは、武器将軍戦のところですね。ここは実際には戦闘は描かれないんだけど、それまでは状況に受動的に流されるがままだったマックスというキャラクターに対して、あーこの人何だかわかんないけどヤバい奴だぞという印象が強く残ったシーンだった。それがそのあとの行動に繋がっている。
そう、キャラクターの行動原理がしっかりしているのが全てだなと思いました。誰も理不尽な行動を取らないし、それをいちいちセリフで説明もしない。極端に少ないセリフのなかで、作品のエッセンスに繋がる部分を縫い留めつつも、基本は全部「画」で見せる。
そして画そのものの完成度は非の打ちどころがなく、美術のチャチさやCGの不自然さがまったくなくて――なにしろほとんど実写だから!(Mad Max: Fury Road without special effects is still freaking awesome - YouTube)――そこが素晴らしいなと。映画館の大きなスクリーンでこそ体感したいと思わせるライブ感というのは、まさにこの絵と物語の力なんだと思いました。
あと立川シネマシティの「極上爆音上映」初めて行ったんですけど、すごく良かったです。映画館自体はいまどきのピッカピカのシネコンではなくて、ちょっと年季入った感じというのがまず良くて。でいて、爆音といってもことさらに音が大きいということもなく、ごく自然に、迫力が何割か増しになるイメージというか。
マッドマックスFRでシネマシティの極爆を体験しておいて良かった。私はこの週アスによる企画室長へのインタビュー記事を読んで、行かなきゃと思いました。狂気こそが未来を変えるんだ。
常識破りの成功 映画館に革命を 立川シネマシティ「極上爆音上映」の野心 - 週刊アスキー
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/355/355161/