Roland JD-Xiが来た
というわけでなんだか発表から発売まであっという間だった気がしますが(1月の発表のときに書いた記事です>「Roland JD-Xi | EPX studio blog」)、速攻で予約していた本日3月13日発売のシンセサイザー、Roland JD-Xiが届きました。今回も池辺楽器店PowerDJ'sさんにて。いつも発売日午前中に届けてくれてありがとうございます。
さっそくひと通り触ったんですけども、いやー、素晴らしいですこれ。絶妙なパッケージ感。この大きさでこの価格帯でこれだけ音と機能を盛り込んで、操作性やインターフェースもよく考えられているなあという。もちろん、切るところはバッサリ切っているので、そこは割り切らないといけないんだけど、このバランス感覚は近頃のキレキレのRolandらしいと思います。
しかしそもそもこのミニ鍵のシンセ、公式のスペック表やパネルの操作子の写真だけでは、何がどこまでできるのかいまいち分かりにくい。なので、少し触ってみた範囲で、できることとできないことを簡単にまとめておきます。
できること
音色のエディットは、実はかなりできます。ツマミとして出ていないフィルター、アンプのエンベロープはもちろん、大概のパラメータがメニューのTONE EDITから編集できます。このあたり、公式で提供されている「パラメーター・ガイド」を読めば多くの疑問点は解消するのではないかと思います。
まったく知らなかったのは、デジタルシンセ音色は各パートとも3つのパーシャルから構成されていて、GAIAみたいにレイヤーさせることができる。それぞれの基本波形も選べるし、普通のデジタルシンセができるサイン波なり鋸波からの音作りもできます。例によって、SUPER SAWを3つ重ねる的なこともできる。ただしユーザー音色という概念がないので、既存の音色(もしくはFX/Otherに登録されているイニシャル鋸波)を選んで、そこからメニューを潜って各パラメータを再設定していく感じです。このあたりは後述します。
同様に、ドラムパートのキットの編集も、パラメータを個別に調整することによって、音色ごとにピッチをはじめあれこれいじれます。変な話、元のPCM波形も入っている中から好きなものを選択できるので、キットの構成自体を大きく組み替えることもできます。
どういう系の音が入っているのかは、これも先のパラメーター・ガイドに全部書いてあるのですが、909、808、7x7のTR-8系に加えて、実機サンプリングものだとCR-78、TR-606/626、あとはよくあるジャンルごとキットという感じ。808/909系は、Rolandの歴代grooveboxのなかでは抜群に音がいいです。鍵盤ならベロシティの加減もできて打ち込みやすい。
アナログシンセパート、楽しいです。三角波の存在感がすごい。これも、オモテに出ているパラメータは3種類の波形選択とかサブオシレータのON/OFF、アナログLPFくらいですが、TONE EDITを潜るとピッチエンベロープも変えられたりします。プリセット音色が64種類あって、どれも個性的なので、試奏の際は聴いてみてください。アナログシンセでプリセット音があるというのがそもそも不思議な感じがしますね。
操作系に関して気が利いているなと思うのは、メニューから深い階層のパラメータを触っていたとしても、パートを切り替えれば、別のパートの同じパラメータにすぐにアクセスできるところ。戻ったときも同様で、階層を上り下りする手間はあまり感じない。あとは、早くページを切り替えるためのショートカット(+押しながらー)があるとか。
できないこと
上でも書いた通り、作った音色の「ユーザー音色」としての保存ができません。すべてプログラム(=パターン)に紐づいた音色エディットとして保存されるので、そのプログラムの中でしか使えないのです(もちろんプログラムのコピーはできる)。一番大きなダイヤルで選択できる音色のバンクはプリセット固定で、この音色が工場出荷時で256種類。
ただし、これは考えようで、特に自分の今までの曲作りを振り返ると、シンセの音色だけ使いまわすことってほとんどないんですよね。その曲のために都度エディットするわけだし、プログラムとして保存できれば、これは問題ないのです。
ちなみに、ユーザー領域は256プログラム。16分音符スケールで各4小節までで、ソングモードはありません。もしソング的に繋いでいくのであれば、Favoriteボタンに16バンクx16プログラムを任意で登録できるので、手動で切り替える感じです。
他には、エフェクトのルーティングはけっこう制限があります。これはElectribe SXとかのFXチェーンのイメージと近くて、例えば歪み系であればプログラム全体でディスト―ションとファズは排他的で、パートによって使い分けることができない。
パートごとにセンドレベルは変えることができて、これは例によってメニューから潜って設定します。つまり、エフェクトツマミは全パートに共通でかかるということ。これはこれで、パフォーマンスを前提に考えるととても分かりやすい設計になっています。どのパートを選択した状態であっても、リバーブを回せばセンドが設定されている全部のパートにリバーブがかかる。
一方、ライブでの使用を考えると困りそうなのが、ドラムキット内各音色のミュートがないこと。パートミュートであれば、SHIFTを押しながらパートボタンでリズムパートだけ抜くことができるわけですが、キックだけ抜くみたいなことができない。キック音色を選んで、TR-REC状態のシーケンサーのパッドを叩いてブランクにする、とかでなんとか。
このへん、アップデートでどうにかならないかな?鍵盤にインジケータがないので、ミュートのオンオフが分かりづらいか。うーむ。
※追記:ドラムの音色を選んで、AMPつまみでミュートするという方法を教えていただきました。組み合わせると面白そうなのが、パートミュート中も鍵盤を叩けばミュートししているパートの音は出るということ。ということは、アルペジオをONにしてスネアがアサインされている鍵盤を押せば、スネアロール的なフィルインも差し込めますね。
そういえばElectribeでも言えることというか、グルーブボックス系全体のあるあるだと思うんだけど、プログラム選択とトーン選択を押し間違えて、打ち込み中のデータが消えてしまうことがあります。音色変えようと思って、プログラムの+を押してしまうと、保存していないデータがパーになってしまうので、これもアップデートでどうにか…難しいかな。慣れかも。
まずは作ってみる
ゼロから作ってSoundCloudにアップしてみました。USB接続でシンプルに録って出し。プリセットに派手なものが多いので、ここから逆にどう個性を出していくかというのは、燃えるものがありますね。地味で深い音が作りたい。このスケールのハードウェアならではの制約の多さと、それを乗り越えるヒントがチラチラと見えていて、そういう意味ではすごく挑戦しがいのあるシンセです。
プリセット音色は、今は十分だけどおそらく物足りなくなるだろうなという気はしていて、Axialを通してどういう新規音色が追加されるのかは興味があります。
JD-Xiに関しては、今後も気がついたらことがあれば書いていきます。