リマスター版『ゴジラ』
ハリウッド版『GODZILLA』の国内での公開を控えて、TOHOシネマズで初代『ゴジラ』のリマスター版をやっているというので、観に行ってきました。まさか映画館で観られるとは思ってなかった。
映画『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』公式サイト
http://godzilla1954.jp/
私はこの、いわばファーストゴジラについては、まったくの初見。そもそも怪獣映画に興味を持ったのが去年観た『パシフィック・リム』から、ってのだからアベコベもいいとこで。それでも、レジェンダリーによるハリウッド版を来月には(たぶん)観に行くにあたって、まずDVDでギャレス・エドワーズ監督の『Monsters』は観て、それでいて元ネタ観てないというのはナシなんじゃないかと思っていたところに、このリマスター版劇場公開の報。まあ、なんだか一律1,000円と安いみたいだし、というのもあったけれど。
で実際観てみて、なるほどこれがみんなが言う『ゴジラ』か、と今更ながらに納得した次第で。それと同時に、これが1954年…終戦からたった9年目に公開された映画ということに、改めて驚きを感じました。特撮の技術がとかってよりは、テーマ自体や、テーマの描きかたについてね。
『ゴジラ』は怪獣映画であって、怪獣映画というのは、パニック・ムービーの亜種としての定型のひとつだと思っていたのですが、それだと多分この映画の半分の説明にしかならない。確かに、東京に上陸して破壊の限りを尽くすシーンは、ほとんどエクスタシーに近いものがあって、物が壊れて炎がゴウゴウ上がるさまは単純に気持ちがいい。あの模型を(と言ってしまうと身も蓋もないけれど)作るのも大変だったろうに、と思いながら。
だけど『ゴジラ』って結局、芹沢博士が「決断」するお話なんですね。ただ危機があってそれを乗り越えて良かったね、というお話では全然なくて、ひとりの人間が自分の意思を選択するというのが本質で、そこに至るある種の装置として怪獣というモチーフが使われているだけで。つまりリメイクであろうと何であろうと、『ゴジラ』が『ゴジラ』であるためには、モンスターが出て大暴れというだけじゃまったくの片手落ちで、そういう意味で次のハリウッド版も古参ファンに試されるのだろうなぁと。
…それを踏まえて『パシフィック・リム』のことを思い返すと、あの映画のシンプルなまでの能天気さに、じわじわと笑いが込み上げてくる。カイジューが出た→核でやっつけるぜ→やったー!「のみ」だもんね。でもあれはあれで完璧で、かえってそういうとこが好きになるというか。デル・トロさんがDVDのコメンタリーでめちゃくちゃ『ゴジラ』について熱く語っているくだりがあるんだけど(しかもだいぶ長い)、観返したくなりますね。
リマスターという点に関しては、私はオリジナルを知らないのであれですが、映像はすごくきれいでした。いわゆる昔の白黒映画につきものの、チラチラするゴミみたいのが一切なく、普通にカラーをモノクロに変換しただけみたいな美しさ。台詞も聴き取りやすく無音部分のノイズもほぼ感じなかったので、相当手を入れたんじゃないかというのは想像に難くなく。
ガンダムにゴジラにと、なぜだか古典を遡っていく機会が何かと多い昨今ですが、新鮮な気持ちで楽しめるというのは、これはこれでいいのかもね。大変おもしろかったです。