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2013年のテクノ(アルバム編)

テクノ2013-12-19 17:58

6 Techno Albums of 2013

テクノに関して、私は普段あまりアルバムという形態で音楽を買うほうではなくて、どちらかというとDJツールと割り切っているので、本当に使いそうな曲だけをピンポイントで買うことが多い。レコードを買っていた頃から、使う曲は使うけれども、そうでない溝に針を落とすってことは稀で、その分の質量がもったいないなと感じていました。単曲で買うことができるのは、デジタルデータの大きなメリットだと思います(まあ、なかにはB2に入っているからこそ良いみたいなトラックもあって、そういう文化は今でもすごく好きだけれど)。

そんな今、敢えてアルバムごと買いたいと思う作品というのは、単に捨て曲がないだとか、アーティストのファンだからとかいうことの他に、作品全体を通してのコンセプトとクオリティが一貫していて、全体通して聴くからこその価値があると思われるもの、だったりします。少ないけれど今年もいくつかそういった作品を買ったので、良かったものについてつらつらと感想を書きます。

各表題はアーティスト名 /作品名 [レーベル名]。リンクはBeatportのアルバムページへ飛びます。

Function /Incubation [Ostgut Ton]

FunctionことDave Sumnerのファーストソロアルバム。アルバム出してなかったっけ、と、そう言われると出してない。Portion ReformもSandwell Districtも共同プロジェクトだったしね。試聴したときに、よくデザインされた音という印象を受けたので、これは通して聴きたいとアルバム買い。結果的には、DJでちょいちょい使う曲と、聴くだけの曲がはっきり分かれた。リキッドでのアルバムリリースツアーにも行ったけれど、アルバムの世界観とDJの内容が乖離していたのでそれはガッカリだったかな。

Mike Parker /Lustrations [Prologue]

リリース予告を聴いたときから楽しみにしていた。12年ぶりのアルバムは、自身のGeophoneレーベルからではなく、Prologueからというのも。全曲Mike Parker節を貫いていて、どこを使ってもおいしい金太郎飴的な。気持ちのいいアナログシンセのシーケンスがポリリズミックに淡々と展開する、これはもうほんと、この完成されたスタイルの先には何もないんじゃないかという気がします。コンセプチュアルなアルバム作品というよりも、純粋に使えるツールだけを集めた武器庫のような。かっこよくて痺れます。

SHXCXCHCXSH /STRGTHS [Avian]

昨年、突如現れた謎のスウェーデン2人組。はじめはその特異なユニット名と曲名に気を惹かれるんだけど、ちゃんと聴くと、インダストリアル的な荒さとテクノのグルーヴが同居していてレベルが高い。特にこのアルバムは素晴らしくて、移動中などによく聴きました。
まったく予期しないところから、聴いたことのないシンセ音が飛んできたかと思えば、獣が吠えるようなノイズが脳にじわじわと入り込んでくる。それでいてビートは素直で、どの曲もまぎれもなくフロア映えするテクノ。個人的には今年のベストアルバムに推したいです。

Drumcell /Sleep Complex [CLR]

Truncate名義でブレイクしたAudio Injectionに続いて、DrumcellのファーストがCLRから。アルバムで買うつもりはなかったのに、試聴してことごとく良かったのと、ハードウェア中心の制作スタイルに強く共感したので。実用性を備えた、いま最もハイファイで洗練されたテクノトラック集のひとつだと思います。というかこれをアルバムで聴かせられたら、どの曲を買うか選べないよね。全部買うしかない。

Peter Van Hoesen /Life Performance [Tresor]

意表を突かれました。90年代に僕らが好きだったテクノそのものじゃないか、これは。なんでも、ハードウェア機材オンリーのライブセットに転向して、実際にライブレコーディングしたものをアルバム向けに整形したそうです。身体から湧き起こるグルーヴが、ダイレクトに抜き差しやツマミにフィードバックされているのがよく分かる。新規性があるかと言われたら分からないけど、こういうテクノが普遍的に価値の高いものとして認知されるのは、古いリスナーとしてはとても嬉しい。テクノが聴きたいという欲求に確実に応えてくれるアルバム。

R-9 /Organic EP [Body Inform]

手前味噌ながら、今年作った自分のアルバムを。ハードウェア一発録りによるラフな質感は残しつつ、少しでもいい音に近づくように苦心したので思い入れはあります。今作ったらまた違ったものになったかもしれないけど、この時点でベストなもの、と考えると、写真のアルバムとも近い意味合いはありそうですね。まだまだいろんな人に届いてほしいので、YouTubeに上げたPVを貼っておきます。CDは通販できますので、興味のあるかたはお気軽にメールください

考えてみると、Mike Parkerのアルバム、DrumcellやPvHの作品など、ひとことで言って2013年はハードウェア機材復権の年ではなかったかと思います。既に「マシーン・テクノ・リヴァイヴァル」や「Mike Parkerとハードウェア・テクノ」といった記事で触れたように、去年からその予兆はあったにせよ、この潮流が確固たるものになったという印象を受けました。KORGのアナログシンセ、volcaの発売も見逃せないポイントですね。

また、冒頭のようにジャケットを比較してみると、荒んだダウナーなビジュアルであると同時に、どこか生々しい、自然や生体をモチーフにしたものが多い。これがハードウェア回帰と重なるものなのかどうか分かりませんが、少なくとも最後の自分の作品に関しては、それを念頭においてデザインしています。

余裕があれば、年内に別の記事でトラック編の2013年レビューを書こうと思います。

12-20追記:トラック編を書きました。

2013年のテクノ(トラック編) | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2013/1220_top-techno-tracks-of-2013.html
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