TraktorでBehringer BCR2000を使う
先日、YouTubeで見つけたVince Watsonの08年のスタジオライブ映像(Vince Watson @ RTS.FM Studio - 06.11.2008: Live - YouTube)で、BehringerのMIDIコン「BCR2000」を使っているのを見て、改めていいなあと。03年発売の機材のようなので、もう10年は経っているわけですが、意外とこういうツマミだけがいっぱいついたMIDIコントローラってないんですよね。楽器屋に行くとなんか、超コンパクトなのか、タンテのDJブースを丸々再現したようなのか、どっちかって感じで。これだけのMIDIコン戦国時代であるにもかかわらず、テクノ界隈ではいまだにUC-33e(ツマミ24個+フェーダー8本)が重宝がられるのも頷ける話。
私は以前、Ableton LiveでDJをしていた時期があって、そのときUC-33eの下位モデルであるところのX-Session (UC-17)をコントローラとして使っていました。ツマミは16個。このころからインターナルで多デッキをミックスする場合、ツマミは多ければ多い方がいいなと思っていました。
そんな折、旧知の友人であるところのyomiさんから、そのBCR2000を譲っていただけることになりました。最近本格的にTraktorを触り始めて、良さげなMIDIコンを物色しているところだったので、まさに渡りに船でした。どうもありがとうございます!
ツマミは、すべてにリングLEDを備えたロータリーエンコーダー(無限式ノブ)が32個!そのうち8個はプッシュ機能もあり、要はNIのコントローラーみたいな「回してブラウズ→押し込んでロード」がひとつのツマミで実現できます。また、この8つのエンコーダーは、仮想レイヤー状に4つのグループを切り替えることができ、それぞれに別の機能をアサインできます。ボタンの類もそれなりにありつつ、用途を限定するような配置になっていないため、アイデア次第で好きに使ってねというノリですね。
ちなみにこれ、さすがにもう店舗には出回っていないかと思いきや、普通にサウンドハウスで新品を買えるんですね。もはや前述のUC-33eが手に入らない今、同系統のコントローラをお探しの方には良いかもしれません(そこそこ場所をとりますが)。
さて、Traktorへのマッピング(アサイン)が結構な手間だというのは何度か聞いていて、覚悟はしていました。やってみると確かにその通りで、メニュー表記がすべて英語かつ階層化されており、しかも設定を開いたり反映するまでの動作が重いなど、慣れるまでそこそこ時間がかかりました。いくつかの設定項目では躓いたりも。
なんで、以下に簡単に覚え書きをしておこうと思います。
そもそも、コントローラマッピングを含むtsiファイルが出回っていれば話は簡単で、ファイルを読み込むだけでいい(はず)なのですが、古い機材だと探すのが大変だったり、使い勝手のいい作りになっていなかったりなので、かえってイチから作ってしまったほうが早いと思います。パラメータの意味も分かるし、Traktorで何がどこまでできるのかも把握しやすいし。私はそれで、ようやく要領を掴んできました。
Pump Up the DJ - Traktorマッピング虎の巻(3)Controller Manager編
http://pumpupthedj.tumblr.com/post/19940908181/traktor-3-controller-manager
自作マッピングにあたっては、上の記事が大変参考になりました。読みごたえあります。
まず、Traktorを使うにあたり、個人的に明確に決めているコンセプトがあるのですが、それは可能な限り手間をかけないというものです。買ったトラックはエディットしたり補正したりしない、ビートグリッドは打たない、キューも設定しない、つまり選曲以外の「仕込み」のようなことは一切なし。これらは既に以前試して、キリがないうえに無限に発生する作業で、なおかつ環境が変わったらほぼパーになるということがよく分かったので、もうやりません。やりたいけれど、時間的コストがかかりすぎる。
どうするかというと、取り込んだ時点でアナライズだけはしておいて、頭出しは都度CDJと同じ要領でキューを打ってやる。あとはSYNCが使えるのでどうとでもなるし、仮にBPMが揺れてる曲があれば、SYNCを外して手動でピッチ合わせればいいわけで。
なので、そういったことを前提に、実際にトライ&エラーを繰り返していくなかでぼんやりと固まってきた暫定版のマッピングがこちらです。
3デッキ、それぞれ縦の各2列を割り当てる感じで、残りはエフェクトとか全体関係。パネルを色分けしていますが、これはシートを作って貼るかなにかしたほうがいいですね。Behringerの公式で配布しているドキュメンテーションに「BCR2000 Templates (English)」というPDFがあって、ここに印刷用のテンプレートがあるので、これをもとに自作するつもりです。配置がフィックスしたら、ちゃんとデザインして印刷しようかと。
マッピングにあたって理解に躓いたポイントは、主にコントローラ側の設定と、Traktor側の設定の兼ね合いでした。例えば、普通のON/OFFじゃなくて、押したときだけ反応するブザーのようなボタンの場合、どちらで何を設定するのかとか。ちなみにこのケースでは、Traktor側はデフォルトのボタン設定のままで、BCR2000上のEDITモードで対象のボタンをToggle Offモードにすれば実現できました。ここらへんはBCRのマニュアルを読みつつ。
続いて、具体的なマッピングのポイントをかいつまんで。
ブラウザ専用ダイヤルの作りかた
先にも触れた、NIのコントローラみたいな、ダイヤルを回して選曲できるツマミを作りたい。これは、無限式のロータリーエンコーダーだからこそ実現できる機能で、最初の値から変化した分の相対値を送る。これが、はじめ思うように動いてくれなくて厄介でした。ちょっと動かしたら行きすぎちゃったり、リストの途中で止まっちゃったり。肝は、コントローラ側できちんと相対(relative)モードの相応しい値に設定しておくことでした。
BCR側は、対象のツマミのモードをデフォルトの「Absolute」から「Rel 1」にしておく。Traktor側のControl名は「Select Up/Down (Browser.List)」、Type of Controllerは「Encoder」、Interaction Modeは「Relative」、Enc.-Modeは「7Fh/01h」、あとはデフォルトで大丈夫だと思います。
ターンテーブル風プラッターをエンコーダーで
以前から、一般的なDJ用コントローラのプラッター部分の機構が腑に落ちなかったのです。スクラッチでもしないかぎり、タンテやCDJを模したような形にしなくても、ツマミで十分代用できるのではないかと。なので、これをロータリーエンコーダーでやりたい。
これも、上のブラウザダイヤルと同じでした。Traktor側のControl名は「Jog Turn」、後の設定はBCR側もTraktor側も同様に相対モードにしてあげれば、ほぼ期待通りの挙動に。特にこだわりがある場合、Sensibilityなどをいじれば、もっと細かく調整できそうです。
上の暫定マッピングの図解の通り、右下で曲をブラウズ→対象のデッキの右上ツマミをプッシュでロード→そのまま同じツマミでプラッターを回す要領で頭出し→左のツマミを押し込んでキューポイント設定→下のCUE PLAYボタンで再生、ボリュームを上げていく、という流れができました。
また、このプラッター代わりのツマミは、曲頭が合わなかったときにピッチ合わせにも使います。SYNCしていればビートを合わせるだけ、マニュアルならピッチコントローラを割り当てたツマミを併用しつつ。
ミュート(KILL)スイッチ
これは、まさにSangoさんの記事がそのまま参考になりますのでこちらを。
Lost Arrangement Systems | 2013.06.08 Saturday
http://www.evangelion.net/~sango/log/eid2340.html
縦フェーダーをがしがし切ったりするタイプのDJにとって、MIDIコンのフェーダーやツマミのもっさり感は耐えられないので、これをボタンで。単独で実現するパラメータは用意されていないため、1つのボタンに3バンド分のkillをアサインする力技でいけました。ただ、killするとその帯域が無音になるのは、Mixer EQ Typeが「Z ISO」のときだけなので、そこは設定のミキサーで変更しておく必要があります。
ワンボタンで完全に無音にしてしまうと、ブツッとデジタル的に切れてしまうので、あえてEQタイプを他のものにしておいたほうが、変化がマイルドになるような。また同じ目的なら、ボタンにせずフェーダーやツマミのままで、コントローラ側のvalueを128段階からもっと狭めるとか調整してもいいのかもしれません。
トラックの先頭に戻るボタン
あまり使用頻度は多くないかもしれないけど、曲中をサーチしていて頭に戻りたい場合、Traktor画面上ではデッキ右下の左三角のボタンを押しますが、この機能をボタンに割り当てる。Control名は「Seek Position (Deck Common)」、Typeは「Button」、Modeは「Direct」、値は「0」で、Assignmentにきちんと対象のデッキを指定。そして、押すたびに発動したいので、やはりBCR側で対象ボタンを「Toggle Off」モードにしておく必要があります。
LOW EQの代わりにHPFを使う
今まで、自分の手持ちのDJミキサーでは実現できなかったこととして、主に低音域のミックスに際して、EQではなくフィルターを使うというものがあります。テクノでは結構フィルターを使っているDJが多いらしく、このほうが混ざりかたが自然というか、滑らかになるのだとか。なので、これを機に試してみます。
フィルターは、デフォルトではツマミの中央から負にあたる範囲がLPF、正がHPFになっていて、いわば2種類のフィルターが混在する形になっていますが、今回は低音のカットに使いたいので、LPFは操作の邪魔になってしまう。そのため、コントローラ側でvalueの最大値を63などにしておく必要があります。これで、64段階のざっくりしたHPFを作ります。
Traktor側のControl名は「Filter Adjust」、また「Invert」にチェックを入れておくと、EQと同様に左に回すと切れる感じに効いてくれるので、いいかもしれません。
使ってみた感じ、確かにこれはいいですね。音が重なってもモヤっとする感じではなく、角が立つ感じでクリアに分かれて、動きもダイナミックに反映されるような。音を抜くときは、中域を削りすぎないようにEQを持ち上げつつやりたいのですが、このあたり、モディファイアと組み合わせて条件を作れば、ある程度自動化できるのかな。
なにか他にいいアイデアが思いついたら、空いているツマミにアサインしていこうと思っています。FXはまだ全然使えていないので、このあたり試行錯誤かな。ほかのDJのマッピングがどうなっているのか、急に知りたくなってきました。幸い諸先輩がたが周りにいるので、会ったらしつこく聞いてしまうかもしれません。